米国財団法人野口医学研究所

野口医学研究所 研修報告書

練馬光が丘病院総合診療科山田悠史

2014年10月ハワイ大学

今回、ハワイ、オアフ島にあるクアキニ病院で1ヶ月間研修させていただいたので以下に報告いたします。

 

  • クアキニ病院での内科研修(3週間)

クアキニ病院では初日から内科の病棟チームに配属していただきました。チーム構成は、2-3年目の上級レジデント、卒後1年目のインターン、医学生、私という構成で、クイーンズメディカルセンターとは異なり、アテンディングは患者によって異なります。毎日の業務は、朝のインターンとのプレラウンド、その後、日によって異なりますが、モーニングレポートや循環器ラウンドなどがあり、ICU回診、アテンディングラウンド、そして日々の病棟業務へと移ります。モーニングレポートでは、臨床推論形式で討論が行われ、医学生から上級医までの様々な意見が聞けるため、非常に勉強になりました。4日に1日はチームがオンコールで、新規入院患者が最大5人までチームに入ってくるため、4日に1日は非常に忙しい日となります。患者への接触やカルテの記入が許可されないオブザーバーという立場からチームの一員としてできたことは、モーニングレポート、循環器ラウンド、EBMカンファレンス、ICUラウンドでのプレゼンテーション、チーム内での最新の論文の共有とミニレクチャー、日々の回診でのディスカッション、新入院患者への問診です。黙っていると見ているだけになってしまうと思いますが、こちらから積極的に手を挙げれば、医学生と半々程度で業務を任せてもらえ、米国での臨床の一幕を実際に経験することができました。はじめの2−3日は不安や緊張もあいまって自分の思うように行動できませんでしたが、どんな小さな事でも気づいたことは発言し、チームメンバーが見落としていることなどに気を配ってサポートし、直接患者への接触がない仕事の手伝いを積極的にすることにしました。すると、徐々にチームメンバーの一員として扱ってもらうことができ、仲良くなり、2週目には自分の力を発揮できている感覚を得ることができました。私個人としては初めての米国オブザーバーシップではなかったので、特別に日本との違いなどに驚きを感じる点はなかったのですが、あらためて感じられたのは日常の場面、場面に自然に存在する屋根瓦式の教育、これがやはり強みだと感じました。上級レジデントがインターンを、インターンが学生を、忙しいからとないがしろにせず、暇を見つけては教育する姿勢がごく自然にそこにあるという雰囲気を我々も見習うべきだと思いました。

 

  • 渡慶次先生道場(1週間)

渡慶次先生との日々は内科研修が終了した日、土曜日の夜からスタートしました。初日は申し送りで翌日の日曜日から朝ラウンドが始まります。道場に休日などありません。毎日朝3時から4時に仕事をスタートし、630分に先生と待ち合わせてありがたいレクチャーをしていただきます。ある時はプレゼンテーションの特訓、またある時は医師としての心構えのお話。私は以前にも道場での訓練を1ヶ月ほど経験させていただいていたので、個人的には2度目の参加となりましたが、こんなにも日本の医学の歴史に造詣が深い先生に日本で出会ったことがありません。また、こんなにも医師としての心構えを真剣に教えていただいた経験は他にありません。ウィリアム・オスラー先生がジョンスホプキンスに就任した際に行われた’Tranquility=平静に関する講演の話、武道と医道の共通点のお話、仁義礼智信に関するお話。ここに記載すると非常にうすっぺらに聞こえてしまうので、あえて記載はしませんが、いずれのお話も今も深く心に刻まれています。レクチャーが終わると、その後ラウンドを行い、外来研修。外来は夕方まで続き、外来終了後には再度病棟ラウンドを行います。救急で渡慶次先生の患者が受診をすると夜中でもコールがあり、先生の指導の下、問診や診察、カルテ記載を行います。また、ディクテーションなどもさせていただき、現地で研修医になったかのようなことが直接体験できました。医師として未熟な私が今回の研修を礎として、今後糧にしていけるような大切なものをいただいた1週間でした。

 

  • これから留学される先生方へ

1ヶ月という時間は長いようでとても短く、生かすも殺すも自分次第だと思います。Observershipという名称を鵜呑みにして、見学だけで終えてしまうには非常にもったいないです。また、実際に働いているレジデントやアテンディングの先生方にもこちらからの積極的な参加をあたたかく受け入れてくださる雰囲気があります。せっかくいただける貴重な機会ですので、ぜひ日本にいる間から現地でできそうなことを準備していくと良いと思います。たとえば私はレクチャーやEBMカンファレンスのスライドをあらかじめ4-5個作成してから出国しました。また、自分のできそうなことにはどんどん参加し、病棟ラウンドやカンファレンスでも積極的に発言をし、チームの一員になることを心がけてください。それにより自分にとっても、受け入れてくださるクアキニ病院の先生方にとっても、より素晴らしい時間となることは間違いないと思います。

 

  • 謝辞

最後になりましたが、今回の研修をサポートいただいた野口医学研究所の方々、Paula Uchimaさん、クアキニ病院での研修で直接指導いただいたDr. Kenneth Sumidaをはじめとした多くの先生方、渡慶次先生、病院外で現地の生活をサポートいただいた日本人レジデントの方々、本当にお世話になり、心より感謝いたします。