米国財団法人野口医学研究所

TJU での研修を終えて

学生村山裕一

2014年3月米国トーマス・ジェファーソン大学

私は5年生の3月24日から28日までの5日間、米国、ペンシルバニア州、フィラデルフィアにあるThomas Jefferson University でのClinical Skill Program に参加させて頂きました。私がこのプログラムに申し込みをさせていただいた理由は、以前から米国の医療と医学生に対する教育がどのようになされているか興味があったこと、また私自身の視野を広めてみたいという意識がありました。そのため,この機会は私にとって絶好の機会だと思い応募させて頂きました。

全体を通じて、米国の医学部の3、4学年は日本の研修医のように病棟で役割を果たしていて、臨床能力、特に今回は問診、身体診察、治療方針の考察、プレゼンテーション能力の高さを見せつけられ、教育の重点を置く部分が日本とは全く違う事を痛感させられました。そしてこの事は私の今後の意識に対して大きな影響を与え、モチベーションを高めてもらえたと確信しております。

ここから特に患者さんとのコミュニケーションの取り方について私が感じた事を書かさせて頂きたいと思います。

救急科、内科、小児科、家庭医療などの臨床現場を見させて頂いた際にまず思ったのが、患者さんとのコミュニケーションの取り方が日本とは異なる点で、患者さんの前でどのような態度を取ったら良いかということでした。見学させて頂いた病棟では患者さんと会話をするときは、とてもフランクな様子であり、特に家庭医療を見学させて頂いた際にはその事を最も強く感じました。医師が自己紹介をした後に、患者さんと御本人の症状とはあまり関係のなさそうな話を織り交ぜながら話していらっしゃったので、私が初め思っていたより問診に長い時間をかけていたことがわかりました。また患者さんの家庭背景や、その他の事にも配慮つつ、問診の際には信頼関係を築けるようなコミュニケーションを重視している様子が感じ取れました。私も先生から患者さんに紹介して頂いた際には、ほぼ毎回患者さんから、米国は初めてであるか、フィラデルフィアは好きかなどを質問され、一緒にコミュニケーションに参加する事が出来たので、日本との違いを患者さんとの会話の中からでも今回実感できたのではないかと考えております。

その後に機会があったので、コミュニケーションに関して米国ではどのような態度をとれば良いのかをMajdan先生に質問をさせて頂いたところ、こちらの医学生は患者さんと会話をするときには必ず座って行うように指導されていて、特に患者さんと向き合う姿勢を大事にしていると教えて頂きました。一方で、日本では一見少し失礼に思われてしまうような事でも、米国ではそうではないという内容を聞き文化的な違いを知る事が出来ました。

救急科を見学させて頂いた際にはスペイン語しか話せない患者さんがおり、通訳の方を病室に呼ぶのかと私が考えていましたが、実際にはそうではなく、電話を使って通訳の方を通してお互いが会話をしていて、その姿を見慣れていないせいかとても不思議な感覚がしました。これもヒスパニック系の国民を多く抱える米国社会特有のものなのだと感じました。ただ、こういった部分はアメリカに行く前から自分の目で見て知りたかったところでもあるので、大変有意義でした。

他に日本との違いを強く感じた場面は、小児科・産婦人科を見学させて頂いた際のヘロイン依存症の母親から生まれてきた新生児も同様にヘロイン依存症であり、新生児の治療として少しずつヘロインの量を減量していく必要があると、小児科の先生から教えて頂いた事です。そのような話を聞いたのは今回が初めてであり、大変衝撃を受けました。ヘロイン依存症について他の米国の方に伺った際にもやはりそれは社会的に大きな問題になっているとのことで、深刻な表情で語って頂いたのがとても印象的でした。

今回の実習を通してとても意識の高い日本の医学生の方と1週間を過ごせた事をとても幸せに感じております。また現地で出会えた米国の医学生とも交流できた事も大きな刺激となりました。

最後になりますが、このような機会を与えて頂き野口医学研究所の方々、Thomas Jefferson Universityの方々には大変感謝しております。今回の経験を将来に是非生かしてきたいと考えております。誠にありがとうございました。