米国財団法人野口医学研究所

Thomas Jefferson Universityでの実習に参加

学生西織浩信

2016年3月米国トーマス・ジェファーソン大学

2016321日から5日間、野口医学研究所の主催するThomas Jefferson Universityでの実習に参加させて頂いた。

今回の実習の目的は、1内科診療全般の日米の差異を知る、2、米国の医療システムの違いを体験する、3米国での医学教育を学ぶとした。ここでは自分なりの視点を述べさせていただきたいと思う。

 

1内科診療全般の日米の差異を知る。

まずレジデント二年目の先生の実力の高さに大変驚いた。内科病棟では患者さんへの説明はアテンディングとレジデント2年目の先生でほぼ行っており、また病棟もリーダーシップをとって回しているのに大変感銘を受けた。

回診では、医師だけでなく看護師、薬剤師、PTOTやケースマネジャーなどその患者さんに関わるチームで回診を午前いっぱい使って行っており、患者一人一人に対してチームで状況を確認しながら、治療を行っていくスタイルは初めて体験するもので、大変勉強になった。家庭医外来、小児科外来でも同様で、患者さんを日本より包括的に捉えていると感じた。仕事内容はannual check upの結果を伝えることが主であったが、20分じっくり時間をかけ、患者さんの家庭状況などまで話をしつつ、健康問題についてディスカッションしていたのが印象的だった。

ERではSickle cell anemiaなど日本にはない症例を経験したり、多くのシステムの違いを感じ、大変充実した実習を行うことできた。インフルエンザを発症してしまった友達とERを受診したのだが、結果的に患者側からも米国の医療を見ることになり、こちらも貴重な経験となった。

 

2医療システムの違いを体験する

日米で保険制度が違うというようなことはあまりにも有名な話であるが、聞くのと見るのとでは感じ方が全く異なった。病棟で患者さんについてディスカッションする時保険についての問題は大きいし、JeffHOPEでは「保険がない人に対してどう医療を提供していくか」という命題が大きく医師たちにのしかかっていた。

チーム医療についても興味深く、社会的な問題を解決するためにCase manager, social workerがおり, ナースが採血などどんどん行い、医師の仕事は治療方針の決定など頭を使うところに集中していた。その結果として時間的余裕が生まれ、医師のQOL向上や研究の充実につながっていた。チーム医療というとお互いがお互いをカバーし合うというイメージがあったのだが、見学した実感としては、それぞれの職種が細分化した仕事をそれぞれこなしているという感覚で、日本で考えられているチーム医療とはまた違ったように感じたことも新たな発見であった。

 

3医学教育

医学教育で印象的だったのは、机の上に留まらない、患者さんを具体的にイメージできる実践的な教育である。小児科ではM1の学生が、テストが終わった翌日に小児科に来ていて患者さんの簡単な病歴を取るという仕事をしていた。参加したM2の授業では、患者さんの話を聞き先生の解説を受ける、という臨場感あふれる授業を展開していた。JeffHopeではM1からM4まで診療に関わるし、Simulation Centerでは、人形を使った診察の学習、ビデオを用いた医療倫理の授業があり、より低学年から臨床を意識した勉強の機会があると感じた。

私自身、低学年の時には机上の勉強の無味乾燥としたものになかなか馴染みが湧かなかったのに反し、病院実習が始まってからは一気に臨床が面白くなり勉強が楽しくなったので、このような授業スタイルは理にかなった教育方法であると思った。

 

その他空いた時間を利用し、以前私の大学に来た内科のDr. Brackenとお会いしたり、TJUの心臓外科医である廣瀬仁先生とお話しする機会を頂き、大変有意義な時間を過ごすことができた。

感じたこと、考えたことは無限にありとても書き切れないが、「百聞は一見に如かず」な5日間の充実した見学実習であった。現地で行動を共にした医学生の友達達というかけがえのない出会いも得た。このような素晴らしい機会を与えて下さった野口医学研究所の先生方、現地で引率して頂いた木暮様を始めとしたスタッフの皆様、現地でお世話になったThomas Jefferson Universityの先生方に心より感謝申し上げたいと思う。