米国財団法人野口医学研究所

PP2017 レポート

東京大学大学院医学系研究科 医学教育国際研究センター林幹雄

2017年5月ベトナム各地

2017 5 7 日から 5 18 日にかけ、NGO 代表として Pacific Partnership 2017 に参加 させて頂きました。ベトナム各地において、アメリカ、イギリス、オーストラリアの医療 関係者らと共に医療活動を行いましたが、現地での活動を通じて実感したことを振り返り ながら、その概要について述べさせて頂きます。

今回の活動には NGO から 10 名の医療要員が日本から参加し、野口医学研究所からも 5 人の 医療要員が参加しました。昨年の活動(Pacific Partnership 2016:パラオ共和国)は日 本主導であったことから、融通が利いて、のびのびと活動できたのに対して、今年の活動 (ベトナム)は米国主導ということもあり、活動開始当初は行動制限が厳しく、活動初日 には活動予定の病院にすら立ち入れませんでした。 本年度の事業では、各参加者が現地のいくつかの病院で医療活動を実施しながら、多職種 を対象にした教育活動を行いました。私が主に活動したのは、ダナン総合病院という 1200 床の同地域における中核病院ですが、主な医療活動としては同病院の救急外来において、 現地の若手医師と一緒に診療を行いました。どの病院においても英語は通用せず、何をす るにも現地の方による通訳が必須という状況であったのが印象的でした。同病院には中症 ~重症の患者さんが数多く来院し、救急外来には 1 200~300 人の患者さんが受診するよ うです。救急外来は次から次へと搬送される患者さんで溢れていますが、常時 4~5 人の若 手医師で外来を回しているといった状況でした。他の病院と比較して医療機器は充実して おり、衛生状態も良い方だと感じますが、日本の水準と比較するといずれも決して良いと 言えない状況でした。症例はベトナムの交通事情等も関係してか、交通外傷が多く、外傷 以外にも多岐にわたる内科疾患を経験しました。 教育活動については、準備していった英語の講義(5 micro skills)をベトナム語に通訳し てもらったり、資料(英語)の一部をベトナム語に書き換えてもらったりして、いろいろ 手探りしながら実践しました。説明しても全く相手に伝わった感じがしないなぁと思って いましたが、講義後に参加していた方から資料を共有して欲しいと言われたり、想定外の 議論が突然始まったりして、実感は湧かないものの何らかの反応が得られたようでした。 その中でも印象的だったのは、講義内容を頭では理解できるけど、現場で働く個々の背景 (教育環境)が違うので、今回学んだ内容をどう活用すればいいか分からないという現地 医療関係者からのコメントでしたが、そんな議論を通じて、異文化で講義することの難し さについてあらためて考えさせられました。その一方で、前述したような議論が発生した ことや自分が行った講義を客観視してその場でコメントができたことは、昨年(パラオで の教育活動)と比べて自分がいくらか成長した点だと感じました。 以上、今回参加させて頂いた Pacific Partnership 2017 において行った医療活動および教 育活動の概要についての記述を行いました。自身にとって 2 度目となる海外での医療支援 活動でしたが、昨年と同様に出来たことも出来なかったことも含めて、とても貴重な経験 になったと実感しています。また、こちらも昨年と同様で、環境が異なるためか体調管理 に悩まされることもありましたが、今までの自分自身の臨床経験または教育現場における 実践経験を活かしながら、現地で出来ることを精一杯出しきれたのではないかと自己評価

しています。一方で、英語が通じない外国圏での経験を通じて、現地における医療現場の ニーズを把握し、その文脈に沿った形で医療支援活動を行うことの難しさを改めて実感し ました。今回の活動に留まらず、今後も海外での医療支援活動に関わっていきたいと考え ています。さらには、将来的に本プログラムへの参加を希望している後進のサポートにも 継続的に関わらせて頂きたいと考えています。 最後になりましたが、今回の医療活動の準備にあたりご指導を頂きました野口医学研究所 理事長の佐野潔先生、医療活動参加前より丁寧にサポートをして頂きました野口医学研究 所スタッフの方々、一緒に活動に参加して頂いた医療者の方々に対して、あらためてお礼 を申し上げます。Pacific Partnership 2017 に参加させて頂き、ありがとうございました。