米国財団法人野口医学研究所

ハワイ大学 内科エクスターン 研修報告書

安房地域医療センター 後期研修医安藤崇之

2015年8月ハワイ大学

私は今回 Kuakini Medical Center(KMC)で 3 週間の内科研修、渡慶次先生のクリニックで

1 週間の Family medicine の研修をする機会を頂いた。

KMC では、A~D 4 チームのうち、Team D(Intern: Dr.Bucher, UL: Dr. Watanabe)に 配属となり 3 週間の見学をさせて頂きました。Dr.Bucher は、来年から皮膚科の Residency が決まっている Transitional year Intern で、Dr.Watanabe は、日本人の 2 年目の Resident の先生でとても親切に Matching のアドバイスも含めていろいろと教えて下さい ました。

Internal medicine のローテーションの朝は、6 時までに Night float から夜間の申し送り を受けることから始まります。Night float は、夜勤のみの Intern で夜間のみ全4チームの 患者をカバーし、夜間の入院を受けるのが仕事です。申し送りを受けた後は、カルテをチェ ックして担当患者の回診をします。回診が終わったら Upper level Resident と各患者の 方針について話合ったり、一緒に回診をします。その後曜日によっては朝のレクチャーがあ ります。レクチャーの後は ICU round があり、各チームの ICU 患者を Intensivist にプレ ゼンして、方針を話あいます。Kuakini 病院では、ICU だけのローテーターはおらず、内 科のチームが ICU の患者もカバーしていました。その後は、特に全体でのカンファレンス はなく、夕方 5 時の Night float への Sign out までに病棟業務をこなすというのが 1 日の 流れでした。Kuakini 病院では、同じ Team の患者でも各患者ごとに Attending Doctor が異なり、患者ごとにそれぞれの Attending に連絡をとって相談しなければならないとい う変わったシステムでした。また、Team 4 チームあり、4 日ごとに On call が回ってき ます。基本的には、On call のチームが全ての入院を受けることになっていました。一応チ ーム全体で 10 人、1 日の最大の入院は 5 人までなどと制限は設けられていましたが、On call の日は一度に 2,3 人の入院が入ったりとかなり多忙でした。逆に On call ではない日は、 比較的余裕があり、業務が終わると 15 時ごろでも Intern 達は帰宅し、電話で夕方の Sign out をしていたりとアメリカならではの働き方をしていました。

朝のレクチャーは、Morning ReportCardiologyNeurologyInfectious DiseaseEBM などと非常に充実し ていました。Morning report では、最近の入院症例を Intern が発表し、そこから指導医が話を広げてみんなで Discussion したり知識を整理したりととても勉強になりました。単純で 典型的なケースでも指導がうまく Learning point や、 Discussion point を指摘して話を展開してくれて、「どんなケースでも必ず学ぶことはある」と言っていたのが非常に印象的でした。各専門医のレクチ ャーでは、ケースを扱ったり、各疾患のレクチャーだったりと様々でしたが、どれも Interactive で勉強になるものばかりでした。EBM では、Resident が自分のケースから Clinical Question を見つけ、そこから文献検索を行い、その文献を批判的吟味し、実際の 臨床に応用できるか議論するという EBM の実践の練習の場となっていました。

今回は Observer ということで、基本的には診察やカルテ記載は禁止という形での見学で した。Dr.Watanabe が配慮してくださり、Morning report ICU round でのプレゼンで きるように手配してくださったのですが、自分が訪れたのが 9 月でまだ Intern 3 ヶ月目 ということで Intern の教育が優先ということでプレゼンをすることができませんでした。 最初は Shadowing だけでしたが、Team での Discussion に参加したり、Intern に自分が 知っていることをシェアしたりと Team の中での役割を見つけることができ、見学を充実 させることができました。教育責任者の Dr.Sumida が、最終日に EBM カンファレンスの プレゼンをする機会をくださり、最後の最後で全員の前でプレゼンをすることができまし た。

最後の 1 週間は、渡慶次先生の元でお世話になりました。渡慶次先生のローテーション は、”Dojo(道場)と呼ばれていて、朝が非常に早いことで有名です。朝 6 時半に渡慶次先 生がいらっしゃるので、それまでに入院患者と Nursing home の患者の回診をしてカルテ 記載をするというところから朝が始まります。その後は、患者のプレゼンをして、渡慶次先 生が毎日いくつかのトピックについてレクチャーをしてくださりました。渡慶次先生のレ クチャーには必ずそのトピックに関する医学史が含まれており、知らなかったことばかり だったのでとても勉強になりました。印象的だったのは、入院していた渡慶次先生の患者さ んが亡くなった際に、「今までもう百人以上自分の患者を亡くしたけどいつまでたっても慣 れないね。この患者さんとはもう 40 年の付き合いだから、この人との思い出が蘇ってくる よ。」とおっしゃっていたことです。外来中に患者さんが亡くなったという知らせが入った 時にとっさに病棟に向かい、患者さん家族一人一人に声をかけている姿をみて、家庭医の継 続性や“家族を診ることの意味を強く感じました。その他にも渡慶次先生には医師として あるべき姿勢、“Work as a servantという渡慶次先生のモットーを学ばせて頂きました。

謝辞 最後になりましたが、このような見学の機会を与えてくださり手配した下さった野口医学 研究所の皆様、受けれて頂いたハワイ大学の皆様、クアキニ病院の皆様、渡慶次先生、そし て快く送り出してくれた勤務先の皆様に感謝の意を表したいと思います。ありがとうござ いました。