米国財団法人野口医学研究所

米国の内科診療について触れる機会を頂きました。

沖縄米国海軍病院雫辰徳

2024年9月2日〜9月20日Kuakini Medical Center

野口医学研究所の臨床研修の写真

【内容】
Kuakini Medical Centerの紹介
この度、3週間にわたりハワイ州ホノルルに位置する212床の総合病院、Kuakini Medical Centerで研修をさせていただきました。Kuakini Medical Centerは、1900年代初頭に日系移民向けの医療施設として設立され、現在では急性期医療、長期療養、家庭医療まで幅広い医療サービスを提供しています。地域の中心的な医療機関として機能し、高齢者医療や予防医療にも力を入れ、また日系患者が多く、コミュニティとの深い結びつきを持ち続けており、独自の医療環境を維持しています。

内科での実習内容
内科での2週間の実習では、毎朝6時からPGY-1レジデントと共に担当患者のカルテを確認し、当日の治療方針を議論することから始まりました。まず、前日の経過や検査結果を基に患者の状態を詳細にレビューし、問題点や改善すべき点を挙げます。その後、7時にPGY-2やPGY-3のシニアレジデントが合流し、具体的な治療プランを検討し、シニアレジデントは初期研修医に対して的確な指導を行い、個々の症例に対する考察、治療の優先順位の決定、急性期治療のリスク管理について多くを学びました。

その後、上級医(アテンディング)とともに患者の状態を議論し、治療方針の最終決定を行います。回診後は各患者について電子カルテに記載を行い、必要に応じて検査や治療の指示を出しました。医療現場では正確なコミュニケーションが求められ、レジデント同士や上級医との情報共有が、患者ケアの質を向上させる重要な要素であることを実感しました。

ICUでの経験
9時からはICU(集中治療室)の回診に参加し、重症患者の治療に関する知識を深めました。ICUでは、急性期の重症患者に対する治療方針を議論し、レジデントがプレゼンテーションを行い、上級医が指導を行いつつ、最適な方針を決定していきます。米国ICUではそれぞれの医療スタッフの行える行為も日本と少し違い多職種連携の重要性も実感し、看護師やリハビリスタッフ、薬剤師などと密接に連携することで、より質の高いケアが実現することを学びました。

教育カンファレンス
実習期間中、内科やICUでの回診の合間に教育カンファレンスが開催され、最新の臨床研究や症例に基づく活発な討論が行われました。これらのカンファレンスは、レジデントにとって貴重な学びの場であり、専門医から最新の知識を吸収できる機会でもあり、特に内科系疾患に関するガイドライン変更に関するディスカッションでは、最新のエビデンスが臨床現場でどのように反映されるかを学ぶことができました。

プレゼンテーション
また、自身が担当した症例についてプレゼンテーションを行う機会があり、ICUや病棟での患者の経過や治療計画について発表しました。上級医からのフィードバックにより、プレゼンテーションスキルや症例に対する理解が深まり、特に論理的な構成と、データの正確な解釈と伝達がいかに重要かを強調され、この経験は今後の臨床においても非常に役立つと感じています。

家庭医療科での実習内容
家庭医療科での1週間の実習では、Dr. Tokeshi先生の指導の下、患者中心の全人的なケアの重要性を学びました。家庭医療科では急性疾患に加え、慢性疾患の管理や予防医療にも重点を置いており、患者の生活背景や社会的状況を考慮した診療を実践されておられました。Dr. Tokeshi先生は、医師としての心構えや倫理観についても非常に丁寧に指導してくださり、特に患者との信頼関係を築くためのコミュニケーションの取り方や、エビデンスに基づいた診療の実践を学びました。先生の診療スタイルは、患者一人ひとりのニーズに合わせて柔軟に対応し、個別化されたケアを提供しており、非常に印象的でした。慢性疾患を抱える高齢患者に対して長期的な治療計画を立てるプロセスや、予防接種や定期検診の重要性を患者に説明する場面も多く見られ、また、患者の家族とのコミュニケーションにも細心の注意を払い、家族全体をサポートすることが患者の生活の質に大きく影響を与えることを学びました。

総括
Kuakini Medical Centerでの実習を通して、アメリカの医療システムにおける多職種連携や、患者中心の医療ケアの実際を深く学ぶことができました。内科、ICU、家庭医療科での実習を通じて、異なる医療現場における診療アプローチや、エビデンスに基づく医療の重要性を理解し、今後の臨床活動においても大いに役立つ知識と技術を得ることができ、この貴重な経験は、医師としての成長に大きく寄与するものと確信しています。

賛辞
今回の実習において、貴重な機会を提供してくださいました野口研究所の皆様、Ms. Uchima、そしてKuakini Medical CenterのDr. Kondo、Dr. Sai、Dr. Austin、Dr. Case、Dr. Landon、家庭医療科でご指導をいただいたDr. Tokeshiに心より感謝申し上げます。皆様の温かいご指導とサポートのおかげで、非常に有意義で実りの多い実習を経験することができました。この経験を活かし、今後も医療の現場で貢献していく所存です。

Kuakini Medical Center 外観 Kuakini Medical Center 外観
Dr. Tokeshi 先生とご一緒に Dr. Tokeshi 先生とご一緒に