米国財団法人野口医学研究所

Thomas Jefferson University での臨床研修を終えて

学生宮島徹

2016年3月米国トーマス・ジェファーソン大学

わたくし北海道大学医学部医学科6年の宮島徹と申します。始めに、この度は米国財団 法人野口医学研究所の臨床留学プログラムを通して Thomas Jefferson University での研 修の機会を下さったことに心より感謝申し上げます。本研修を通して感じたことを報告さ せて頂きます。

本プログラムでの研修を希望した大きな理由は、「アメリカの実臨床を自分の目で見比 べ、自分の将来について見極めたい」ということでした。その他には、医学教育の違いを 知り良い部分を今後の教育方法に反映する、臨床留学を将来考えている日本医学生と交流 し考えを共有する、アメリカの医学生・先生方との関係を築き将来の選択肢の幅を広げる、 普段の医学・英語の勉学に刺激となるものを見つける、等が理由でした。

実際に行なったことは、診療科の見学が中心でした。救急科、内科を一日ずつ、家庭医 療科、小児科を半日ずつ見学し、Dr. Maidan による lecture が一日半で、その他に、朝の 勉強会、昼の勉強会、先生とお会いする機会、JeffHOPE という学生が中心となって医療 アクセスの悪い人に対して診療を行うボランティア活動への参加等がありました。

研修を終え再認識させられたことは、アメリカにはアメリカの、日本には日本の良い部 分があり、医療を提供する場所はどこであれ、それぞれを比較した上で自分にとって良い と思う医療を行うということでした。そして、今までの個々の生き方がその「良い医療」 に大きく影響することを実感しました。

アメリカの良い部分として感じた一つは、医学生と教育者の間に好循環が生まれ、医学 教育がより良くなっていることです。アメリカの医学生は日本の比ではないぐらいの難関 な入学試験をくぐり抜けた人たちで、医学生としての勉学への意識に雲泥の差があると感 じました。具体例に、JeffHOPE に参加させて頂いた際、そこには医学部の受験を考えて いる人たちも参加しており、その人に参加理由を聞いたところ、医学部に入るための活動 の一環であり医学が本当に好きだからとのことでした。医学部に入る前から臨床研究助手 というお仕事をされており、その人と一緒に患者さんの問診に入ったのですが、問診をし っかりこなしていた事実に驚愕しました。

また、そこでの活動で学生同士が学年の隔てなく教えあう姿がとても印象的でした。そ のような空気を日本でも作り出せると、医学を学びたいと思う学生にとってより生活しや すい環境になるのではと感じました。医学生が病棟で患者に対して大きい責任を持ってい るのも好循環の一つだと思います。病棟での医学生の姿は生き生きしているように感じま した。

ほか、医学生に関して、化学療法を受けた患者に自分の髪を提供するべく髪を伸ばす学

生であったり、医学生は図書館で一睡もしないことであったり、日本ではあまり見ない医 学生が多いように感じました。また、医学生の半分が女性で、その環境は女性にとって働 きやすく、また患者さんにとっても良い面もあるのではないかと感じました。

英語による文化の違いではありますが、アメリカで礼儀は「患者との距離を近くするこ と」と捉えられており、日本よりも気軽に患者さんが話しやすい環境にいることを感じま した。そのアプローチは握手であったり、話し方であったり様々ですが、患者医者間の両 方向性のコミュニケーションがよりなされていることを感じました。

アメリカの方が EBM により則っており良い医療である、という意見を聞いたことがあ ります。それに関して2つエピソードがあります。一つは、学生が NEJM の論文を読ん で議論するという朝の勉強会に参加させて頂いたのですが、議論がとても活発であるとこ ろを見て、アメリカの学生は日本よりも発言に積極的という国柄的観点もありますが、彼 らの論文を読むことに対するハードルが相当低いことを実感しました。もう一つは、私が 今作成している Case Report について図書館にいる医学生何人かに英語の添削をして頂い たのですが、論文的視点で修正点を多く指摘して下さって、同学年の医学生の段階で論文 のフィールドで相当な実力差があることを実感しました。結局、医学の新しい情報は英語 で発信されるので、英語をいかに使いこなせるかが医療を発信していく医師としての実力 に大きな差を生むと感じました。そのとき同時に、英語で医療を行う能力さえあれば、日 本にいても良い医療を提供するための情報へのアクセシビリティは同等ではないかと思い ました。その意味では、論文の議論に一ミリも参加できなかった自分の英語力は到底まだ まだであることを実感しました。比較的英語に関しては力を入れてきたつもりでしたが、 努力が足りていないことを痛感できたのは有意義であったと感じております。

最後になりますが、留学を可能にして下さった野口医学研究所スタッフの方々、留学前 の用意から留学中もサポートしてくださった木暮様、先生とのご連絡を取って下さりスケ ジュールを微調整して下さった Radi 様、TJU で関わった全ての方々に心より感謝申し上 げます。本当にありがとうございました。このプログラムが磨かれながらも継続されてい くことを一参加者として心よりお祈り申し上げます。