米国財団法人野口医学研究所

プログラムを通じて学んだこと、気付いたこと

福井大学医学部6年山尾香織子

2022年3月オンライン開催

研修レポート『プログラムを通じて学んだこと、気付いたこと』画像

 私がプログラムを通じて学んだことは大きく二つあります。一つは医療と医学に違い、もう一つは自分が将来なりたい医師像に必要なステップについてです。

 医学が科学的要素を強く含む一方で、医療はアートを含みます。今まで、患者は一人の人間であり、医療において求められているものは単なる治療にとどまらないと認識しておりました。しかし、実際には日々医学知識を身につけることに集中してしまい、全人的に診るということはどういう事なのか自分自身で深く追求することができませんでした。今回のプログラムを通して、誰のための医療なのかということをより考えることができました。患者さんがいて初めて医療は成り立ち、医療従事者は患者さんを尊重して医療を提供しなければなりません。そのために、まずは質の高い医療を提供することが求められます。そして医療のアートの部分とは、医療従事者のプロフェッショナリズムが大きく関与すると、プログラムを通して強く感じました。医療は誰のためのもので、自分がどういった医師になり、社会に貢献したいのかきっかけを頂くことができました。

 私は、医療の現場だけではなく、医療機関以外の患者さんの生活に着目したいと思い、将来は地域医療に携わりたいと考えています。特に、人々の生活とより関連する糖尿病をはじめとする生活習慣病に興味を持っています。医療機関における医療だけではなく、患者さんが普段生活する社会的な側面にも目を向けるためには、公衆衛生学的な視点や、多職種の役割を学ぶ必要があると考えます。今回のプログラムを通して、米国では一つの専門分野だけではなくそれに関連することも包括的に学ぶことができると知ることができました。そして、自分がなりたい医師像に向けて米国で医師として学ぶためには、USMLEをはじめとする様々なステップが必要になると学ぶことができました。

 今回のプログラムでは大変多くのことを学ぶことができ、特に、プロフェッショナルとして自分はどのような医療を提供する医師になりたいのか、そして、そのために学ぶことや必要なことは何かということを深く考えることができました。また、今回のプログラムでは実践的な臨床医学の講義はもちろん、米国学生とのディスカッション、そして米国留学をされた先生方やレジデンシプログラムに参加されている先生方のお話を実際に聞くなどたくさんの学びの機会を頂きました。多くの方々のお時間とご尽力をいただき、今回のプログラムがあると考えています。今回学んだことを今後に生かし、臨床の上でも医学生としてできることを最大限努力していきたいと思います。今回はこのような貴重な学びの機会をいただき、ありがとうございました。

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ProfessionalismとCompassionについて何を学び、
将来、それをどのように生かすのか


 今回のプログラムを通して、医療者として求められるProfessionalismについて深く考えることができました。医療現場に限らず、様々な分野でProfessionalismについて言及があると思います。Professionalとは相手の要求に合わせて質の良いものを提供するという意味で認識しております。医療の場において、患者さんの要求に合わせた質の良い医療を提供することが、医療従事者として求められるProfessionalismであると考えます。講義でもお示しいただいたように、プロフェッショナリズムを構成する細かな要素はたくさんあり、そして個々人によって何に重きを置くのかは異なると思いました。今回のプログラムを通して、プロフェッショナルとして医療従事者に強く求められることは先述した質の良い医療と患者さんに合わせることの二つであると思いました。

 まず、質の高い医療を提供するために医療従事者および医療学生に必要なことは日々の自己研鑽であると考えます。そして、自己研鑽において重要であることは学ぶ姿勢であると思います。素直な姿勢で日々、目の前のことに真摯に取り組むことが特に重要であると考えます。そうした姿勢で培う経験が医療の質の高さにつながると思いました。また、医療の質の高さは多職種連携によっても向上できると考えます。

 そして、もう一つの患者さんのための医療であるという認識は何よりも大切であるとプログラムを通して強く感じました。患者さんがあっての医療において、目の前の患者さんの思いや葛藤、社会的要素などに向き合うことは必須であると思います。そこで、強く関連するのはCompassionであると考えます。日本語では思いやりや慈悲という言葉で訳されることが多いと思いますが、共感と意味合いが医療においては結びつきが強いと思います。医療から離れて日常生活においても、他者理解は簡単ではないと感じます。一人の人を構成する要素は価値観や物事の考え方、感じ方、とらえ方、環境など非常に多く、完全に理解することは大変難しいと思います。しかし、他者理解において最も重要なことは、完全に理解しきることではなく、その人を知ろうとする姿勢です。そして、その時に必要なことは相手を否定せずに、相手が伝えたいと思うときに話を聞くこと、つまり傾聴であると考えます。医療の現場においては、医療従事者は患者さんの不安や苦しみを否定せずに傾聴することが必要であると思います。

 今回のプログラムを通して、ProfessionalismCompassionについて学び、誰のための医療であるのかを強く意識して今後に生かしたいと思いました。そして、質の高い医療を提供するために、自分は将来、多職種連携のできる医師になりたいと思います。それぞれの医療従事者の役割を知ったうえで、自分自身の役割を踏まえ自己研鑽に努めたいと思います。また、連携をするうえでも、患者さんと接する上でもコミュニケーション能力は必要になるため、コミュニケーション能力の向上にも努めていきたいと思います。