米国財団法人野口医学研究所

ハワイでの研修を通して米国の優れた医学教育を経験することができました

京都府立医科大学血液内科宮下明大

2023年12月18日〜12月29日Kuakini Medical Center

臨床研修レポート「ハワイでの研修を通して米国の優れた医学教育を経験することができました」

私は今回、ハワイ大学関連病院であるKuakini Medical Centerの内科で2週間のエクスターンシップに参加させて頂きました。

Kuakini Medical Centerの内科は4つのチームに分かれており、私は2年目のレジデント、1年目のインターンの先生で構成されるチームに配属されました。アメリカの朝は早く、朝5時半頃に医局に集合して研修が始まります。僕は1年目のインターンの先生と行動をともにしていました。まずは電子カルテにアクセスし、overnight event、バイタルサイン、最新の血液検査データ、食事量などをチェックします。6時頃からはプレラウンド開始です。病棟に上がって患者さんの診察をするとともに、病棟看護師さん、呼吸療法士、telemetry nurse(モニター心電図を24時間チェックする専門職)に直接話を聞き、夜間なにか変わったことがないかを確認します。アメリカでは多くの職種がpatient careに関わっており医療リソースが豊富であると感じましたが、一方でレジデントは多職種のカルテやアセスメントなどをすべて把握する必要があり、横断的に情報収集し治療方針を考える力が求められると感じました。

7時半からは医局に戻ってUpper residentと患者さんの方針の打ち合わせをします。電解質の補正など急を要するものはこの時点でオーダーしてしまいます。アメリカでは早めに退院することが望ましく、患者さんも多くが早期退院を希望されているため、日本と比べてaggressiveに電解質補正を行っている印象を受けました。また、週に何回かは循環器カンファレンスやMorning report(臨床推論を実際の症例で学ぶカンファレンス)があり、系統的な知識習得の機会も多いと感じました。

10時からはICUラウンドがあり、ICU専属の先生に患者さんのプレゼンをして方針の確認をします。このときに、病態生理に基づいた30分程度の集中治療レクチャーが毎日行われ、内科をローテーションしながら自然と集中治療の知識も身につくように教育カリキュラムが構成されていると感じました。

ICUラウンドが終わると、各attending physicianのところに行き、患者さんのプレゼンをして細かなところまで治療方針のディスカッションをします。私も毎日2-3人患者さんを担当させてもらい、attendingの前でプレゼンテーションを行いました。系統的にプレゼンすることが求められており、またattendingもそれをしっかり聞くという風土が根付いているため、患者さんの全体像を把握して毎日人に伝えるというトレーニングを集中して行うことができます。1年目のインターンの先生はまだ働き始めて半年くらいでしたが、ひとつひとつのプロブレムに対して的確にアセスメントして英語でプレゼンしており、やはりアメリカの医学教育は一流だなと感じました。

それが終わるとちょうど12時頃になるため、カフェテリアでご飯を買って医局で食べます。Kuakini Medical Centerの食事はアジア風に味付けがされており、毎日美味しい食事をいただくことができました。午後からは決まった治療方針に基づき病棟業務を行います。カルテ記載、退院サマリー作成、退院調整、採血·検査オーダー、他科コンサルト、夜間帯への引き継ぎ作成など病棟業務は多岐にわたりますが、患者さんが落ち着いているときは15時くらいに業務が終了することもありました。

これに加え、4日に1回オンコール日があります。救急外来を受診された患者さんで入院が必要と判断された場合、その後の治療をオンコール担当の内科チームが引き継ぐことになります。多いときには5人くらい新入院が入ることがあり、その度に前述したような系統的なプレゼンが求められるため、オンコール日はかなり大変で、一日の研修が終わった後は心身ともにぐったり疲れました。

患者さんは比較的高齢者が多く、治療のみならずGoal of care discussionが必要な患者さんも少なくありませんでした。インターンの先生は慣れた様子で患者さん·患者さん家族と面談していましたが、seriousな話題を英語で説明するためにはしっかりとしたトレーニングが必要だと感じました。また、前述した通りアメリカでは早期退院が望まれるため、治療目標に到達しない場合には次々と薬を追加しできるだけ早く退院できる状態にもっていくという効率の良さが求められると実感しました。

しかしながら、このような言語の壁やシステムの違いがありながらも、根本的にはやっている医療というものは大きくは変わらないため、将来渡米を目指している人でも日本でしっかりと臨床力を磨くことが第一であると感じました。

最後になりましたが、研修の機会をくださったDr. Machi、個別に相談に乗ってくださったDr. Sumida、内科チームのYusukeOsama、チーフレジデントのToddYoshiKuakini Medical Centerの皆様、渡航の準備などでサポートしてくださった野口医学研究所の皆様に、この場をお借りして心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

Christmasランチ。皆でchicken casseroleを食べました。 Christmasランチ。皆でchicken casseroleを食べました。
研修メンバーと 研修メンバーと