米国財団法人野口医学研究所

TJUでの研修レポート

学生岩見佳織

2018年3月米国トーマス・ジェファーソン大学

私は今回20183月26日から五日間野口医学研究所が主催するThomas Jefferson UniversityでのClinical skills programに参加させて頂きました。私はもともと海外での医療に興味があり、他のプログラムに参加させて頂いた経験もあったのですが、5年生の一年間日本で臨床実習を行い改めて海外の医療を実際に自分の目で見てみたいという思いから、今回選考会に参加させて頂きました。今回の実習では実際にアメリカの医療現場に触れることで日本とアメリカの医療の違いやそれぞれの良い点、悪い点などを自分なりに考える事が出来ました。五日間でInternal medicine, Neurology, Emergency Medicine, Family medicine, Pediatricsの四つの科で実習させて頂き毎日学ぶ事が沢山あり、とても貴重な経験になりました。

Internal medicineでは上級医1人、レジデント2人、医学生2人からなるチームにつき、まず朝のカンファレンスに参加しました。カンファレンスではレジデントや医学生が患者さんのプレゼンを行い指導医の先生がレジデントや医学生に質問したりといった様子でした。先生方だけでなく医学生も患者さんの診断や治療法についての議論に積極的に参加していたことに驚き、自分たちも見習わなくてはならないと感じました。カンファレンスの後のInpatient roundsでは、身体所見を一人一人とって時間をかけてしっかりと患者さんと話をしている印象を受けました。その中には精神科にコンサルトしている不安の強い患者さんもいましたが、患者さんの話をしっかりと時間をかけて聞いていて、信頼関係を築こうとしている姿勢が印象的でした。

Emergency medicineではwalk-inの患者さんや軽傷の患者さんについては医学生、レジデントがまず最初に問診や身体所見をとってattending doctorに報告し、自分の考える鑑別疾患や必要な検査について相談するというようなシステムでした。ERを回ってみて仕事がそれぞれの役職でしっかり分担されているところが日本と大きく異なる点であると思いました。日本では、ルート確保や採血は研修医の仕事という部分が大きいと思いますが、ここでは看護師、検査技師、nurse practitionerが役割を分担して行っていて、医師は指示出しや、他科へのコンサルト等を行っていました。また、医学生もチームの一員として積極的に診療に関わっていました。

個人的に最も勉強になったのはNeurology でのカンファレンスと回診に参加させて頂いた時でした。epilepsy unitのチームについたのですが、入院患者さんは難治性のてんかんで、4人と少なかったためか一人一人今の状況や治療法についてしっかりとみんなで話し合い、roundでも患者さんや家族の訴えを聞いて真摯に対応している様子でした。Attending doctorDr. Higdonは私達学生にも患者さんのことや新しい治療について詳しく説明して下さり、沢山の質問にも丁寧に答えて下さりました。特に苦手な脳波について本当に基本的なところから教えて下さり、とても勉強になりました。

病院実習以外にも、JeffHopeDr. Laucase studyDr. Russoのシュミレーターを用いた婦人科の内診のレクチャーにも参加させていただき、日本とはまた違った臨床推論の進め方や内診の実際の手技について等多くのことを学ぶ事が出来ました。特にJeffHopeは、医学生によって運営されておりM3とM4の上級生とM1、2の下級生が一緒になってシェルターで暮らすホームレスの人達に医療を提供するという活動です。医学生自らが問診、身体所見を取り、鑑別診断、治療(処方の内容)までを自分たちで考え、レジデントの先生に相談するという形でした。日本ではこのように医学生が主体となって医療行為を行う活動はなく、初めてこのような活動に参加させて頂き、私自身とても刺激になり良い経験になりました。また、JeffHopeを通じてTJUの医学生とも多いに関わる事が出来ました。アメリカの学生は日本とアメリカの疾病構造の違いや保険制度の違い、医学教育や研修医制度の違いについて興味を持っていて、お互いに質問しあって話したこともとても有意義な時間となりました。

今回、共に研修を行った研修生はとてもやる気があって優秀で、彼らと共に研修し、将来について語り合う事ができ、かけがえのない時間を過ごす事が出来ました。今回の経験を自分の将来に活かしていけるようにこれからも日々精進して参りたいと思っています。

最後に、このような素晴らしい機会を与えてくださった野口医学研究所の先生方、スタッフの皆様、現地でサポートして下さったMs.Radiをはじめとするジャパンセンターの方々、TJUの皆様、本当に有難うございました。心より感謝申し上げます。