米国財団法人野口医学研究所

エクスターン研修レポート

岩手県立高田病院 第二内科長高橋宗康

2016年8月米国トーマス・ジェファーソン大学

この度、野口医学研究所の4週間(85日~26日)のエクスターンプログラムに参加させていただきました高橋宗康です。トーマス・ジェファソン大学病院のEmergency departmentED)で研修を行いました。EDは、2つの診療セクションに分かれており、3交代制で診療していました。1つの診療チームは、アテンディング1名、レジデント2名、インターン1名、学生数名で構成されていました。

 

私は、精査が必要な患者から詳しい病歴と身体所見をとりました。そのケースをアテンディングやレジデントにプレゼンテーションし、鑑別疾患と必要な検査をディスカッションしました。内科から外科まで様々な患者が来院し、適宜外傷患者も来院しました。特に米国特有の疾病には驚きをもって接しました。例えば、HIV患者や薬物中毒患者は日本では診療することが稀です。また、sickle cell diseaseも教科書の知識しか持っておりませんでしたが、EDでは頻繁に患者が来院し病態に接しました。ただ外傷は、レベル3であるため、交通外傷が数件のみと症例としては少なかったと思います。

 

EDでは、内科のような決まったグループによる診療と異なり、その日ごとにメンバーが交代するため、毎日自己紹介と私ができることを説明する必要がありました。つまり、「単なる見学ではなく英語で患者の情報を聴取し、ディスカッションできること」を相手に認識してもらうことがスタートラインですが、一度チームの一員として認められると、患者の診療を協力して行いました。また「病歴をプレゼンして終わり」ではなく、そのあとの検査のフォローや、コンサルトの結果に肉薄して、最終的にどうなったかにこだわりました。そのような私の姿勢は、徐々にEDのチームとしての位置づけを高くしていったように感じます。多くの患者を診療することができ、多忙と充実の毎日でした。特にアテンディングのディスカッションは刺激的で、鋭い質問が飛んできました。フィードバックは的を射ており、彼らの問答をしっかり答えられるよう努力を重ねました。

 

また、私は、今回EDの窓口の医師であるDr. Wayneにお願いし、土日の診療にも参加させていただきました。Urgent Careクリニックや救急診療のIntake、そして中国人などへ無償診療しているクリニックも診させていただきました。Dr. Wayne先生は診療能力が高く、患者様への病状説明はお手本のような内容でした。またレジデントの教育にも積極的で、私の医師としてのロールモデルとなりました。

 

とはいっても、英語については手ごわいと感じました。患者と話す分には問題はありませんが、レジデントやアテンディングとディスカッションとなるとみな早口になり、理解できないことが度々ありました。今後の課題と認識し、さらに日本で研鑽をつむ心積もりです。さらに語学が上達すれば患者の社会的問題や感情に寄り添う医療ができると思います。それにこれまでに日本で培った診療が加わることによって、非常に充実する研修と思いました。

 

休みの日には、野球を見に行ったり、24時間開いている図書館で勉強したりと生活を楽しみました。私は、妻と1歳の息子がいますが、将来フィラデルフィアで過ごすことをイメージしながら生活をしました。また一緒に研修した長崎先生と津島先生と助けあったのが、研修中の支えになりました。

 

現地のジャパンセンターの由美子ラジさん、飯島さんにはお世話になりました。彼女たちがいなければ、臨床実習以外の事務的なことに多くの時間と労力が取られ、困難をともなったと思います。電子カルテのアクセスをすみやかに対処してくださったこと、シミュレーションセンターの見学を組んでくれたことなど助かりました。渡航準備の段階で、野口医学研究所のご尽力下さった全ての先生方・事務の皆さまに心から感謝申し上げます。定期的に準備を催してくださるのは、仕事をしながら準備をする私たちには必要不可欠でした。最終日には佐藤先生らがディナーに誘ってくださり、貴重なお話を伺うことができました。今回、滞在中には、Dr. Wayne先生をはじめ、多くの救急のスタッフ、レジデント、学生、コメディカルにお世話になりました。私を温かく迎えてくれたこと、感謝しております。今後も野口医学研究所の崇高な理念の元、エクスターンを継続してくださればと思いました。どうもありがとうございました。