米国財団法人野口医学研究所

Clinical Reasoning Workshop報告書

学生小室舞

2015年3月ハワイ大学

野口医学研究所の医学留学研修生として3月にハワイ大学のJohn A. Burns School of Medicineにて行われたClinical Reasoning Workshopに参加させていただきました。今回の実習では日本からの参加者22名(うち野口医学研究所研修生3名)、韓国からの2名の合計24名が参加していました。現地での実習はすべて英語で行われ、息切れ・胸痛の問診・身体診察や悪い知らせの伝え方、症例発表、禁煙外来に関する講義を受けました。また、座学で学んだことを元に実際に実戦してみる模擬患者を用いた診察練習をする機会もあり、英語を用いての実際の医療面接を体験し、そのむずかしさを実感すると同時に及びに患者と円満な関係を築く上で重要な書籍を読むだけでは身に着けることのできないコミュニケーション能力の習得の重要性を認識しました。その他にも、マネキンシミュレーターを用いた実習やハワイ大学における医学教育での特徴であるPBLによる症例検討も行われました。PBLでは、症例が与えられ、患者に関する情報、症状の詳細、検査結果等を質問していき鑑別診断を除外するプロセスを経て診断を導き出し、さらに行うべき検査や治療について検討しました。教室での座学、PBL、マネキン、模擬患者を通じた学習のどれもが実際の医療現場を意識したものであり、ハワイ大学における医学教育の充実さを先進的な施設や教育制度等から感じ、日本との違いに驚きや感動を感じ続ける日々でした。

この実習にて学んでいる間、医師としての資質として身に着けなければならない資質・素養の日米間での共通点や相違点を感じました。

実習にて、医療面接や悪い知らせの伝え方、禁煙外来について学びましたが、そのいずれにおいても患者に接する上での適切な心構え・接し方は共通していると感じました。日本と違いアメリカは多種多様な文化や人種が暮らしている国ですが、それらの違いがあったとしても患者との信頼関係や円滑な人間関係の構築において重要となる素質は不変であり、患者の希望に注意を払い、理解を示し、それを考慮した診察を行うことが重要となっていることを実感しました。たとえば、悪い知らせを伝える際、病気の詳細を知りたがる人、知りたくない人、身内にのみ伝えてほしい人など患者の希望は個人の考え方により異なり様々なものがあります。これらに注意を払い、患者の希望を配慮し、適切で円滑なコミュニケーションをはかれる能力を身に着けることはどこの国で働くとしても大変重要なことであり、同時に他国に行っても非常に役立つスキルであると改めてその大切さを実感いたしました。

また、相違点としましては日米間での医師として働き続ける上での必要な資質に違いを感じました。日本の医師は比較的職の安定があり、また診療科も自由に選び進む道を本人の希望次第で決めることができますが、アメリカでは医師としての雇用を獲得するのも困難で、診療科も成績よりある程度制限されてしまうため、より競争が激しくなっています。それに伴い、アメリカでは上司及び同僚に優秀であると認められることが日本以上に重要となっており、そのためには積極的に参加し、発言する積極性が医師としての仕事の獲得、継続する上で必要不可欠となっていることを学びました。このことはアメリカで働く上で、どの分野に進むにしても絶対不可欠なことと幼少時から親や、また、野口医学研究所におけるセミナーでも聞きましたが、本実習にて、その資質の重要性、アメリカで医師として働く上での厳しさを再認識しました。

今回の実習を通じ、問診・診察技術や患者とのコミュニケーション技術のみならずアメリカで医師として生きることはどういうことでどのような能力が必要となってくるか身をもって実感することができました。将来どの国でどのように仕事をしていくかは確定していませんが、医師として働く上で重要な資質や、今後の課題を実感できた充実した実習を送れたと感じております。今回学んだことを活かし、残りの学生生活及び今後の人生に活かしていきたいと思います。

 

Acknoledgements

本実習において大変充実した丁寧で熱意のある講義をしてくださったMs. Jill Omori, Ms. Sheri F.T. Fong, Mr. Daniel Murai, Mr. Mitsuaki Suzuki, Mr. Joseph Turban, Ms. Vanessa Wong 、本実習の計画・調整をしてくださったMs.Kori-Jo Kori、 そしてこのような貴重な機会を提供してくださった野口医学研究所の方々、及び、参加にあたり支援してくださったMs. Stellora Sunyobiに深く感謝をいたします。