米国財団法人野口医学研究所

Thomas Jefferson University Hospital Observership報告書

順天堂大学医学部脳神経内科霜田晴雅

2026年6月8日〜6月19日米国トーマス・ジェファーソン大学

野口医学研究所による霜田さんの研修レポート

この度、野口医学研究所よりご支援をいただき、2026年6月8日から6月19日までの2週間、Thomas Jefferson University Department of NeurologyにてObservershipに参加させていただきました。私にとって初めての海外臨床留学となった今回の機会は、非常に濃密で実り多く、大変有意義な経験となりました。野口医学研究所の皆様、TJU Department of Neurologyの皆様、TJU Japan Centerの皆様、そして診療を通じて学ばせていただいた患者さん方に、心より感謝申し上げます。以下、Observershipでの体験および学びについてご報告いたします。

オリエンテーション
初日の午前中はオリエンテーションが行われました。Observershipの日程確認、ID作成、キャンパスツアーなどを、TJU Japan Centerの皆様にご対応いただきました。市内中心部に位置するキャンパスは、数ブロックにわたる複数の施設から構成されており、その規模に圧倒されました。特に、本院だと思っていた大きな建物が眼科専用の施設であると知り、サイズ感に驚きました。図書館やオフィス一つをとっても設備や構造が日本とは異なり、ついに始まったなあという高揚感と緊張感を覚えました。

Epilepsy Clinic
オリエンテーション終了後、Epilepsy Clinicの見学をしました。初めて見る米国スタイルの外来やその設備はとても新鮮でした。外来は、日本よりゆとりのあるスケジュールとなっています。時間は、一人に30-40分ほど確保され、半日で4-5人ほどの診察をします。一人一人とコミュニケーションに時間をかけることで、生活に変化があったか、薬の反応や副作用に問題がないかを細かく確認していきます。その中で患者一人がてんかんの診断後、運転の再開時期について質問する場面がありました。日本では、無発作期間として2年が必要とされますが、現地では3ヶ月のみと知り大きなギャップを感じました。外来をshadowさせていただいたattendingのDr. Lucyは非常に気さくで、緊張している僕をほぐそうと(?)しきりにナッツを勧めてくれました笑。

Movement Disorder Clinic
2日目以降は、Movement Disorder Clinicにも参加させていただきました。Movement Disorderは私が最も興味を持っている分野の一つであり、事前に学んでいた知識を活かして先生方とディスカッションを行うことができたことは、大きな自信につながりました。
日本ではまだ承認されていない新規治療薬や、αシヌクレイン皮膚生検などに触れる機会があり、TJUでのObservershipならではの大変貴重な経験となりました。一方で、治療薬の調整方法やDBSの刺激調整に関しては、日本における診療と共通する部分も多く、米国と日本の診療の違いだけでなく、共通点を学ぶ機会にもなりました。
特に、患者さん一人ひとりの症状、生活背景、治療目標に合わせて治療方針を細かく調整していく姿勢が印象的でした。最新の治療選択肢を学ぶと同時に、個々の患者さんに最適な医療を提供することの重要性を改めて認識しました。

Epilepsy Monitoring Unit
EMUは長時間ビデオ脳波モニタリングを行う入院施設です。日本で行える施設がまだ限られており、私自身も初めての見学でした。一見、病棟は一般病床と同じに見えますが、裏部屋には10人程度の脳波と各病室のビデオを同時に確認することができる設備が整っています。前日のモニタリング中に記録された発作のビデオと脳波所見を確認し、発作型や病因を推定しながら、抗てんかん薬を増量するのか、減量するのか、あるいはさらなる評価を行うのかを議論していく過程は非常に勉強になりました。また現地の医学生とも交流する機会がありました。医学生は回診でプレゼンテーションを担当しており、その完成度に驚き、自分自身の臨床英語やプレゼンテーション能力をさらに高める必要性を強く感じました。

MS Clinic
MS Clinicでは外来に加えて、治療薬のinfusionを見学させていただきました。こちらのクリニックでも他のクリニックと同様に一人ひとりにかける時間が確保されています。患者の生活スタイルやバックグラウンドに応じて治療薬を選択、調整する過程を見学することができました。MSというと疫学的には白人女性が罹患しやすいと記憶しておりましたが、Clinicでは黒人や男性、高齢者の患者が多いのが印象的でした。Observership後に文献を調べたところ、近年は黒人におけるMSの罹患率が増加しているという報告もあり、臨床現場での印象と最新の知見が結びつく学びとなりました。

Neuro ICU
NICUとは神経疾患を専門としたICUのことで脳梗塞、てんかん重積、脳炎等の患者の集中管理を行う施設です。こちらもEMUと同様に日本ではまだ普及しておらず見学を希望しました。午前一杯をかけて全患者を回診しフェロー、レジデント、医学生がプレゼンしていきます。集中管理ならではのBy systemプレゼンは漏れがないように体系化されており、漏れのない管理を行うために非常に有用であると感じました。一方で、集中治療領域特有の略語や表現が頻用され、英語の聞き取りや内容理解に苦慮する場面も少なくありませんでした。自分の英語力、特にリスニング能力と、米国の臨床現場における実践的な経験の不足を痛感しました。

まとめ
2週間は非常に濃密な期間であっという間でした。日本では馴染みのない設備や診療、新規治療薬に触れるという新鮮な体験に加えて、日本とのギャップを知ることで日本の医療シーンの良い点も認識することができたと思います。留学前はスピーキングが大きな壁になると想定していましたが、実際には、リスニングの難しさをより強く実感しました。会話のスピードに慣れるだけでなく、現地ならではの日常会話の表現、略語、専門用語にさらに触れる機会を増やしていく必要があると感じました。今回の経験から得た教訓を今後にも活かしていきたいと思います。

謝辞
最後になりますが、貴重なお時間を割いて大変親切にご指導くださった Dr. Itai Loushy, Dr. Tsao-Wei Liang, Dr. Christopher Skidmore, Dr. Jeffrey Ratliff, Dr. Rachael Burke, Dr. Thomas Leist, Dr. Silva Markovic-Plese, Dr. David Wyler、スケジュール調整をしてくださった Zachary Bonetti, Nick Apato、滞在初日から最終日まで温かくサポートしてくださった TJU Japan Center の Yumiko Radi, Vincent Gleizer, Dr. Wayne Bond Lau, Dr. Takami Sato、そしてこの貴重な機会を与えてくださった野口医学研究所の皆様に、心より深く感謝申し上げます。

TJUキャンパス TJUキャンパス
最終日Dr. Wayne Bond Lauと 最終日Dr. Wayne Bond Lauと