米国財団法人野口医学研究所

Thomas Jefferson University Hospitalでの研修報告書

学生小栗洋平 

2014年3月米国トーマス・ジェファーソン大学

今回、野口医学研究所のclinical skills programを通じてThomas Jefferson

hospitalにて一週間の病院実習を行う機会に恵まれました。Thomas Jefferson

hospitalはアメリカの独立宣言が読まれたアメリカの歴史上非常に大切なphiladelphiaに位置し、近くにはアメリカ最古のpennsylvania hospital,liberty of bellなどアメリカの歴史的建造物が数多くあります。また、アメリカの東海岸はアメリカの中でもcompetitiveな大学が多く存在し、Thomas Jefferson university hospitalもその例外ではありません。アメリカの医学部志願者約40000人の内、10000人がapplyし、200名程の合格者しかいないという全米でも非常に競争率の高い大学病院であります。そして、志願者は高校卒業後premedical schoolを卒業されてくる方からnavyやプロ野球選手として活躍後進学される方もいるそうで様々なbackgroundを持った学生が集う大学です。そこで、過ごした一週間の経験を報告させて頂きたいと思います。

General medicineではresidentについて半日shadowingを行っていました。朝8:00からsocial workerなどのco-medicalの前で入院・退院報告のカンファレンスが行われました。日本では医師は医師だけで、co-medicalの方には一方的に報告し、手配して頂くという印象が強いのですが、アメリカではお互いが対等に話し合っている姿が印象的でした。その後の医師のみのカンファレンスでは学生が患者のプレゼンテーションを行い、それに対して先生が質問、ディスカッションする形式で学生が非常に患者情報、病態生理、治療方針について勉強している印象を受け、レベルの高さを実感しました。事実、学生の一人と話をすると朝の4:30に起きてカンファレンスのために準備しているということを聞き、自分を含め日本の学生を実習に対する意識の違いを強く感じています。アメリカでは学生にある程度の責任感を持たせ、能動的にチームの一員として実習に参加させることで現場教育を推進しているように思いました。

Emergency medicineでもshadowingをさせて頂いたのですが、日本よりもかなり多くのスタッフを有していることに驚きました。Nurse practitionerが実際に点滴や採血、簡単な処置などは行っており、医師が仕事に集中出来ているような印象を受けました。電子カルテを見た際に基本設定としてreview of systemを記載する欄があり、医師が効率よく、漏れなく患者を診察できる工夫がなされていましたが、これは医療保険を使用する際に必要とされるということを聞き、驚きました。日本でも問診の際にReview of Systemを聞く先生が増えてきていますが、アメリカほど徹底はしていないように

思います。

小児科で印象的であったことは女医の割合が非常に高かったことです。私は日本で家庭の中での役割の違いや出産、子育てのため、女医が小児科などで数は少ないということに大きな問題を感じていました。アメリカでは出産のための休暇制度、育児のためのbaby sitterなどを多くの医師が利用しており、それで働きやすいんだという話を聞きました。日本も根性論で女医が仕事を続けるよりも制度をしっかり整え、それを気軽に使える環境にすることが重要なのではないかと考えました。

また、Thomas Jefferson university hospitalは臨床教育に力を入れており、Harvey、colonoscopy bronchoscopyなどのsimulatorが広い空間に数多く揃っていました。そこで、majdan先生から心音のわかりやすい講義を受け、その後simulatorで実践させて頂きました。inputし、それをすぐに患者の擬似モデルにてoutputできるということは勉強効率が良いと感じました。

木曜日の夜にjeffHopeに参加させて頂きましたが、そこでmajden先生の言われた「Don’t look at not only diseases, but also look at people」

という言葉の意味を多少なりとも理解できたように思います。印象的だったのが、患者は自分が精神疾患を持っていると分かっているが、病院で治療を受けるとホームレスシェルターに泊まることができない、ゆえにこのjeffHopeに来るしかないのだという症例でした。ここでは学生、レジデントが薬剤師と協力しつつ、治療と同時に社会的背景を踏まえた今後の方針を決めていくのですが、責任感と奉仕の精神によって成り立っている団体という説明を受けました。学生の時から社会的弱者の患者さんについて考える機会に恵まれることで浅野先生の仰られた「empathy」を育むことができるように感じました。

今回の研修を経て、日米の診療、医療制度、教育の差異を感じることが出来ました。診療、医療保険制度に関してはそれぞれメリット、デメリットがあるように感じましたが、教育に関してはアメリカ式の学生に主体的に行う方針が素晴らしいと感じました。プレゼンテーションの準備などは大変そうでしたが、長い目で見れば実力が付くやり方であるように思います。また、今回学生や先生が話す英語があまりに速くて聴き取れないことも多々あり、自分の英語力の未熟さを実感いたしました。今後、留学を考えている私にとって、プレゼンテーション能力を鍛えること、英語力を付けることを課題として、前向きに頑張って行きたいと思います。今回、研修のご支援をして下さった野

口医学研究所の浅野先生、rumikoさん、rolaさん、そしてThomas Jefferson university hospitalでお世話をして下さった先生方、スタッフの方々に心より御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。