米国財団法人野口医学研究所

研修レポート

学生山口真利奈

2016年3月米国トーマス・ジェファーソン大学

私は2016317日より326日まで、米国ペンシルバニア州フィラデルフィアにあるSidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University を訪問し、Internal Medicine, Emergency Medicine, Family and Community Medicine, Pediatrics4病院と、学生主体で慈善事業を行っているSunday Breakfast Rescue Mission(男性専用シェルター)において研修を行った。

Internal MedicineではMorning ReportTeam Roundsに参加した。Morning Reportではthe NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINEの抄読を行った。全員で自由に意見を述べながら全文を読了した。Team Roundsでは、resident, attending, medical student からなるチームに参加した。米国では医学生も医療の一端を担っている。また上下関係にこだわらず自由に議論できる環境があり、非常に感銘を受けた。また患者の病室を回る際には、医師は気さくに患者に話しかけ、患者は自由に受け答えをしているのが印象的だった。

Emergency Medicineでは症例集をもとにしたresidentのケーススタディカンファレンスへの参加、Alan  Forstater先生のシャドーイングを行った。ここでは、ひっきりなしに患者が救急搬送されてくるが、医師が冷静で的確な指示を出していた。ホームレスや貧困層の患者に対しても治療が行われており、倫理を重視した医療が行われていた。またForstater先生は患者の話を傾聴したうえで診察を行い、私に解説をしてくださり、触診の機会を与えてくださった。

Sunday Breakfast Rescue Missionはホームレスに対して医療と生活物資の支援を行っている。1階が居住空間になっており、2階のホールで診察を行った。基本的に医学部4年生と1年生が組み、1年生が問診をすすめ、4年生が補足する形で予診が進行する。私も患者に既往歴や生活歴について質問して予診に参加した。その後、residentが入りもう一度診察が行われる。学生も診察の大部分を任されており、実臨床の場で実力が磨かれていくのが印象的だった。

Pediatricsでは主に定期健診が行われている。ここではプライバシーがかなり厳密に守られている。担当医師一人につき5室程度の個室の診察室が用意されており、患者が待機している。そこに医師が入っていき診察を行うスタイルになっていた。小児の保護者の同伴についても、診察前に本人に許可を取っており、個人の権利を尊重するアメリカらしさを実感した。また13歳の少年を診察した折、医師が「13歳からは薬物・煙草・酒・性病の危険性が増えてくるの。だから今は大切な時期。“talking is important, so we have to talk, talk, and talk.”」と言っていたことが印象に残った。診察後、医師は次回の診察までに読んでくるよう、13歳以上の全員に配る思春期のための資料を手渡し「次回までの宿題よ、読んできてね。また話しましょう。」と言っていた。米国の教育は、相手を尊重し、議論し正しい方向に導くという方針を取っている。日本との文化の違いが如実に表れていると感じた。

Family and Community Medicineでは、診療時間に患者の話をゆっくりと聞く時間を設けていた。また、診療内容も、湿疹の相談、糖尿病の定期健診から、精神科の相談、乳癌の触診・子宮頸癌の生検に至るまで多岐にわたり、幅広く全般的な診療を行っていた。また保険に入っていない人に対する診察も頻繁に行われており、ヒューマニズムを重視した医療が行われていることに感銘を受けた。

現地の医学生や医師と交流して、彼らの自信に満ちて生き生きとした表情が印象的だった。フィラデルフィアが好きで、現地の人の健康を守っているのだという自負が感じられた。私は長崎で5年間地域医療について学んできたが、米国で学んだ患者一人ひとりに向き合いながら治療する姿勢を大切に、今後個人対個人の信頼関係を築いていきたい。

今回の研修で米国の医療はその文化的背景に深く根ざしていることを知り、日本の医療との相違点を多く発見することができた。今後のキャリアについて再考する貴重な機会となった。この経験を生かし、今後も勉学に精進したい。

 

謝辞

今回の留学に際しまして貴重な機会を与えてくださった皆様方に感謝申し上げます。また、現地ではSidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson Universityの先生方に熱心なご指導を頂きました。佐藤隆美先生に米国留学についてお話いただき、ラボの見学をさせていただきました。Majdan先生には技術面でのお話に加え、医療者として患者さんに向き合う心構えを教えていただきました。Lau先生には米国の現状を踏まえ、恵まれた立場にある人は、他に対して思いやりを持てばよりよい社会になるというお話をしていただきました。廣瀬仁先生には、臨床面から米国における医師の在り方について貴重なお話をしていただきました。Forstater先生には救急の病棟で実際に触診等のご指導を頂きました。またJapan CenterのYumiko Radi様、Nobuko Iijima様には、滞在中お世話になりました。学生のMartin Tucker Brownさんには、学内の案内や米国の医学生の実情を教えていただきました。そして、今回の貴重な機会を与えてくださった野口医学研究所の関係者の方々に厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。