米国財団法人野口医学研究所

野口医学研究所 Clinical Clerkship Programを終えて

琉球大学医学部医学科6年栗原大輔

2022年3月オンライン開催

研修レポート『野口医学研究所 Clinical Clerkship Programを終えて』

はじめに

 今回、新型コロナウイルス感染拡大のためThomas Jefferson University で予定されていたClinical Skills Programに代わってClinical Clerkship Programに参加させていただきました。USMLEに関することから、JeffHOPE(学生が主体的に運営する医療シェルター)、心雑音のレクチャーまで幅広く勉強することができました。中でも特に印象に残った、二つの講義に関して述べていきたいと思います。

Internal Medicine Grand Round COVID 19: Long standing implications

 日本の医学部のカンファレンスでは医師が症例の振り返りを行ったり論文の解説をしたりするのが一般的だと思います。今回、米国でのGrand Roundを観させていただき日本との違いに驚きました。COVID 19 の病態生理を足速に済ませると、パンデミックによって生じたinequityをどう解消していくかについて主に議論されていました。具体的には、オンライン授業になって学生に対する平等な教育を実現するにはどうしたらいいか、アフリカンアメリカンの重症化率が他の人種に比べ高いのは人種差別が根底にある、など医師という職種を超えてsocial justiceを考え、働いている姿に感銘を受けました。私も、医療知識だけでなく社会にも幅広く目を向けられる医師になりたいと思いました。

Small group discussion with SKMC students

 このセッションでは、現地医学生とmed student としての生活についてや将来のキャリアパスに関してお話することができました。COVID 19による医学教育の変化について日米の立場から情報交換をしたり、米国M2学生のpre-medや学生生活に関して色々と教えていただきました。正直なところ、英語力に自信がなくブレークアウトルームに入るのには勇気が要りましたが、なんとか乗り切れてすこし自信がつきました。

最後に

 実地での研修は秋に延期となってしまいましたが、今回の実習で学んだことを活かせるように日々努力して勉学に励み、またこのメンバーで集る日を楽しみにしております。オンラインでのこのような素晴らしい機会を与えて下さった野口医学研究所の皆様を始め、TJUの学生や先生方、Japan centerの方々に深く感謝いたします。本当に貴重な経験を誠にありがとうございました。

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ProfessionalismとCompassionに関して


 今回の「医師としてのプロフェッショナリズムを考える」の授業を通して、医師として仕事をしていく中で知らなければならない様々な気づきがありました。ここではその中で印象に残った二つに関して述べていきたいと思います。

【医学と医療は違う】

 日本で医学生として5年間を過ごした私にとって、今回のClinical Clerkship Programは目から鱗の連続でした。Thomas Jefferson Universityのカリキュラムは日本の、少なくとも自大学のカリキュラムと大きく異なっています。中でもCSSGという少人数グループでの模擬シミュレーションでは、病院で起こりうる様々な場面を想定して患者さんに共感を示す練習をしているとおっしゃっており、医療現場で大事な学びを実践していました。それに対して、日本の医学教育は「医学」に重きを置き過ぎてはいないだろうか、テストばかりの日々に忙殺されその先にいるはずの患者さんの存在を忘れてはいないだろうかと考えるようになりました。医学と医療は異なります。医学はあくまでも医療における一つの要素でしかない。私たち医学生は、医療のプロフェッショナルとして医学を熟知し、他職種と円滑なコミュニケーションをはかり、そして何より患者さんの納得できる意思決定を手助けすることこそが仕事だと考えます。私は、医学と医療の違いをしっかりと自覚し、患者さんと共に歩んでいける医師になりたいと思います。

【自分の限界を知る】

 「医師として生きていく上で、自分ができないことをできないと言う力が大事である」と北村先生は仰っていた。この言葉を掛けて頂かなかったら、もしかしたら自分の恥のために患者の利益を損ねていたかもしれないと感じたし、現にそうなってしまっている症例は無数にあるのではないだろうか。恥をかくことを恐れず、常に患者さんの利益を第一に考えていきたいです。

 上記以外にも、他の学生から出た様々な意見を含め自分に足りないことを痛感するとても良い機会になりました。これから医師になる上で、今回学んだ真のprofessionalismと患者さんに対するcompassionを忘れずに精進していきます。