米国財団法人野口医学研究所

Thomas Jefferson University でのClinical Skills Programを終えて

学生萩原彩

2019年3月米国トーマス・ジェファーソン大学

はじめに

  2019322日から329日の1週間、野口医学研究所のご支援により、Thomas Jefferson UniversityClinical  Skills Programに参加させていただきました。

実習では、一般内科、家庭医療科、消化器内科、救急科、小児科において見学をさせていただきました。さらに、シミュレーターを用いた心音の講義や模擬患者さんに来ていただく病歴聴取などのレクチャーも受けさせていただきました。

今回のプログラムで特に印象に残った①アメリカの医学教育 ②アメリカの医療現場 について述べさせていただきます。

 

  • アメリカの医学教育

  アメリカでは、4年制大学を卒業した後に4年間医学部に通うということは、ご存知であると思います。このような理由もあってか、医学生は、とても勉強熱心で、実習している医学生は、日本の研修医のような印象を受けました。このようなことができる背景には、臨床実習が始まる前の実践的な教育にあると考えます。私たちが体験させていただいたようなシミュレーターを使った講義や、模擬患者さんに来ていただく講義等が多々あると伺いました。シミュレーターは、先生が聞いている心音を、学生の手元にある聴診器の耳にあてる部分がついた機械で共有することができ、とても実践的に学べました。さらに模擬患者さんのお話はとてもリアリティにあふれ、鑑別診断を学ぶ機会にもなりました。また、臨床実習では指導医は、たくさん質問し、鑑別診断を考えさせ、分からないことがあれば、調べるリソースやその疾患について丁寧に教えてくださりました。忙しい診療の合間に教えるこることをいとわない先生が多く、非常に勉強になりました。

 

  • アメリカの医療現場について

   一般内科では、指導医1人、研修医2人、医学生2人のチームの回診に付かせていただきました。医学生は病歴聴取をしたり、指導医や研修医の先生たちと回診する前に経過やこの先必要な検査、治療を事細かにプレゼンしていました。経過や疾患はおよそ理解できたのですが、治療薬の名前が難しく、また話すスピードも速いのでとても難しかったです。

   家庭医療科では、外来見学をさせていただいたのですが、糖尿病や高血圧の患者さんが圧倒的に多く、 common diseaseの大切さ、総合的に診療することの大切さを再認識しました。さらに中学生の患者さんがいらしたのですが、親に外に出てもらって日本ではなかなか聴きにくいsexually activeかという質問をしたり、答えがnoでも具体的な避妊法を含めた性教育の話をしていたというのが印象的でした。また、患者さんがそれぞれの部屋で待機しており、医師や看護師がその部屋を移動していくというのも効率的だと思いました。

   消化器内科では、GERDのようなcommon diseaseや 炎症性腸疾患の患者さんの診察を見学させていただきました。ここでは、Choudhary先生とキャリアだけでなく家庭との両立の話などを伺うことができ、将来の参考になりました。

   救急科では、自分の見学させていただいた時間は、軽症な患者さんが多かったです。理由を先生に尋ねると、PCPは当日いきなり受診できる枠は少なく、通常の予約をすると1ヶ月程先になってしまい、すぐ受診したければ、軽い症状でも救急科を受診するとのことでした。手技は見学する機会はなかったのですが、患者さんの部屋にある設備等は日本と変わらないと感じました。

   小児科では、主に医学生の病歴聴取についていくことが多かったです。少しだけ患者さんに質問させていただいたり、聴診させていただく機会がありました。日本では当たり前である蒙古斑を心配している母親や、養子など日本との違いを多々感じました。子供をあやす機会があったのですが、子供がやりたいと言った手遊びを私が知らず、育った文化背景もかなり異なり難しいと思う場面も多々ありました。

   また、Jeff HOPEという学生主体の無料診療ボランティアに参加させていただきました。私が参加させていただいたのは、Sunday Breakfastという名の男性ホームレスのためのクリニックです。ここでは、1年生が問診をとり診察し、カルテを記入したり、4年生がアドバイスをしたり、カルテを直したり、治療方針を決め、医師がチェックとアドバイスをするという流れでした。低学年のうちから実際に診察をすることは、モチベーションに繋がるうえ、学ぶことも多く素晴しいシステムだと思いました。さらに薬学生やPT OTの学生も来ており、他職種連携なども学べる場でした。ここでは病気の治療だけでなく禁煙など疾患の予防につながる教育も重視しており、非常に大切なことであると学びました。ここで使われる機材等は、全て寄付で賄われているというのも印象的でした。

 

最後に

   大学の先生にお願いしてプライマリケアと救急科は事前に見学をさせていただいてましたが、まだ臨床実習が始まっていない自分にはこのプログラムに参加するのは早いかと思ったこともありました。しかし、本当に学ぶことが多いのと同時に自分の英語の出来なさ、医学に対する勉強不足を痛感し、さらに努力が必要なことが分かり、今参加できて本当によかったと思います。まだ決めきれてはいないですが、将来、家庭医になりたいという思いが強まりました。また、今回の研修では、日本とアメリカの医療制度の違いなどを通して、医師のあり方、倫理観などを考える機会も多々あることがとても将来のためになったと考えます。良い医師になれるようこれからもたゆまぬ努力を続けていきます

 

謝辞

  このような素晴しい研修ができたのは、野口医学研究所の浅野嘉久先生、佐野潔先生、Michael Kenny様をはじめとする皆様、Thomas Jefferson Universityの佐藤隆美先生、Charles A. Pohl先生、Joseph F.Majdan先生、Janice BogenJapanセンターのラディ様、中村様、ホストスチューデントのNoahさんBowenさん、このプログラムに関わってくださった全ての皆様に深く感謝いたします。本当にありがとうございました。