Thomas Jefferson University での実習がもたらしてくれたもの
『覚悟』
10 日間にわたる Jefferson での実習を通して、私が得た最も大きいものかもしれません。
私の中での考え方が変わり、覚悟がつきました。予想以上によい、大きな収穫を得ること ができたのもプログラムを通してかけがえのない友達・先生がたに出会えたからだと思い ます。
私には将来 physician-scientist として人の役に立ちたいという夢があり、その為にアメ リカでトレーニングを受けたいという目標がありました。ポリクリが始まる前の 4 年生の 春休みという時期にどうしてもこのプログラムに参加したいと思ったのは、アメリカの医 学生の臨床技能が高いと聞いたことがあり、それを自分で見聞きして 5 年生のポリクリを アメリカに引けを取らない、より充実したものにしたいという思いがあったからです。一 方でその裏には、アメリカで臨床をすることに対して今まで様々なお話を伺ったり見たり してきたけれど、本当に行きたいのか?自分は何をしたいのか?といった迷い・悩みがあ り、プログラムを通して自分と向き合い、将来を考えたいという気持ちもありました。
Jefferson では Internal Medicine, Emergency Medicine, Family Medicine, Pediatrics のそれぞれで実際の医療現場に参加させていただいたり、無料診療所の Chinatown Clinic を見たり、医師だけでなく様々な視点からのレクチャーを聞いたり、アメリカの医学生の 様子を伺ったりする機会がありました。その場その時で非常に多くのことを学び、感じま したが、プログラムを通じて感銘を受けたのは『熱心な教育』でした。
1つは、学生・医師への教育です。学生は実際の医療チームの一員として、責任を持っ て患者さんを診ていました。その上には resident、さらに fellow やattending がそれぞれ指導し、しっかりとしたフィードバックを受けてい ました。それは見学していた私たち に対してもそうで、どんな質問でも みな丁寧に手を止めて教えてくださ いました。Jefferson の M3 の学生で も私達に優しく教えてくださり、確 立した教育システムに感銘すると共 に、自分がどんな立場にいても教わ るだけでなく教えることができる、 そうすべきなのだということを学び ました。
もう 1 つの教育、それは患者さんに対する教育でした。医師、看護師、アシスタントな ど医療スタッフが患者さんに敬意を払い、人と人として正面から向き合っていました。特 に Family Medicine の外来では、患者さんが医師を信頼し悩みを打ち明け、医師がそれを 正面から受け止めている印象を受けました。患者さんの話を聞き、理解できるように説明 することは時間のかかることで忙しくなると疎かになりがちかもしれませんが、それが医 療のコアの部分であるということを肌で感じました。その背景には、学生のころからシュ ミレーションセンターでコミュニケーションの教育をしているそうで、日本との違いを感 じた一面でもありました。
また、心から尊敬する医師に出会うことがで きました。Dr.Lau は通常の診療や研究以外にボ ランティアで Chinatown Clinic をやっている先 生ですが、先生の一言一言から患者さんに対する 思いやり、情熱が伝わってきました。純粋な心で 本当に助けが必要な人に手を差し伸べること、そ れが医療の真髄なのだということを再認識しました。
Chinatown Clinic での Dr.Lau の丁寧な質疑応答
Jefferson でのプログラムを通して、日米の医療システムの違い、それぞれの長所・短所、 医学のこと様々なことを学びました。しかし、それ以上に学んだことは『医療の心』はど こにいても同じなのだということかもしれません。日々の忙しさの中でともすれば忘れて しまいがちな、そのピュアな心を改めて学ぶことができました。Physician-scientist になる こと、アメリカでトレーニングを受けること、それらが目標ではなく患者さんの助けにな れる医師になるために私はそういう過程を踏みたいんだということを思い出し、その為の 努力をする覚悟ができました。自分の思考や想いが整理され、初心に戻ることができ、こ のプログラムに参加するに当たっての2つの目的を達成することができました。プログラ ムに参加して本当によかったと思っています。
最後に、この素晴らしい機会を提供してくださった浅野先生はじめ野口医学研究所の 方々、現地でサポートして下さった Mike Kenney, Yumiko Radi さん、Jefferson のみなさ ん、応援し送り出してくれた両親、そして一緒に夢を語り、笑いあった素敵な 8 人の仲間、 この何にもかえがたい一期一会に心より感謝しています。本当にありがとうございました。