PP2017 報告書
2017年5月7日から5月18日までベトナムのダナンでPPの一員として活動に参加させていただきました。今年度はSMEEをメインとしてDa Nang General Hospital、Orthopedics and Rehabilitation Hospital、Military Hospital、Oncology Hospital、115 Emergency Centerの5病院で地元医療従事者と意見交換・医療教育を行いました。
私は5月9日から12日まではOrthopedics and rehabilitation hospitalでNeutrition、Pediatrics OT、Stroke treatmentの活動に参加させていただきました。
Neutritionでは米軍の栄養士と共に病棟で個々の患者に対し栄養指導を行いました。病院食、治療食という概念が存在しないベトナムの病院では家族が患者の食事を用意します。経管栄養剤などはなく(高いのかは不明です)家族がブレンダーでとろとろにしたものを準備していました。糖尿病患者や、高血圧患者、更に寝たきりの患者にはどれくらいの食事が必要か、どのような種類の食事を準備するべきかなどのアドバイスを行いました。その後、看護師を対象に基本的な栄養について、糖尿病患者にはどのような栄養バランスが必要であるかのLectureを行いました。病院食がないためか、看護師の栄養の知識が乏しいように感じました。患者がどのような食事をどのくらい摂取しているかの把握はされていないようで、医療スタッフから家族への指導などは無いようでした。
Pediatrics OTでは実際にリハビリ室での活動を行いました。リハビリスタッフが少ないようで、患者の家族が見よう見真似で子供を遊ばせている印象でした。各患者に対し、どのような力が弱いからどのような動きが大切かというアドバイスを行いました。その日はCPの患者、TBIの患者が比較的多く見ました。遊びの中でリハビリを取り入れられるように個々にアドバイスをしていました。家族から、この病気が良くなる薬は無いかと聞かれることが多く、先進国の薬があれば治してもらえるという期待が強く感じられました。ベトナムではTBIが多いといわれていますが、予防の概念は薄く複数人でのバイク乗車や、特に子供はヘルメット無く載せられている姿をよくみかけました。起こってしまったことに対してのリハビリはとても重要ですが、スタッフは十分でなく家族に的確なアドバイスができていない状況であるため、医療は万能ではないこと、予防する大切さについての教育も必要であると強く実感しました。
Stroke treatmentのSMEEでは看護師を対象に、病棟でのリハビリはどんなことができるのか、精神面でのフォローが大切であることを各患者を回診しながらアドバイスを行いました。リハビリ病院にも関わらず、リハビリスタッフが少ないため、病棟では寝たきりでなかなかADLが改善しない患者が多くいらっしゃいました。病棟での看護・介護は家族が行っているようで、家族がいない場合には同室の患者家族が助けるといった状態でした。患者の家族が介護を行うことはとてもいいことだと思いましたが、家族の負担軽減のためにも、移動の仕方、口腔ケアの仕方、更衣・整容動作など看護師が介入しなくてはならない部分があることを説明しました。口腔ケアの方法はLectureで説明をし、翌日に実際に患者さんの口腔ケアを行い家族と看護師に方法をアドバイスしました。今までの習慣を変えることは簡単なことではなく、看護師もピンと来ないようではありましたが、リハビリテーション病院では看護師の力量で患者のQOLが変わってくると感じます。患者家族が病院内で積極的に介護をしているという日本にはない良さがあるため、この部分を活かしつつ看護師がプロフェッショナルとして患者・家族指導という点で関わることができれば、医療者のSkill upにもつながり意欲的に取り組めるのではないかと感じました。
5月15日、16日はGeneral hospital、Military hospitalで看護師、若手医師を対象にBLS、ACLSを改定したものの講義、実技を行いました。日本も同様かと思いますが、正確にBLSを行うことができる人は少なく、曖昧な知識が多かったようでした。基礎を学びなおす良い機会になったのではないかと思います。また、実技で実際に行うことで自信にもつながったようでした。
ハンガリーでの医療も日本と比べると、劣っていると感じる部分は沢山ありました。ベトナムの医療は更に劣っていると感じてしまう部分が多かったです。しかし、日本の医療は物理的な面では最新の医療機器、最新の医療物資等が手に入るという点ではよいかもしれませんが、ベストとは言えません。更にベトナムの医療で日本が忘れてしまったパーツがあるのではないかと考えさせられる時間でした。今回、このPPに参加でき日頃狭くなっている視野が広がり、いろんな医療があるということを実感しその中で自分がどのように働きかけていけるのかを考える機会をいただけたと思います。これからの医療者としての人生がどんなものになるのか未知の世界ではありますが、自分の可能性を考えられるようになりました。このような貴重は機会をいただくことができ、本当にありがとうございました。これからも世界に目を向けて活動を広げていきたいと思います。