米国財団法人野口医学研究所

Thomas Jefferson Universityでの研修を終えて

慶應義塾大学医学部6年泉知花

2026年9月18日〜9月25日米国トーマス・ジェファーソン大学

野口医学研究所による泉さんの研修レポート

【はじめに】
この度、2026年9月に1週間にわたり米国フィラデルフィアにあるThomas Jefferson Universityにて病院実習をさせて頂きました。このような貴重な機会をくださった野口医学研究所の方々、また、お力をお貸しくださいました全ての方々に深く感謝申し上げますとともに、今回の研修での学びや気づきについてご報告申し上げます。

【Internal Medicine】
チームの回診に参加しました。オピオイドの離脱症状や腎移植後の敗血性ショックなど、プロブレムが重い方が多い印象でした。Residentと同様に医学生も病歴の複雑な患者さんのプレゼンを担当しており、医学生の立ち位置が日本とは全く違うことが初日から印象付けられました。

【Pediatric Outpatient】
Residentにつき、診察やattendingとの相談、治療方針決定を見学しました。健康な子のregular checkupではありつつも、叔父が殺されてしまった子をtherapistに繋げたり、BMIが34もある子に食事指導をしたりと、日本とは子供が育つ環境が全く異なることをひしひしと実感しました。また、通訳とオンラインで繋いで英語が全く喋れない患者さんの診察を行う中で、通訳へのアクセスが日本より良いといえども、英語での診察と比べニュアンスが伝わりづらかったり、簡単なことを伝えるのに長い時間を要したりと診療の質が全く同じとは決して言えないと感じました。

【JeffHOPE】
私はEliza shelterという母子用のシェルターで見学を行いました。jeffHOPEでは医学生が診察を行いますが、学生にして既に問診から身体診察、上級医へのプレゼンテーション、そして下の学年の指導まで一貫して行う非常に教育的な環境があり、羨望を覚えました。私もご厚意でプレゼンを担当させて頂きましたが、自分が思っていたより出来なかったことに悔しさを覚え、今後の勉強へのモチベーションになりました。また、必ずしも具合が悪い人を診るばかりでなく、子供の宿題を見てあげたり健康診断をしたりと、学生はそれぞれ別の任務を行なっていました。シェルターに住む母子がほぼ黒人であったことは、おそらく現地では当たり前ですが、私の中では大きな衝撃でした。

【消化器外科】
痔や直腸切除の手術を見学させて頂きました。Residentが手術を進める合間にattendingが厳しくも教育的な指導を入れる、という手術の雰囲気は日本と共通していると感じました。一方で大きな違いとしては、入院期間が非常に短い点、technitianが術後に患者さんを運ぶスペースでの管理を担当する点、資格を持ったnurseが麻酔を行う点、腹腔鏡やロボットによる手術の際に部屋の電気を消す点、などがありました。外科のresidencyへのマッチは大変難しく、Jefferson付属のSidney Kimmel Medical College(SKMC)の学生でgeneral surgeryのresidencyにマッチできるのは、希望している25人中たった1人だそうです。

【整形外科】
脊椎の手術を見学させて頂きました。整形外科は消化器外科にも増してresidencyへのマッチが厳しく、研究や推薦状が必須であり、成績も完璧に近くなければならないそうです。Dr. Vaccaroは脊椎分野で大変高名な先生で、メキシコからもfellowの先生が見学に来られていました。将来は出来たら米国で働きたいと伝えたところ、’You are young. You should do if you want’ と仰ってくださり、励みになりました。日本では就職や結婚を迎える同期もおり、「自分も大人にならなければ」という感覚が強かったですが、米国では教育期間が長いこともあり、私の年齢では「若い」という印象だそうです。このような文化にも、挑戦を歓迎する米国の雰囲気が感じられました。

【ER】
麻薬の中毒者、逮捕前で警察に連れて来られた方、銃で撃たれた方などがひっきりなしに来院し、1日の見学の中でも日本では決して出会えない症例を何度も経験することができました。日本では患者の多くが高齢者である一方、Jeffersonでは若い方が多いのが印象的でした。
また、高額すぎる医療費の削減のため、医師1人が診察できる患者さんの数を増やす工夫が凝らされていました。certificated nurse, phisitian assistanceなど医師以外のコメディカルが多くいたり、カルテで音声入力できたりと、医師が診察や治療の判断に専念できる環境でした。医療費削減という観点では、このような体制づくりは日本も将来的に必ず必要になるのではないかと考えます。

【Oncology Outpatient】
肺を専門とするDr. Gordonの外来を見学させていただきました。ステージが重い方も多かったですが、外来の雰囲気は概して明るく、一人ひとりに長くお話を伺い、病気についてのみならず生活全般について積極的に患者さんにお話ししていただいていました。タバコの匂いが強い患者さんがいることに驚いていると、「彼女はこれまで大変な思いをしてきたから」と仰っており、患者さんの希望に寄り添い、必要以上に医師の意見を押し付けない様子が印象的でした。外来のアシスタントであった 日本人のMs. Takagiは、Japan CenterのRadiさんと同様に言語の壁を抱える中で渡米し、AIもない今よりも強い逆境の時代の中で長く生活してこられたそうです。そのような方々へ尊敬の念が強まると共に、勇気をいただいたように感じました。

【総括】
全体を通じ、日本と米国の医療の差、そしてそれ以上に社会の差を感じられた1週間となりました。特に食事や衛生など、生活面においては日本人としての自らのアイデンティティを実感しました。一方、米国で医師として働くことは幼い頃からの憧れであり、その想いを再確認することができました。修了式でお話を伺ったDr. Lauの’The U.S. is not at all perfect, but what I can say is the U.S. gives you a chance if you make effort.’というお言葉が印象に残っています。1週間という短い間でしたが、人種や見た目に関わらず、挑戦や努力を歓迎しリスペクトを払う文化の中で自分を試してみたいという思いが強くなりました。

【謝辞】
本プログラムへの参加にあたり、多大なるご支援を賜りました米国財団法人野口医学研究所とThomas Jefferson University の皆様に深く御礼申し上げます。
Internal Medicine の Dr. Jamie Miller、Pediatric OutpatientのDr. Moira Mulholland、Colerectal SurgeryのDr. Benjamin Phillips、Orthopeadic SurgeryのDr.Alexander Vaccaro、Emergency Medicineの Dr.Alexander Kleinnman、JeffHOPEでご指導いただいたDr. Noelle Varney、OncologyのDr.Sarah Gordon、そして修了式で今後に向けてエールを下さったEmergency DepartmentのDr. Wayne Bond Lauに心より感謝申し上げます。また、ランチの場や各科で常にフレンドリーに接してくださったSKMCの学生の方々に本当に助けて頂きました。ありがとうございました。
最後に、スケジュールの調整や書類の提出などあらゆる場面で温かくサポートして下さった野口医学研究所の本多愛美様をはじめとするスタッフの方々、そしてJapan CenterのRadi由美子様、Vincent Gleizer様に厚く感謝申し上げます。

PediatricsにてDr.Mollandと PediatricsにてDr.Mollandと
Jeff HOPEにて医学生達と Jeff HOPEにて医学生達と
OncologyにてDr.Gordonと日本人のMs. Takagi OncologyにてDr.Gordonと日本人のMs. Takagi