米国財団法人野口医学研究所

Clinical Skills Program研修レポート

学生有元玲奈

2016年3月米国トーマス・ジェファーソン大学

この度2016年3月18日~25日の間、トーマスジェファーソン大学にてClinical Skills Programに参加させていただきました。研修では、内科病棟・外来、救急、小児科外来の見学、フリークリニックJeffHOPEへの参加、そしてシミュレーションモデルの体験など、非常に充実した毎日を過ごすことができました。アメリカの医療を実際に自分の目で見て感じたことをいくつか述べたいと思います。

まず最も驚いたのは、現地の医学生のレベルの高さです。病院では、医学生も常に医療チームのメンバーとして動いていて、患者の病状・状況把握をし、研修医と同じレベルのプレゼンテーションを行い、治療計画までをそつなくこなしていました。日本では、病院実習中もそのように責任ある役割を担うことはほとんどなく、医学教育環境におけるアメリカと日本の違いを強く感じた光景でした。立場が人を育てると言うことがありますが、まさにそういった効果が教育の中で生かされていて、現地医学生の臨床的なレベルの高さにつながっているのだと思いました。またすべてのチームメンバーが学生医師分け隔てなく、お互いに尊重しながら対等にディスカッションしていた様子も印象的でした。

そして非常に感銘を受けたのがJeffHOPEです。JeffHOPEとはいわゆるホームレスのために無償で医療を提供するボランティアのクリニックであり、5つあるJeffHOPEのうち私が参加したのはACTS Shelterという女性子供のためのシェルターでした。学生主体のクリニックだよと話には聞いていたのですが、実際に行ってみると本当にその通りで、何もない体育館の舞台に、学生の運んできた器材・薬・パーテーションの配置によりクリニックが誕生したのには非常に感動しました。また診察においても、学生数名(上級生と下級生の組)がチームを組み問診・身体診察をし、鑑別診断をあげ、評価し治療計画をたて、カルテの記載をするという一連の流れすべてをこなしていました。医師がでてくるのは学生がその要点をプレゼンテーションした後であり、そこではじめて医師の再診察のもと最終治療・処方などを決定するという様子でした。チームにはM1の学生も参加していて、M3やM4の学生と組み、指導や激励を受けながらはじめて問診をとっている様子などが見受けられ、濃密な関わりの中で上級生・下級生がともに成長していく姿が印象的でうらやましく思うほどでした。

その他にも、刺激的な経験がたくさんありました。医療保険の都合により安い抗菌薬を処方される患者さん、Chinatown Clinicに関し医師としての情熱を熱く語ってくださった先生、楽しいケースカンファレンス、高度なシミュレーションモデルでの実習、医療倫理のディスカッション、研究でアメリカにいらっしゃる日本の先生のお話など、とにかくすべての出来事が濃く鮮明に残っており、語りつくせないほどです。

今回このプログラムを通して、アメリカと日本の医療の相違はもちろんのこと、世界に共通するであろう医師としての心・倫理観、また対等なディスカッションで立場関係なく互いに学びあう姿勢の大切さも同時に学ぶことができました。ここで得た経験、数々の方々との出会いすべてを胸に、今後より一層精進していこうと心から感じることができました。

最後になりますが、このような素晴らしい機会を与えてくださった野口医学研究所の皆さま、現地で常にサポートしてくださったスタッフ、TJU医学生、先生の皆さま、そして1週間ともに過ごした日本からの仲間、すべての方々に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。