米国財団法人野口医学研究所

トーマス・ジェファーソン大学病院 総合内科エクスターンシップ

三沢米軍病院インターン長崎進哉

2016年8月米国トーマス・ジェファーソン大学

最初に私の経歴を簡単に紹介します。私は小学生の頃、3年間アメリカに住んでいました。帰国して中高と進み、福井大学医学部を卒業。医師免許取得後は湘南鎌倉総合病院で2年間の初期研修を行い、現在は3年目として、三沢米軍基地病院で日本人インターンとして働いております。USMLESTEP1を初期研修中に、STEP2CKをエクスターンの直前に受験しました。将来は内科レジデンシーを目指しており、今回のエクスターンシップの大きな目標は「米国の大規模な病院で実習を行うこと 」と「マッチングに必要な推薦状を書いてもらうこと」の2点でした。

 

・総合内科病棟チームについて

総合内科の病棟管理チーム(General Internal Medicine)に3週間所属しました。アテンディング(指導医)、PGY3PGY1、医学生4年、3年生が2人、そこに加えて私、というメンバーで14人の患者を診ていました。アテンディングは1週間毎で変わりましたが、他のメンバーは3週間固定でした。

 

一日のスケジュールを説明します。朝は6時半ぐらいに病棟に行き、患者の前日夜の様子を看護師に聞き、電子カルテでバイタルや採血データをチェックします。8時20分にアテンディングを含め会議室に集合し、それぞれの医学生が担当患者をプレゼンし、皆でディスカッションを行います。その後メンバー全員で病棟に行き、看護師、ソーシャルワーカーを含め、患者を一人一人回診。それが終わるのが11時ぐらいで、PGY3が中心となり学生やPGY1に指示を出し、解散して業務を行います。昼は12時からは昼食付きの1時間のレクチャーがあり、テーマは日ごとでかなり違いました。どのレクチャーも熱がこもった面白いものが多い印象でした。

 

レクチャーが終わればまた病棟に戻り、指示出し、検査結果チェック、コンサルト、カルテ書きなどを各々行います。15時ぐらいにアテンディングと再度集合し、進捗状況を確認。終了時間は日によってかなりばらつきがありましたが、私は18時ぐらいに医学生と一緒に帰宅していました。レジデントたちはもう少し朝早く出勤し、夜遅く帰宅しているようでした。

 

・エクスターンシップの実際

初日にフォローする患者を当ててもらい、翌日から朝のプレゼンをさせていただきました。私の担当患者は2-3人でしたが、入退院がとても早いので、3週間でもそれなりにバラエティ豊かな症例を経験できました。

 

僕のチームのリーダーであったPGY3がとても親切で面倒見の良い方で、忙しい中でもかなり僕のことを気遣ってくれました。最初はややお客さん扱いされてしまいましたが、簡単な指示を一つ一つこなしていくと信頼関係も生まれ、より高度なことを指示してくれるようになりました。先方は僕たち日本人エクスターンのことを全然知らないので、英語能力や臨床経験は積極的にアピールするべきだと強く思います。

 

エクスターンはカルテ書きやオーダー入力などはできませんが、それでも、かなり色々なことをさせてもらえました。電話で読影結果の確認、検査室に培養結果の確認、かかりつけ医からの診療情報の取り寄せ、外科コンサルトなどなど。カルテ書きに関しては、エクスターンは入力することはできないので、病院のパソコンのメモ帳に、自分なりのカルテを書いていました。時々PGY3にチェックしてもらい、プレゼンの原稿として活用していました。後述のように、推薦状を得る際にも有用かと思います。

 

・推薦状に関して

マッチングを真剣に考えている人には一番気になるポイントだと思います。私の所属したチームは前述した通りアテンディングが毎週変わりました。推薦状は1週目と2週目のアテンディングに、直接口頭で依頼しました。どちらのドクターも「もちろん書くよ。CVPSをメールで送ってね」とあっさり承諾してくれました。その後メールを送りましたが、その際「自分なりのカルテ」も添付し送りました。これは、口頭のプレゼンテーション以外にも、ちゃんとしたカルテが書けることをアピールする狙いもありました。一人のアテンディングはこのカルテにものすごく詳細なフィードバックを送ってくれましたので、それなりに意味はあったかと思います。

 

執筆を依頼したドクターはどちらもかなり若い先生で、アテンディングである以外は特に重要な役職についているわけでは無いようでしたし、僕と接した期間も1週間と短めでしたので、推薦状としてどのぐらいの価値があるのかは正直わかりません。ただ、マッチングを控えた同じチームの4年生にも推薦状に関して話を聞いてみましたが、アメリカの医学生も、推薦状の頼み方や頼む対象は同じような流れのようでした。専門科のフェローシップへのアプライの際はまた事情が異なるのかもしれません。

 

・反省点

日本ではほとんど経験できない疾患や社会問題がかなり多く、日本国内でいくら臨床経験を積まれても、USMLEの知識がなかったり、UpToDateを使いこなせないと、うまく立ち回れないだろうと思います。逆にそのあたりをしっかり押さえておけば、臨床経験の差で、エクスターン中のカンファでも有益な発言できるのではないでしょうか。

 

PSCVに関してですが、これは日本を立たれる前に、完璧に仕上げておく必要があります。私は8割方しか完成させておらず、アテンディングに急に提出するシーンが出て、非常に困りました。最終版を出国前に仕上げておきましょう。

 

アメリカでは院内の連絡のほとんどが自分の持っているスマートフォンで行われています。チーム内の連絡はもちろん、コンサルトなどもほとんどが自分のスマートフォンです。私は自分のアイフォンを海外モードにして使いましたが、国際電話になってしまうようで、電話番号を介したテクストメッセージが使えず、とても困りました。アメリカ国内のスマートフォンを短期契約することを強くお勧めします。

 

・全体を通して

エクスターン中は本当に大変で、毎日疲れきって寮に帰っておりました。その際、 自分を奮い立たせてくださったのは、一緒にエクスターンシップに挑戦されていた日本人ドクターのお二人でした。本当にお世話になりました。

 

「患者さんと話せて嬉しい、コンサルトがうまくいって嬉しい、チームの上司に褒められて嬉しい」そんな医学生や研修医の頃に感じた思いが蘇り、とても新鮮な3週間でした。

 

最後に。野口医学研究所の浅野嘉久先生、トーマスジェファーソン大学腫瘍内科の佐藤隆美先生とERのDr. Lau、ジャパンセンターのラディさん、 Internal MedicineアテンディングのDr. Zavodnick, Dr. Wickersham, Dr. Lee、チームメンバーのTeresa, Dianna, Tejal, Omar, Jullie, Mike, Gerry, に心から感謝いたします。