米国財団法人野口医学研究所

プログラムを通じて学んだこと、気付いたこと

順天堂大学医学部5年牧由佳

2022年3月オンライン開催

研修レポート「次世代へ教育できる医師へ」

私が今回3日間のオンラインプログラムを通じて学んだことは患者さんとコミュニケーションをとることの重要性と医学教育の大切さです。

まずコミュニケーションの重要性についてです。特にコロナ患者さんの話やJeffHOPEの話を聞き感じたのは、治療を進める前に患者さんとの信頼関係を築くことに重きを置いていることです。無保険の患者さんや人種差別をしてきた歴史の中で医療者に対してかなり不信感を抱いている患者さんがいることが強調されていました。そのため、JeffHOPEではまず治療する前に患者さんが何を望んでいるかを聞ききちんと信頼関係が築けてから治療にあたるとJeffHOPEで働くM4の医学生言っており、興味深かったです。日本でも日本人が多いとは言え、みんな違う環境で育ち各々の考えを持っています。そうした多様性を尊重し病気だけを見るのではなく、患者さんをみることを大切にしたいと思いました。

また、1日目にTomas Jefferson Universityで医学教育の教え方を改革したと聞きました。従来の基礎医学を学んでから臨床医学を学ぶのではなく、ブロック方式にしM1の頃からスモールグループで基礎と臨床医学を一緒に体系的に学ぶという方法は新しいと思いました。まだどちらの方法が良いとは言えないようですが、教育する立場の先生方が意欲的に医学生を教育する気持ちがあるからこそそのような改革をしようという動きが出るのだと思いました。またUSMLE step1もアメリカの医学生なら110時間を4-6週間、1週間に1回は休みを入れると一番高いパフォーマンスが発揮できると教えていただき、こうした分析結果があることにも驚きました。医学は日々進歩し続けており、学ぶ知識量が膨大になっています。その事実を受け止め、いかに効率的にそして時代にあった学習方法を取り入れるか考えることはとても効率的だと思いました。そしてこのような効率的な医学教育をすることでより次世代の医学教育の向上にもつながると思いました。

最後に、今回はコロナ禍ということでオンラインによるプログラムでしたがとても充実した3日間を過ごすことができました。今回私たちの研修をサポートしてくださった野口医学研究所のスタッフの皆様、Tomas Jefferson Universityの関係者の方々、ジャパンセンターの皆様に本当に感謝しております。

皆様のおかげで非常に有意義で学びの多い時間を過ごすことができました。そして同じような志をもった仲間にも出会うことができました。

今回の経験を活かして、新たな目標に向かって今後も精進していく所存です。

またコロナが落ち着いたら、次回は是非渡米し現地で皆様にお会いできることを楽しみにしております。本当にありがとうございました。

spacer

spacer

次世代へ教育できる医師へ


今回の野口医学研究所のオンラインプログラムを通じて大きく3つのことを学びました。医学教育の重要性,仁の精神,医療資源や社会的背景を踏まえることの大切さです。

セッションNo.1.Medical Education in USANo.2.USMLE Test Study Skillsを通して学んだことは,アメリカでは特に医学教育を重要視していることです。どうしたら効率的に学べるか,先生方が分析し,授業もどのようにすればより記憶が定着するか試行錯誤しており,とても印象的でした。内科カンファレンスでもただ事実や新薬を説明するのではなく,今までの歴史を踏まえた次の世代への教育的な内容が多く教育を重要視していることを実感しました。医学は特に進歩し続けている分野で,全て記憶する方法には限界がきています。時代と共に重きを置く分野や勉強方法を変えていくことは効率的だと思いました。

また,医師として患者さんと接する上でコミュニケーション能力や人格をアメリカの医学教育ではとても大切にしていることを学びました。これはどの国で医療を提供する上でも大切なことだと思います。JeffHOPEでは特にまず初めに患者さんと医療者の信頼関係を構築することを大切にしていると感じました。特に病院嫌いな患者さんや医療者に不信感を抱いている患者さんとは信頼関係が築けてから,患者さんとの治療にあたり,ワクチン接種・薬の治療などを進めると聞きました。これは一見遠回りのようにみえますが,特に生活習慣病など長期にわたる治療や患者さんの生活習慣を改善していく上でとても大切なことだと思いました。大学病院の外来ですとどうしても時間に限りがあり,一人一人の患者さんにゆっくり時間を費やすことができません。JeffHOPEのような診療所で学生のうちからそのような患者さんとの関わり方を学べるのはとても人生の糧になると思いました。

また,セッションNo.9.Internal Medicine Grand RoundではAfrican-Americanの先生がAfrican-Americanの多くが長い歴史によって医療者への不信感を抱いていることを熱く語っていたのが印象的でした。日本よりもかなり多種多様な人々が住んでいるアメリカでは特にそれぞれの患者さんの背景を考える文化が浸透していると思いました。またNo.14.Internal Medicine Grand Roundではヨーロッパやアメリカの歴史から過去の政治家が抱えていた疾患と歴史的に与えた影響について触れており,とても面白かったです。同時に医療知識だけではなく欧米の歴史を踏まえて考えることで,同じ歴史を繰り返さないように対策をしていくことが印象的でした。

以上の3点を踏まえて,日頃から医学だけでなく歴史や社会情勢にも目を向けて物事を考えていきたいと思いました。さらに,患者さんを診察する際に医療資源や社会的背景を踏まえた上で治療方針を患者さんと共に考えたいと思います。そのような経験を積んだ上で後世の医学教育にも貢献していきたいと思います。