米国財団法人野口医学研究所

TJUでの実習レポート

学生岸原誠

2014年3月米国トーマス・ジェファーソン大学

20143月、フィラデルフィアのトーマスジェファーソン大学病院で研修をさせていただきました。現地で経験した全てのことが、日本にいるだけは決して得ることのできないかけがえのないものとなりました。私は3年生で参加させていただき、病院での実習をするのには知識、経験ともに不足していましたが、それでも毎日必死についていったことはこれからの臨床実習における大きなプラスになりました。私が将来、どこの国でレジデンシーをするのかは分かりません。日本、アメリカだけでなく、それ以外の国の医療はどうなのかと考えることもあります。しかし、どの国にいたとしても「英語で患者さんに症状、治療法を説明し、医療スタッフと話し合えること」というのは必須のスキルだと実感しています。今回アメリカでの研修を終えて、そのモチベーションがさらに高まりました。また、日本との教育の違いやアメリカ医療の抱える問題に触れ、私の視野も広がりました。

まず、学生が病院でのカンファレンスに積極的に関わっていく点に驚かされました。最初は学生だとは思わず、レジデントだと勘違いしていたくらいです。学生が1人の患者さんについて症状や治療法をカンファレンスでプレゼンするというのは日本の医学部ではあまり見られないことだと思います。しかし、学生が実際に患者さんについて考え、診断し、治療方針まで立てることで責任感が生まれ、得られる知識と経験はより多くなるはずです。学生に患者さんを任せることは医師と学生の双方にとって大きな責任を伴います。覚えることと実際にできることは全く違いますし、アメリカでは「使えない知識は知識ではない」という考えを実践していると感じました。

また、アメリカの抱える医療問題を実際に目にしたことは衝撃的でした。日本と違い、アメリカでは全ての国民が保険に加入しているわけではありません。保険に入っていないホームレスの患者さんの多くは救急に来ていました。それは、救急に来れば温かい場所を確保でき、食事ももらえるからという理由もある、と聞いたときはショックを受けました。また、障害があると認定されればMedicaidという保険に加入できるため、患者さんは自分に障害があることを医師に証明してもらうために書類を持ってくる、ということを聞いた時も驚きました。現場のどの医師と話しても、皆「アメリカの保険制度はおかしい。明らかに遅れている」と言います。この状況が改善されないことをもどかしく思っています。患者さんのためにベストを尽くしたい、という気持ちを感じ、それは世界共通の医師の信念なのだと感じました。また同時に、やはり全ての患者さんは平等に治療を受けられるべきだ、ということも身をもって実感しました。

私は自分の英語力に自信を持ってトーマスジェファーソン大学病院に来ましたが、今回の研修では自分の英語力の低さを実感しました。疾患名や症状の英単語ならまだしも、薬の名前は聞き取るのに苦労しました。またレジデント同士での病院内で交わされる会話はスピードが早く、理解するのに医学知識も要するので、何について話していたのか全くわからなかったこともありました。英語力を上げるだけでも、医学知識を増やすだけでも不十分であり、両方が備わって初めて「英語で患者さんに症状、治療法を説明できる」ことが可能になるのだと思います。これからはこのことを常に意識しながら勉強に励み、患者さんに信頼される世界のどこでも活躍できる医師となれるように努力していきます。

 

謝辞

 

今回、このような素晴らしい機会を与えてくださった野口医学研究所の浅野先生、町先生、Stelloraさん、医学交流担当の掛橋様、トーマスジェファーソン大学病院のRadiさん、Ms. BogenDr. LeBudeDr. KavanaughDr. MajdanDr. Mauntner、そして一緒に研修を行った学生のみなさん、本当にありがとうございました。その他、今回の研修を支えてくださった皆様、心より本当に感謝しております。