米国外科レジデンシーを見学して感じたこと
2023年11月から12月にかけまして、ご支援をいただきまして米国ハワイのThe Queen’s Medical Centerの一般外科·外傷外科部門で見学の機会をいただきました。コロナの影響もあり、予定より一年遅れての渡米となりましたが非常に有意義な時間を過ごさせていただきました。The Queen’s Medicalセンターは同州最大の医療施設として、また太平洋上唯一のレベル1外傷センターとして非常に稼働率が高く、オアフ島を中心として地元の方々、観光客を含めて他島からも搬送を多く受け入れており正に島の最後の砦といった様相でありました。
前半2週間を一般外科、後半2週間を外傷外科チームで見学させていただきました。私は現在卒後8年目で既に日本の外科レジデンシーを終え、徐々に指導的立場に移行しつつある中で、久々に病院から離れられずに病院の住人(=Resident )となるレジデントの状況を肌で感じることができました。チーフレジデントを筆頭にジュニアレジデント、医学生を中心にチームが構成されており、ジュニアレジデントが朝の4時代からカルテから情報収集し術後や重症患者の簡単な診察を始めます。6時になるとチーフレジデントがやってきて全患者の報告が行われ、その日の治療方針を教育的視点を含めて決定していきます。その後回診を行ない7時30分からは一件目の手術が始まります。手術の合間にはインターンがコンサルトを受け、チーフへ相談し指示を出し、処置を行い、長引けば 遅くまで手術をして、さらにオンコールであればそのまま泊まり込む。
だいたいの流れは日本の外科研修とほぼ一緒ですが、全てのスケジュールが日本よりも2時間程度前倒しで引き継ぎ(プレゼンテーション)の機会が多いということと、オンコール明けはしっかり帰れているという点、症例検討や専門医試験のための教育日が設けられており、その時間は大変に重要視されておりPA等がその間に病棟管理を行なっていることなどが異なる部分として印象的でした。
技術中心の教育で完全主治医制を引くことが多い日本外科と、知識面とのバランスを重要視しチーム制を実践する米国外科の違いを肌で感じることができましたが、どちらも厳しい研修であることは間違いがなさそうです。
手術に関しては夜間·土日も含めて種々多様の症例を見させていただきましたが、印象的であったことはDavinciの適応が圧倒的に広く、件数が多い、そして若手でもDavinciの執刀機会がある点でした。合間を見て移植外科の見学もさせていただきましたが、こちらもレジデントが一時前立ちになっていたりと日本ではまず考えられない状況に多々触れることができました。
外傷外科ではATLSに則った診察が若いレジデントやPAによって円滑に行われ、検査·入院までの流れは日本に比べると均質化されていると感じました。外傷外科と一般外科が相互補完的に作用しあい違いに無理のない働き方を実現している点も外科が人気の科であるという好循環を作り出している要因と思いました。人気に関しては対局である日本外科を、若い先生たちにとって魅力的なものに変える、または働きやすくするヒントがここにあるのではないかと感じています。一概に日米どちらが優れているとは言い難いものではありますが、双方の長所を本国へ紹介できる存在として臨床留学というものは極めて意義深いものでありました。
【謝辞】
最後に、今回の渡米に際しましてご尽力いただきました日本の方々、米国で指導に当たってくださいました諸先生方、レジデントの先生方、医学生、外国人の私に毎日話かけていただいた掃除や事務の方まで全ての方にお伝えできず恐縮でございますが下記の通り、ご芳名をあげさせていただきます。
Dr. Machi, Dr. Cryer, Dr. Mikami, Dr. Murayama, Dr. Rodoriguez, Dr. Wai, Dr. Yong, Dr. Ogihara, Dr. Furuta, Dr. Kitamura, Dr. Davey, Dr. Hayashi, Dr. Pedro, Dr. Hromalic, Dr. Goto, Dr.Erol, Dr. Kieu, Dr. Marison, Dr. Su, Dr. Tsuruta, Dr. Karasaki, Dr. Malaney, Dr. Wang, Dr. Won, Dr. Koo, Dr. Lin, Dr. Liu, Dr.Cong, Dr.Kwon, Dr. Lewis, Dr. Tamamoto, Dr. Zhang, Dr. Koshi, Dr. Noguchi, Ms.Gababi, Mr.Bland, Chiko-san, Keely, 掛橋様
この場をお借りしまして深くお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。