米国財団法人野口医学研究所

Pacific Partnership 2018 参加を振り返って

神奈川県保健福祉部保健予防課(厚木保健福祉事務所) 保健師(看護師)濱新作

2018年4月スリランカ

Pacific Partnership (以下 PP)2018 を終えて、これまでの経緯を振り返ってみた。1 月の募集・選考・結果発表と慌ただしい時間が懐かしいが、「濱さんは、昨年 PP に参加さ れたので今回は辞退してください」と言われたにも関わらず、夜勤明けであったのに、し ぶとく競争的な選考にチャレンジしたこと・諦めなかったことは正解だったと思う。今後 もギリギリの状況で、あらゆる競争に挑み、チャンスを掴んでいかないといけない場面は 多々あるだろうが、今回の体験を思い返して今後の人生の中で奮起していきたい。

昨年の PP と異なり、今年の PP18 では、災害医療援助を想定する Collaborative Health Engagement(以下 CHE)に加わることが出来た。これは初めて自分が PP の活動を知った時の イメージそのものであったし、野外・海外・国際チームでの活動というのは、自分がやり たいと思った医療活動そのものであった。

現地の患者と直接かかわり、他の看護師・衛生兵・通訳と協力しながらトリアージを行 うことが出来たのは、「英語での環境でもここまで出来る」という感触が得られたとても貴 重な機会だった。当たり前のことだが、リバティー返上でも、CHE に参加できて良かった。 観光は、時間とお金さえあれば可能だが、PP での活動は今しかできないのだ。

しかし、多くの患者を診れば見るほど、経験・勉強不足を思い知らされた。もっと深い アセスメントや患者の理解ができればと思った。「国際協力に来てまで自分が勉強するなん てとんでもない」と言うひともいるし、確かに間違えない。だが、自分がトリアージした 患者を、どのように医師が、診察・診断・治療・教育するかということを一つの流れで見 るというのは、あまり機会が少ないけれども、プライマリケア対応能力を鍛えるのには非 常に有効なのではないかと思う。また、それは、自分がどのような医療従事者になりたい か、問いかけるものであった。

一緒に活動した看護師たちは、アメリカだけでなく、カナダやオーストラリア軍の所属 であったが、国は違えどやっていることは一緒のように感じた。その看護師それぞれの性 格や技量・プロフェッショナリズムにより、パフォーマンスは変化するし、見習うべき看 護師も複数いて、彼女・彼らと仕事に関する価値観をシェアできたのは、とても刺激的で モチベーションを上げる出会いだった。

一緒に何日か活動してみると、いろんな性格の看護師がいることに気づく。協調的で、 場の状況に応じて考えようというひと。初めから決まり事を決めて、周りの意見は聞かな いひと。後者は、とても厄介だが、自分が正しいと判断したことは、服従的にならず自律 的に動いていいし、常に患者の方向を向き、何をすれば患者の利益になることかというこ とを考えて行動するのが大切だという結論に至った。こんなところに来てまで同じ看護師 に指示されて動くなんてとても面白くないし、惨めである。

2 週間というのは、一見長そうで、あっという間の短さであった。政治的なことが理由で、 民間 NGO のメンバーとしては、12 か月に渡る航海に参加できないのは残念であるが、カ ナダ・オーストラリア・イギリスのように船内の医療オペレーションにも深く関わりたい と思った。

SMEE においては、去年の反省が活かせず後悔が残った。個人的装備や荷物の制約等もあ るなど言い訳はあるが、やはり自分が主役となって一つでもプレゼンテーションや教育的 なパネルを準備したりできなかったのが残念だった。

しかしながら、CHE のヘルスフェア会場で、待合患者に向けて Non Communicable Disease(非感染性疾患)に関しての個別の患者教育を任せてもらえた。現地住民の生活の背 景を聞きながら、生活指導ができたのは有意義な経験だった。様々な地域住民の生活習慣 を聞いていると、その国のその地域に住む人たちがどのような価値観で、どのように暮ら しているのかが見えてくる。自分が出発までに、日本で JICA や国立国際医療センターなど に足を運んで行った資料収集・事前学習したことと概ね合致しており、ある程度途上国に おける健康課題は共通するものがあることに気づいた。活動を通じて、スリランカの人た ちの生活や文化の違いが見えたのが、とても興味深かった。

自衛隊の人や他の NGO の人たちとともに活動したが、とてもいいチームだったと思う。 しかし、野口の選考のような英語力審査は無く、一部日本人メンバーが、コミュニケーシ ョンに苦労している・活動自体に参加できない・英語を使わなくてもいいような単純作業 にしか関わらない場面を CHE だけでなく、船内オペレーションにおいても少なからず目撃 した。「参加することに意義あり」的な精神では、とてももったいないと思うし、行きたい のに参加できなかった人に対して申し訳ないと思った。また、他の参加国からの日本人に 対して「英語でのコミュニケーションが取れない人々」という概念の固定化が懸念される と感じた。

自分としては、自分の英語能力をフル活動させたが、ただ、話を聞く、話すだけではな く、意見を持って建設的な提案をすること・積極的なコミュニケーションを同僚とだけで はなく、リーダーシップとも図ることを今回の活動の基本的な姿勢と位置づけ、実行でき たと思う。もっと英語能力を向上させ、深いコミュニケーションを図ること。よりアカデ ミックな会話ができるようになることが今後の課題である。

それと同時に、ただ単に「英語が出来ればいい」のではないことも感じさせられた。ユ ーモアや、ポジティブにコミュニケーションを図る姿勢。笑顔・挨拶・プロフェッショナ リズム・やる気を見せることなどの「ノンバーバルコミュニケーション」がとても重要な ファクターであることを思い知らされた。

自分なりに誇りをもって仕事をしていたつもりではあったが、PP18 の活動中、自衛隊の 一部の幹部からの暴言もあり、看護師という職業や仕事に対する国内の視線に対しても、 否が応でも、その事実に対して目を向けなければならなかった。しかし、活動を振り返っ て、多くの友人を作ることができたのは、金銭では得難い贈り物だった。日本だけで集ま って過ごすのではなく、折角の多国籍オペレーションなのだから、もっとカオスな環境で 生活・活動(公私共に)してもいいのではないかと次回に対して提言したい。本心として は、もっと長期で一緒に仕事をできれば尚最高だったと思う。

最後に、2 週間の貴重な機会・出会いを提供してくださった野口医学研究所の皆様と、佐 野先生と一緒に活動ができたことにとても感謝しています。本当にありがとうございまし た。そして今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

以上