米国財団法人野口医学研究所

視野が広がった米国医療現場

順天堂大学医学部医学科牧由佳

2022年9月米国トーマス・ジェファーソン大学

私はTJU病院で1週間の実習見学に参加させて頂きました。将来の展望として、日本で学べないことは海外に出て学び、日本に持って帰り自分の学んだことを活かして働いて行きたいと考えています。そのためアメリカで働きたいというよりは、日本とアメリカで学べることの違いを今回は医学生という立場から学んでみたいと感じ、このプログラムに参加しました。

今回の研修では外来研修、病棟診療、講義、JeffHOPEの大きく分けて4つのコンテンツを経験する機会に恵まれました。外来診療はfamily medicine, pediatrics, pulmonary medicine, emergency medicineの4つの科を経験しました。特に印象的だったのは、患者さんの部屋に医師が入っていく形式だったことです。診察室も完璧に個室でドアを閉めており、日本のカーテンで仕切る方式よりも、外来診療のプライバシーへの配慮が高い作りになっていると思いました。また、family medicineで思春期の患者さんがお母さんと来院した際に、先生が患者さんのお母さんを診察室から外に出して患者さんにプライベートに関する質問をしていたことが印象的でした。また、emergency medicineでは働いている医療関係者の職種の多さに驚きました。Dr.Lauの傍らで見学させてもらった際、さまざまな職種の方がいる分、各々の仕事内容を把握し、仕事を割り振っていました。アメリカの救急の指導医は医療の知識だけでなく、そうした様々な人々と上手く接する能力やチームを率いる力が必要だと感じました。

また病棟診療はinternal medicineを見学しましたが、指導医の前で患者さんの病状を説明し治療方針を話し合いチームで治療していく点は日本と似ていると感じました。しかし、研修医の先生と同様に医学生も指導医の前でプレゼンしているのはとても驚きました。さらに驚いたことは、医学生は何人かの患者さんを担当し、毎朝のカンファレンスでの発表はもちろんのこと、治療計画の立案も行なっており、また検査のオーダーや薬の処方まで行なっていました。そのためアメリカの医学生の実習の方がより臨床現場に踏み込んだ内容だと感じました。JeffHOPEでは、シェルターに行きそこで困っている方々の対応をするプログラムに参加しました。JeffHOPEはTJUの医学生が主に行なっている活動ですが、何人か研修医の先生や他学部の学生も参加していました。学生を各々のやってみたいことや学んでいる分野に基づき、話をはじめに聞くチーム、診察するチーム、教育するチーム、カウンセリングするチーム、子供達と遊ぶチームなどに分かれて取り組んでいました。特にシェルターでは医療的な問題だけでなく、子供の扱いに困っているお母さんに関しては心理学部の学生に相談し接し方についてアドバイスするなど、各々の得意分野に仕事を積極的に分担していたことが印象的でした。医学生のうちからそうした医療だけでなく社会的背景も考慮して患者さんの問題を解決していく、そして各々の専門分野を活かして働けるような役割分担をしていることはとても貴重な経験になると思いました。そのため、アメリカの医師はより他職種のできる範囲を正確に把握し、仕事を振り分ける能力が必要だと感じました。アフリカ系アメリカ人の方が多い地域に位置していることもあり、黒人の患者さんが多かったですが、アジア系の方、ヒスパニックの方など非常に多様性に富んでいました。その分症例も多様性に富んでおりとても興味深かったです。

また英語が通じない方も多く、通訳器を外来でも病棟でも多く使っていました。特に通訳を通すと通さない患者さんよりも治療効果が下がってしまうため、通訳を通すときに機械と患者さんと医師の位置や話し方について指導医の方が指導しており、とても勉強になりました。日本でも日本語の通じない患者さんの数は増えてきています。私が今まで見た範囲では、大学病院に通訳機械はありますが、まだ日本ではカタコトで会話するか、英語を話せる人(医療英語に詳しいかは問わず)を探すことが多いと思います。ただ英語よりも患者さんにとって母国語の言語で会話する方が患者さんにとっても話しやすいと思いますし、医療英語をきちんと勉強した方が通訳に入った方がより正確に患者さんと意思疎通を図れると思いました。

その他にも実際に医療現場を見学することで、非常に多くのことを学ばせていただきました。このような貴重な機会を下さった野口医学研究所そしてTJUの皆様、本当にありがとうございました。