プログラムを通じて学んだこと
この度はコロナ禍で現地参加が難しい中,このような貴重な機会を設けて下さり,誠にありがとうございました。自分が今回学んだこと,得たことは,①米国で医師として働くまでの道筋,②米国で医師として働くイメージ,③医師として働く上で必要な視座,④米国で働くことをめざす日本人学生の熱量の高さ,の4つがあると考えております。
1つめに関しては,Fetters先生,Pohl先生,O’Mally先生のResidency Interview,USMLE Test skills,CVのお話などが該当します。Residency Interviewに関しては,近頃はインターネットでもある程度情報を得ることはできるものの,体系的に「これだけ知っておけば十分」と言った形で情報を得る機会は未だそう多くないものなので,大変ためになりました。USMLE test skillsに関しては,実は自分は諸事情でプログラム終了後すぐにStep1を受けることになっていたため,この講座を通して自分の詰んできた勉強は間違ってなかったという自信に繋がったと言う点で良かったと感じています(無事Passしました)。また, Step1対策法を悩んでいる後輩への説明においてもPohl先生のお話(特に4Pや具体的な米国学生の学習スケジュールなど)を伺えたことは大きく役立っています。CVの書き方に関しては,マッチング以外にも通ずるところが多く,「相手に対して自分はどのような価値を与えられるか?」と言う視点で日々を過ごすことの重要性を学びました。
2点目に関しましては,主にPGY2の2人の先生方のお話,およびランチセミナーのzoom動画(完全にbeyond my comprehensionでしたが…)が該当します。正直自分は今回参加した学生の中では米国でのキャリアへのモチベーションはかなり低い方だと思うのですが,その理由の一つは米国と日本での医師としてのキャリアにそこまで明確な差分を見いだせていないことです。その中で,実際に米国で働いておられる先生方のお話やランチセミナーの実際の動画などを拝見できたことは,最終的に米国留学を決意するにしてもしないにしても,解像度の上がった意志決定に繋がるという点で大きな意味を持つ経験と言えます。特に,自分は公衆衛生学に大きく興味があり,病院の中だけでなく,患者の生活の中で医師の役割はどうあるべきかと言う点への意識の高さにおいて,日本と米国の間に明確な差分があるといった印象を受けました。とはいえまだ一病院のほんの一部の側面しか見えていない状態なので,今後も情報収集に励みたいと思います。
3点目につきましては,北村先生のご講義等を中心に,「自分はなぜ医師となるのか?」「医師としてどうあるべきなのか?」といったところを自問することができました。飽くまで医師は知識の量や診察の手技を伸ばすことが最終目標なのではなく,「どのような価値を患者に与えたか?」というその1点こそが常に自問しなければいけない点であると再確認できたと感じています。
最後に,今回共にプログラムに参加した学生たちの出逢いは,今後の人生においてかけがえのない財産となると感じております。先述の通り自分は将来米国で働くことへの熱意は現状そこまで高くないのですが,そのような自分とは反対に強い意志を持って,自らの研鑽のために,あるいは米国の医療を日本に持ち帰るために米国留学をめざす高い意識を持った医学生との交流は大変刺激的であり,仮に将来自分が米国で働くという道を選ばなかったとしても,医療の世界を少しでも良い方向に導いていくチームの一員であるという自覚は,どの道においても自分の心の糧となると確信しています。
最後になりますが,この度このような貴重な機会をご用意下さった野口医学研究所のスタッフの皆様,プログラムにご登壇頂いた先生方に感謝申しあげたいと思います。
ProfessionalismとCompassionについて
この度はコロナ禍で現地参加が難しい中,このような貴重な機会を設けて下さり,誠にありがとうございました。今回のプログラムでは,主に北村先生のご講義を中心に,ProfessionalismおよびCompassionについて自問する機会を頂きました。
Professionalismという言葉を聞いて各自が思いついた内容を述べていく際に,それぞれが自らに取ってのProfessionalismを持っていたということは,それはそれで多種多様なProfessionalismのあり方が見られてよかったのですが,Oxford Pressのスライドのような,医師のProfessionalismを明確に定義している文献が自分には興味深く感じられました。同文献で述べられていた要素の中では,臨床能力およびコミュニケーション能力の上に立つ「倫理的および法的解釈」,さらにその上に並ぶ4要素のうちの「説明責任」という2つの視点が,自分の思い描いていたProfessionalismに欠けていた部分であったと感じています。どれほど臨床知識を身につけ,患者の意思を汲み取ることのできる臨床医となったとしても,自らの中に確固たる倫理観および法的解釈力がなければ,時として医学的に正しく患者の望む医療であったとしても,時として誤った医療を実践してしまう恐れがあるという事実を胸に刻み,「正しさ」を追求する姿勢を貫いていきたいと思います。
また,今回のプログラムを通してそのようなProfessionalismを追求することの重要性を確認することができましたが,それと同時に感じたことは,飽くまで医師は知識の量や診察の手技を伸ばすことが最終目標なのではなく,「どのような価値を患者に与えたか?」というその1点こそが常に自問しなければいけない点であるいうことです。その点において,医師が提供する診療の質だけではなく,時として患者の心に寄り添うcompassionate careの実践が最も重要となることもあるということも学ぶことができました。このcompassionate careを実践するには,病院の外で患者がどのような生活をしているか,疾患を抱えることで患者がどのような点に悩んでいるのか,疾患の治療ができない状態であったとしても,治療ではない介入の方法はないのか,そもそも治療自体が患者の人生に本当に必要なことなのか,と言った点に幅広く働かせることのできる「想像力」こそが,compassionate careの本質であるという風に自分は理解しました。
以上の点を踏まえて,これから医師として職務に就くにあたって,「患者にとっての正しさ」を常に追求する姿勢を貫き,医学知識,法・倫理的観念,また患者の生活に対しての想像力といったいわゆる医師としてのスキルとされる多様な要素を,そうした正しさを貫き続けるために扱える武器と位置づけることで,日々の臨床経験に明確な目標を吹き込んでこれからも研鑽を積んでいきたいと思います。最後になりますが,この度このような貴重な機会をご用意下さった野口医学研究所のスタッフの皆様,プログラムにご登壇頂いた先生方に感謝申しあげたいと思います。