米国財団法人野口医学研究所

トーマス・ジェファーソン大学ワークショップ  研修レポート

学生吉田泰徳

2016年3月米国トーマス・ジェファーソン大学

1.はじめに

この度、米国財団法人野口医学研究所の主催するトマス・ジェファーソン大学臨床ワークショップに参加させて頂きました。今回のワークショップで私が感じたことや得られたことを述べたいと思います。

まず、私がこのワークショップに応募した理由ですが、私は漠然とアメリカでの臨床留学に興味を持っており、アメリカの医療現場を実際に自分の目で見てみたいと思ったからです。家庭医や総合診療医といった日本ではあまりなじみのない診療科についても興味がありました。アメリカの医学生と交流しアメリカと日本での医学教育の違いや医学生のキャンパスライフについて知りたく思いました。私にとって今回がアメリカへ行く初めての機会でありアメリカの社会や文化、人々の暮らしについても積極的に触れてみたいと思いました。

 

2.実習報告

実習中は大学内の寮に宿泊しましたが、図書館がすぐ近くにあり勉強するのにとてもよい環境でした。寮周辺にはコンビニやドラッグストア、カフェやレストランが多数あり生活していくのにとても便利な場所です。キャンパスや病棟内に入るにはIDカードを通すことが必要でありセキュリティにはとても厳しいと感じました。

一週間の実習で内科、救急、家庭医、小児科を回りました。内科病棟は内部が二階から天井まで吹き抜けになっておりとても開放的な印象を与えます。二階はカフェテリアで朝から病院スタッフや患者さんとその家族でにぎわっていました。内科のカンファレンスをこのカフェテリアで行ったこともありました。

内科では朝のカンファレンスに始まり、その後の回診に同行して入院患者さんを診察し、お昼の内科合同カンファレンスに出席するという流れでした。カンファレンスではドクター同士の会話が早くてついていけず何を話しているかを聞き取ることに必死でした。私が見たのは総合内科であり、様々な疾患をもつ患者さんが入院していました。中には社会的に困難な状況に置かれた患者さんもおり、それらの患者さんの回診ではナースやソーシャルワーカーが同席して生活面からのサポートも行っていました。私が同行した総合内科チームはアテンディング1人、レジデント23人、医学生23人により構成されていました。カンファレンスでは医学生がレジデントと同様に症例のプレゼンテーションを行っており、検査や治療薬のオーダー、患者さんの家族への対応なども行っているとのことでした。学生は医療チームの一員として活躍しているという印象でした。昼のカンファレンスでは昼食を取りながらレクチャーを聴くことができ時間の使い方としてとても効率的だと思いました。

家庭医では外来を見学しました。この時に付かせていただいたDr. Royはとても優秀な方であり、様々な疾患を抱えてくる患者さんに対して丁寧に手際よく診療を行っていました。電子カルテではなく患者さんの方を向いてしっかりと話を聞いている姿勢がとても印象的でした。家庭医は小児から高齢者まであらゆる患者を診療し、出産まで取り扱う家庭医もいるそうです。プライマリケアに興味がある自分にとってこれから目指す医師像に近いものをアメリカの家庭医に見いだすことができた気がします。アメリカの家庭医のシステムや診療のスタイルから学ぶべき点は多いのではないかと思いました。

木曜日の夕方には貧困層を対象とした医療ボランティアであるJeff Hopeに参加しました。このクリニックは医学生やレジデント、またその他様々な専攻の学生により運営されており、貧困者向け生活施設で週一回の診療を行っています。エイズ予防や喫煙・禁酒指導なども行われているそうです。診療のスタイルはまずは患者さんを低学年の医学生が問診し、上級生が追加で問診をしたり身体所見をとったりした後、別室で待機しているレジデントへプレゼンテーションし、最後にレジデントが診察するという流れでした。診察の結果さらに精査や治療が必要と判断されれば病院への紹介となるそうです。患者さんにとっては無料で診察を受けるというメリットがあり、医学生にとっては実際に自分で問診や身体診察を行う練習ができるというメリットがあります。医学生として社会に寄与する活動であり、大学の教室の中だけでは学ぶことができない社会や貧困について学ぶ良い機械であると思いました。Jeff Hopeに参加した後、日本においても何らかの形で社会貢献ができる活動に参加したいと考えるようになりました。

実習の前後ではニューヨークやフィラデルフィアを観光しました。フィラデルフィアは古いレンガ造りの街並みが碁盤の目状に広がっており、落ち着いて非常に暮らしやすそうな街でした。週末には自分たちを世話してくれた医学生のタッカーからブランチへ招待してもらいました。ご近所さんや趣味を通して知り合った彼の友人などと交流を持つことができました。このように週末に様々な人たちと交際することは人生を豊かなものにする上でも重要だと感じました。

 

3.最後に

このアメリカでの臨床留学を通して医学を学ぶことはもちろんのこと、日々様々な出来事にふれたり人と会ったりして刺激をうけることが、良い医者になるうえでも必要だと思うようになりました。アメリカという国には様々な人種の人々が暮らしており、臨床留学することの意義の1つはこの豊かな多様性を持つ社会で暮らすことにあるのではないかと思います。もちろん今回自分が見たのはアメリカの一面であり一週間という短い滞在期間で消化しきれなかったことも多々ありますが、このワークショップを通してアメリカに臨床留学する意義は十分にあると実感できました。

4.謝辞

このワークショップは米国財団法人野口医学研究所により主催されました。野口医学研究所のスタッフの方々には大変お世話になりました。Ms. Takako kogureには現地での生活サポートを含め大変お世話になりました。Ms. Yumiko F. Radi氏には現地での生活やスケジュール管理に関して多大なサポートを受けました。Dr. Takami Satoからはアメリカ留学の意義や研究留学などに関して示唆に富む話を多くいただきました。Dr. Joseph F. Majdanからは今日深いレクチャーを受けることができました。トマス・ジェファーソン大学医学部2年生のTucker Brown氏には実習や生活面で大きなサポートを受けました。