米国財団法人野口医学研究所

トーマスジェファーソン研修

学生井上美砂

2014年3月米国トーマス・ジェファーソン大学

この度は、野口医学研究所主催のトーマスジェファーソン大学Clinical Skills Programに参加させて頂きました。1週間という短い時間でしたが、様々な充実したプログラムが組まれており、大変充実した内容でした。具体的には、Internal medicineemergency departmentでチームに加えてもらってレジデントのシャドーイングをしたり、Family medicine outpatient clinicpediatric centerを見学したり、カンファレンスに参加させてもらったりしました。学生1人につき1チームに割り振られるように配慮して下さっていたので、実習中ひとりひとりがドクターやジェファーソンの学生と話す機会が多かった点がよかったと思います。

 

Internal medicine, Emergency departmentで学んだこと

内科・救急部を通して日本とアメリカで最も大きく違うと感じたのは、医師以外の医療従事者の数です。看護師、薬剤師、理学療法士、社会福祉士など様々な職種の人が病棟におり、毎朝医師チームと共にカンファレンスを行っていました。またそれらの職種間の分業もきっちり分けられていて、日本より医師の仕事が少ないと感じました。その分医師は一人ひとりの患者の診察を丁寧に行っていたし、毎日約2時間もチームカンファを行っていたことには驚きました。一人の患者をそれだけ多数の医療関係者でみることになるので、それだけ情報共有にも時間をかけるのだと思いました。シャドーイング中には、英語がつたなくてもなにか先生に質問する、積極的な姿勢を持つことが大切だと感じました。救急部で、はじめ距離感が分からず忙しそうな先生の邪魔になってはいけないと思っていたら置いていかれてしまい困った場面がありました。しかし、些細なことでも質問をすると忙しい中でも時間を割いて丁寧に教えて下さり、徐々に慣れると一緒に診療させて下さいました。いつも教えてもらう側に回りがちなので、私にとっては良い経験になりました。また同じ医学生でありながら日本の学生とアメリカの医学生の違いには大変驚きました。日本では学生は医師と学生は見学という立場がほとんどですが、アメリカでは高学年になると学生も医療に参加し、受け持ち患者を持って実際に検査や薬のオーダーをし、退院後の方針まで関わっていました。もちろんまだ免許はないので、最終的な判断にはレジデントのサインがいるらしいのですが、学生が一人で回診もして回るし各科の専門の先生のところに足を運んで質問に行ったり、電話をかけて聞いたりしていました。受け持ち患者さんのことは全て把握していなければならないので、朝4:30には病院に来ているというのにも愕然としました。実際にアメリカの医学生と触れてみて、いい刺激をもらうことができました。自分も日本に帰って頑張らなくてはと思いました。

 

Skills and Simulation Center

数年前にできたばかりのジェファーソンのシミュレーションセンターは非常に立派な施設で、十分な数と種類のシミュレーションが用意されていました。このシミュレーションセンターではMajdan先生の循環器の講義を受けました。最新機器を使いながらのMajdan先生の循環器の講義は非常に分かりやすく明快でした。また人格者である先生の医療に対する考え方なども聞くことができ、「病気ではなく、患者を診なければならない」と先生がおっしゃっているのを聞いて、本質的なところでは日本もアメリカも変わりはないのだと感じました。またシミュレーションも用いて内視鏡や腹腔鏡のトレーニングを受けたり、実際に4年生の臨床技術の講義に混ぜてもらったりしました。

Family medicineについて
 私はfamily medicineprimary careに興味があり、アメリカの医療見てみたいというのが今回の実習の目的でした。学生が運営するホームレスのためのshelterjeffHOPE」をとても楽しみにしていたのですが、体調不良で参加できなかったため、見学させて頂いたfamily medicineについて述べたいと思います。 ジェファーソンの大学病院では外来患者専門の建物があり、一日で2000人ほど外来患者がこられるそうです。日本では大学病院の外来となると非常に多くの患者さんがおり、効率が求められるという印象だったのですが、アメリカの外来は1人の患者さんにかける時間がかなり長く感じました。難民の患者さんで言語が通じなかったり、保険のない患者さんだったりとなかなか日本では経験することのできない症例もみることができることができました。

プログラム全体通して
 野口医学研究所のご支援のおかげでこのような貴重な経験をさせて頂き、ありがとうございました。日本の医療のこともまだまだ知らないことばかりですが、学生の今、アメリカの医療、医学教育に実際に知る機会を与えて頂いたことは大変貴重な経験となりました。今回の実習で改めて英語で自分の意見をはっきりと伝える能力は必要不可欠だと感じました。私は英語力のなさから思っていても発言できずもどかしく思うことも多かったので、それを今後の課題として頑張っていきたいと思います。最後になりましたが、浅野先生をはじめとする野口医学研究所の方々、現地でお世話して下さったJefferson JAPAN centerの方々、一緒に研修をした8名のみなさん、本当にありがとうございました。