米国財団法人野口医学研究所

Thomas Jefferson Universityにおける研修報告書

学生本村 朋子

2017年3月米国トーマス・ジェファーソン大学

2017324日から年331日の期間、野口医学研究所を通じて、Thomas Jefferson UniversityにおけるClinical Skills Program Workshopに参加する機会を与えて頂きました。

 

実習では、救急科、一般内科、小児科、家庭医療科を回り、指導医1人に対して学生1~3人が付き、外来陪席、抄読会、朝と昼のカンファレンス、回診等を経験しました。また、シミュレーションセンターでのシミュレーション実習や講義もありました。非常に内容の濃い1週間でしたので、この報告書では特に印象に残ったことについて述べます。

 

救急科では外来を見学させて頂きました。意外なことに、手技的なことは日本で行われていることとあまり変わりませんでした。しかし、やはり人種のるつぼアメリカだけあり、自動翻訳機が使われる場面にも遭遇しました。そして、最も印象に残ったのは、患者さんに問診をさせて頂けたことです。英語での問診は以前に留学した際には模擬患者相手に練習し、また帰国してからも練習を重ねていたので、今回実際に経験することができて良かったです。

 

一般内科では指導医の先生に入院患者さんの説明を頂き病棟業務を見学して、アメリカでの抗菌薬の使用等について学ぶことができました。専門用語の飛び交う内科のカンファレンスの内容を完全に理解するのは日本での実習でも容易ではありませんが、英語で行われるカンファレンスについていくことは非常に難しく、印象に残っています。

 

小児科では、アメリカでは検診が生後1,2,4,6,9,12,15,18ヶ月、2,3 ,4 ,5 ,6 ,8 ,10 歳時にあり、その様子を学びました。指導医の先生は学生の教育にも熱心でしたが、保護者に対する教育も行っているという印象を強く受けました。患者に対する教育というのはアメリカに見習うべき点だと思いました。

 

家庭医療科では、日本とアメリカの医療制度の違いについて指導医の先生とお話しする機会がありました。アメリカでは家庭医と呼ばれる制度があり、先生が「この患者さんはティーンエイジャーの頃からずっと私が診ているのよ」と仰るという場面もありました。アメリカは日本と保険の制度が異なり、個人で民間保険に加入しているため患者の加入している保険に応じて医療を行います。一方、日本の医療には国民皆保険やフリーアクセスといった特徴があります。医療従事者として、あるいは患者の立場から、日本の医療について考え直す機会にもなりました。

 

JeffHOPEという学生主体の無料診療ボランティア活動にも参加しました。私が参加したのは“Shelter for women and children” で、シェルターに来た女性患者さんの問診に参加したり、託児所のような役割をしている部屋で子供と戯れたりしました。Volunteerismを学ぶ良い機会となりました。

エスコートや、病棟実習、JeffHOPEを通してTJUの学生さんと交流できたこともいい経験となりました。同じ時期に私たちと同じように研修に来ていた中国の学生さんともご一緒でき、彼らの高い志を目の当たりにしてこちらもモチベーションが上がりました。

この研修では単に実習を行うだけでなく、医療者としての心の在り方を学ぶことができたと感じています。選考会の時から強く印象に残っているDr.Joseph S.Gonnella “Humanity, Compassion and Empathy”の精神は今後も心に留めていきたいと思っています。

 

Dr.Waynebond Lau の“Volunteerism and Medical Care in US”という講義では弱い立場の人間に手を差し伸べるのは当然というVolunteerismを学びました。日本での選考会でもDr.Lauのお話は非常に心打たれるものがあったので、TJUで講義を受ける機会を得られたことはとても光栄でした。

 

私は医学教育に興味のあるため、Dr.Joseph F. Majdanのシミュレーターを用いたシミュレーション講義を楽しみにしていました。Dr. Majdanは教育のプロフェッショナルで、学生の理解度に応じて講義を行うそうです。また、Medical ethicsのトピックも取り上げられ、「患者さんからのプレゼントは受け取るかどうか」といったディスカッションも行いました。非常に学ぶことが多かったです。

 

最後になりましたが、このような機会を与えて頂き、充実した研修のためにご尽力頂きました野口医学研究所の皆様、研修を受け入れて下さったTJUの皆様に心よりの感謝を申し上げます。ありがとうございました。

今後の野口医学研究所の益々のご発展をお祈りするとともに、この経験を還元できるよう精進する所存です。