米国財団法人野口医学研究所

M3トレーニングレポート

学生白倉健太朗

2018年3月米国トーマス・ジェファーソン大学

【実習内容】

3.23(Fri) Orientation, Opening ceremony

3.26(Mon) Emergency Department, Neurology
3.27(Tue)
 Emergency Department, Clinical Skills Training
3.28(Wed)
 Internal Medicine
3.29(Thu) Pediatrics, Pelvic Session
3.30(Fri)
 Family Medicine, Closing ceremony, Farewell Dinner

 

[3.23(Fri)]

この日の午前には、次週から始まる病院実習の流れ、注意点の説明を受けた後、トーマスジェファーソン大学の概要などをお聞きしました。

午後からは、大学の図書館、ジムなどの施設見学をさせていただきこの日は解散となりました。

 

 

[3.26(Mon)]

午前は救急科で実習させていただきました。救急科では患者さんが来るたびに、医師がまず過去の通院歴や投薬歴などをチェックし、レジデントの先生が必要な検査や治療方針を立ててオーダーをしていました。検査結果をもとに治療方針を決めて、患者さんに話に行きます。レジデントの先生が実際に患者さんのところに話に行く前に、患者さん3人に対して実際に問診をとらせていただき、レジデントの先生に報告し鑑別を挙げるという作業をやらせていただき、非常に貴重な経験をさせていただきました。

問診が終わるとレジデントの先生はアテンディング(上級医)の先生に状況を話し、確認をとっていました。

ジェファーソン大学では病棟の滞在時間は比較的短く、悪化の危険がないと判断された患者にはできるだけ早めに退院の準備をしベッドを空けるということが重要視されていることがわかりました。そのような場合に、今後症状の悪化しうる患者を見極めるということの難しさを実感することが出来ました。

午後からは、神経内科のGoran Rakocevic先生の外来を見学させていただきました。神経内科の疾患の特性上、確定診断というのは難しくどの患者さんも今後重い病気に発展していく可能性などを心配しておりましたが、主治医の先生が心配事などを丁寧傾聴し、終了間際には連絡先を伝え、何か少しでも不安なことがあった場合にはすぐに連絡をくださいと言って帰していることが一番印象的でした。

 

[3.27(Tue)]

午前は昨日に引き続き救急科を見学させていただきました。

この日はレジデントのYoungJun Chai先生が病室へ問診を取りに行くのを見学させていただき、様々な患者さんとの会話を聞くことが出来ました。その中で、身体所見とデータが不一致であり、不審と考えた医師がまず過去の通院歴や投薬歴などをチェックし、オピオイド中毒の可能性などを確認していたことが印象的でした。

午後からはクリニカルスキルトレーニングで、Wayne Bond Lau先生による座学で鑑別疾患をするという講義を受けました。Overdoseで救急外来に運ばれてきた患者への対応方法という内容でしたが、早期に診断するために着目する点など丁寧にご指導いただき非常に楽しく充実した時間を過ごすことが出来ました。

 

[3.28(Wed)]

朝に内科の抄読会に参加した後、カンファレンスに参加し、レジデントの先生に付いて一般内科の入院患者をみてまわりました。自分の入った内科チームでは、AIDSにより様々な疾患を合併している患者や麻薬中毒の患者が多く、日本ではあまりなじみのない疾患で非常に興味深く見学させていただくことが出来ました。

昼には昼食をとりながら内科のNoon Conferenceに参加し、Joseph DeSimone先生による感染症とその治療に関する講義を受けました。その講義では、とても実戦的な抗菌薬の使い方のレクチャーがあり非常に充実したものでした。

この日の夕方にはJeff HOPEChina Clinicに参加させていただきました。

ここでは、学生が中心となって問診をとり、上級医に相談をして必要であれば病院への紹介状を渡すという流れで行われていました。自分と同じM3の学生が問診をとり検査等を行い鑑別している様子を見て、非常に刺激を受けたのを覚えています。

この日の最後には、前日にもお世話になったWayne Bond Lau先生から、情熱をもちアグレッシブに様々なことに挑戦していってほしいという言葉もすごく心に響きました。

 

 

 

 

[3.29(Thu)]

午前は小児科の外来を見学させていただきました。何人かの先生につき、自分の見たい患者さんのところを自由に見学させていただきました。どの先生も、検査などへ向かう際に問診に対する鑑別などを質問してくださり、考え方のアドバイスを丁寧にして頂けました。

 午後からは、Pelvic Sessionに参加しStefani Russo先生による婦人科頸部細胞診など女性器周辺の手技をモデルを使って実践しました。実際の患者さんに対して行う際の注意点なども細かく教えていただき非常に勉強になりました。

 

[3.30(Fri)]

午前には家庭医学の外来を見学させていただきました。

病気の患者に対しての問診をとるだけでなく、定期的なチェックで来院していた患者さんもおり、生活指導に対しても親身に指導していたことが印象的でした。私が見学させていただいたBryan Botti先生は家庭医学の中のスポーツメディシンを専攻されている先生で数か月後には地元のプロ野球チームへのスポーツドクターとなるという方でした。

私自身は野口の選考会でも面接で話しましたが、家庭医からのスポーツドクターを目指しており、それがきっかけでアメリカでの医療を目指すようになった、さらには今回の米国留学に挑戦したという経緯もあり、偶然ではありましたが、このような経緯を話したところ先生は忙しい合間をぬって、スポーツドクターに関する様々なお話を頂き本当に感謝しております。

 

 

【考察】

今回の実習で感じたことは、日本で医療を行うにしても米国で医療を行うにしても基本的に必要なスキルは共通しているということです。患者さんや医師間のコミュニケーション、基本的な医療知識、思いやり・配慮などは医師としての根底にあるのではないかと再認識させられました。特に自分のような米国での研修を将来視野に入れている学生にとっては、英語力であったり、試験に合格するための日本になじみのない医療知識などに重きを置きがちになってしまうこともありますが、まずは基本的な医療知識をつけることが非常に重要であることを実感しました。

実際に外来などを見学させていただいても、英語力という部分で分からないことも多々ありましたが、単純に知識不足で分からないということも非常に多く悔しい思いもしました。

またJeff HOPEに参加し多くの医学生との交流があった中で感じたのは、米国の学生は診療科や研修先の病院を選ぶ際に、2年次に受けるUSMLEのスコアだけでなく実習での評価なども重要であるため非常に熱心に勉学に取り組んでいるということです。同じM3の学生が、Jeff HOPEで患者に問診をとって鑑別をしているのを見て非常に大きな刺激を受けました。

 

【謝辞】

最後になりますが、実習中様々なご指導を頂いた、Goran Rakocevic先生、YoungJun Chai先生、Wayne Bond Lau先生、Joseph DeSimone先生、Stefani Russo先生、Bryan Botti先生をはじめとする多くの施設の先生方やスタッフの皆様、そしてこのような素晴らしい機会を提供していただいた野口医学研究所のスタッフの皆様にはお忙しい中、大変お世話になりました。短い期間ではありましたが、大きな刺激を受けここで得た貴重な経験は今後のキャリア形成の大きな糧となることと存じます。この場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました。