Thomas Jefferson University Clinical Clerkshipを通して
[はじめに]
2024年3月21日から29日にかけて、米国フィラデルフィア市内のトーマス・ジェファーソン大学(TJU)にてクリニカルクラークシップに参加させていただきました。限られた時間ではありましたが、内科チーム回診、救急、小児科、脳神経外科での実習に加え、実践的なSimulation Class、JeffHOPEでのボランティア、特別講義など、様々な角度から米国医療について学べる、非常に充実した研修となりました。
また、研修中には現地の医学生やレジント、米国でご活躍されている日本人医師の先生方とお話しをする機会も多くありました。私自身、国際的に活躍して臨床・研究の両方で患者に貢献することができるような医師になりたいと考えております。米国の医療について実際に目で見ることができただけでなく、今後の自分のキャリアについて具体的に考えることができたとともに、現地でのかけがえのないネットワークを形成することができました。
[Internal Medicine]
2日間、回診のチームに加わらせていただきました。私のチームは、アテンディング1名、シニアレジデント1名、レジデント2名、医学生3名(M4が1名、M3が2名)でした。アテンディングに、担当している患者のプレゼンをした後、病室に入り、患者の診察をして今後の治療方針について話し合うという流れでした。現地の医学生のプレゼンのレベルの高さに驚きました。患者の情報はもちろんですが、自身が不安である患者のプロブレムを例挙することに加え、行いたい治療方針なども述べていました。アテンディングはその治療方針を積極的に取り入れており、医学生がチームに貢献している様子は、同じ医学生としてとても刺激になりました。また、医学生がプレゼンをする際、アテンディングはプレゼンの改善点や知っておくと良い知識などをその都度説明してくださり、教育的な環境となっていました。
[JeffHOPE]
JeffHOPEはホームレスの患者さんに対して学生たちが主体となって医療を提供しているクリニックです。このようなボランティア活動に参加することの大切さを改めて感じました。無償で医療を提供し、患者さんも診察を受けることができて満足している様子も見受けられ、医療を提供して患者さんを助けることができるという、医師としての根本的な目的を再認識しました。医学生1年生からも多くの参加者がいて、積極的に医療の現場に触れ、患者さんとのコミュニケーションや問診の取り方を学べる、非常に良い機会となっていました。
[救急、小児科、脳神経外科]
米国の救急科では、保険に入っていなくても治療を受けることができるシステムとなっており、様々な患者が運ばれてきていました。他の職種との連携に加え、他の科の先生方とも連絡しながら連携している様子を見て、チームとして医療を提供することの大切さを学びました。
小児科の外来では、思春期の子供には兄弟であってもプライバシー確保のために一人ずつ別々の部屋で問診・診察をしていました。また、学校での様子や、日々の楽しみについても聞き、メンタルヘルスに対してもしっかりケアしているところが印象的でした。患者さんにどの面でも寄り添うということを大切にしたいと感じました。
脳神経外科では、回診に加え、zoomを用いて他の先生方の研究を聞く機会、手術見学もさせていただきました。見学した手術はレジデントの先生が行って学生が助手をしていました。アテンディングの先生はたまに進捗を確認しにきましたが、大部分はレジデントの先生が行っており、外科医として早く独り立ちできるような環境になっていると感じました。
[Simulation Class]
シミュレーターを用いた心音の講義に加え、患者の問診の基本的な取り方を学びました。患者の情報を見落とさないためには、全身をみる必要があり、大事なのは”template”に基づいて問診することであることを学びました。そうすることで、自信を持って見落としたことはないと言えるようになることにつながります。実際にSPさんに問診を行い、フィードバックは、患者に対して自信を持ってはっきりとした口調で話すこと、患者自身が自分自身に注目してくれていると思えるように患者の名前で呼んであげることなどを教わりました。改めて患者さんに寄り添って信頼関係を築くことは、より良い医療を提供するためにとても大事であることを感じました。
[Schwartz Center Rounds via zoom]
“I am human”というテーマで、自身ががんであると診断された医学生など様々なパネリストたちが自身の経験を共有し、一人一人みんなが1人の人間であるということを改めて実感したパネルデイスカッションでした。このようなテーマで話し合い、理解を深めることができるような機会が設けられていることに感銘を受けました。
[まとめ]
現地の学生達はボランティア活動や研究など、勉学以外のことにも積極的に取り組んでいることが素敵だなと思うとともに、とても良い刺激になりました。特に、ボランティア活動を通して1年生の時から患者さんを助けるという意識や医療を学ぶ姿勢は、患者さん中心の医療を提供するということの理解につながるとともに、学生自身も自己成長になると感じました。
また、米国の医療は日本と違って国民皆保険制度がなく、保険制度が複雑である分、治療方針を決める際に保険適応があるかについても考える必要があります。また、米国では多様なバックグラウンドをもつ社会であり、患者一人一人に最適な医療を提供することの大切さを学びました。
[今後]
私の目的は大きく二つあり、アメリカで働くために必要な能力を学ぶとともに自分が何ができて何ができないかを知ること、日本と米国の医療システムや医学教育の違いを実際に目で見て確かめること、の二つでした。今回のクリニカルクラークシップを通して、研修前に掲げていた目的を意識して取り組み、大変大きい学びを得ました。
今自分ができていることに対してはより磨きをかけ、足りない部分は今後できるように励んでいきたいと思います。
[謝辞]
最後になりましたが、このような研修に参加する機会をいただき心より感謝いたします。将来米国で働くことを考えている私にとって、大変有意義な経験になりました。
野⼝医学研究所の佐藤隆美先⽣、⽊暮様、掛橋様、中西様、実習でお世話になったThomas Jefferson University の Dr. Joseph Majdan, Dr. Patrick Kukulich, Dr. IIana Goldberg, Dr. Nicole Tyczynska, Dr. Aria Mahtabfar, Dr. Joseph Schaefer, Dr. Alissa LoSasso, Japan Center のラディ由美⼦様、Vincent様、米国医療制度・保険の講義をしてくださったAkiko Kawai先生、その他本研修の実現に関わって下さった皆様に⼼より感謝申し上げます。誠にありがとうございました。