~国際舞台で活躍する医師を目指すステップとして~
この度、米国誕生の地であるフィラデルフィアに位置するトーマス・ジェファーソン大学にて約1週間の研修をさせていただきました。私は将来、国境なき医師団の一員として途上国にて医療を施すには、米国をはじめとした先進国で最先端の医療を学ぶことが必要だと考え、本実習に志願しました。幼少期にニューヨークに5年間住んでいたこともあり、米国の東海岸を再び訪れる機会を与えていただいたことで胸に期待を膨らませていました。本研修に参加する直前まで所属大学の海外選択実習を通じてカルフォルニアの大学病院にて2ヶ月間ほど学び終えていたため、西海岸と東海岸における医療教育、医療制度、医療システム、そして人種の違いなどを比較しながら学べることに期待していました。
【現地での交流】
初日からRadiさんを初めとした現地のスタッフの方々からトーマス・ジェファーソン大学、SKMC、ペンシルベニア病院などについての説明を受け、自分一人では学べなかった事実を知ることができました。また、現地のレジデントや医学生と食事をしながら米国や日本の医療についてお話をする機会をいただきました。同時に、日本から参加した他の4名と生活を共にし、皆が持つ夢を共有しながら、各人がそれぞれ刺激を受けたことも良かったです。
【Emergency Department】
Dr. Wayne Bond Lauのもとでシャドーイングする形の研修を行いました。具体的には先生が問診をされた後に、どのような鑑別疾患が考えられるか?どのような治療や評価をするべきか?などを救急医の視点で私たちに指導をしてくださいました。呼吸困難や腹痛などを主訴とした日本でも見られる患者さんから殺傷やドラッグで四肢を切断している患者さんなど日本では見かけない症例も次から次へと運び込まれてきました。その中でも一番印象に残っているのは、アフリカ系の黒人の患者さんが私達アジア人の診察の立ち合いを拒否されたことです。私自身は幼少期にニューヨークに住んでいたことから差別自体には慣れておりましたが、アジア人であるDr. Wayneがアメリカの東海岸で医師として活躍する中で差別という問題に直面した際、どのように考えて対応していたのか疑問を持ちました。後日開催されたDr. Wayne Bond Lauのボランティアニズムのレクチャーにて質問したところ、「私たちは裕福な家庭に生まれ、素晴らしい教育を受け、愛情を注がれて育ったので、そのような偏見を持たない人間になれた。反対に裕福でなく、教育を受ける機会もなく、愛情を注がれていない人は差別をする傾向になってしまう。ゆえに、私たちのような身分に生まれた者には苦しんでいる患者さんを助ける責任が付きまとう。そのような発言をする人々の背景をしっかり理解して包括的に理解し、心から愛情を持って診察することが医師として必要である。」との教えに、大変感銘を受けました。私自身の夢である国境なき医師団として人々を救うために必要なマインドであり、Dr. Wayne Bond Lauの言葉を胸に刻んで精進したいきたいと思いました。
【Internal Medicine】
日本では回診前にカンファ室で新患やフォロー患者の発表をすることが通例ですが、米国では患者さんの病室でディスカッションを行い、直ぐに回診につなげる手法が取られていました。また、各々が考えたアイディアや提案を発表中や発表後に話し合うので、日本とは異なり生き生きとした議論が飛び交うのが印象的でした。さらに、医学生もレジデントの様に回診やディスカッションに積極的に参加しており、医師になってもスムーズに仕事ができる様な医療教育がなされていることも学びました。
【Outpatient Clinic】
私が見学させていただいた外来はPediatrics、Family Medicine、Gastroenterologyでした。それぞれの科の医師をシャドーイングする形で研修させていただき、米国での診察スタイルを学びました。どの医師も日本とはまた違ったempathyやsympathyを大切さにしながら、医療現場で患者さんと真摯に向き合う姿はとても勉強になりました。西海岸と異なり東海岸は欧米人が多数を占めていることもあり、患者さんとのコミュニケーションのキャッチボールにおける行間の読み方(言葉の背景にあることの理解、患者さんへの態度や身振りなど)が大変参考になりました。また、米国では日本の国民皆保険と異なり、民間医療保険による診察となるがゆえに保険適用内の検査や治療を施すことを意識しながら診察していました。そのため、理想的な治療があっても保険適用外の治療ができなかったり、保険会社と交渉しなければならなかったりなど日本では見受けられない医師の葛藤や問題が存在していました。