米国財団法人野口医学研究所

研修レポート

東京ベイ浦安・市川医療センター 総合内科フェロー森川大樹

2016年12月ハワイ大学

まず留学の機会を与えてくれた野口医学研究所と留学で勉強させていただいたハワイ大学のKwakini medical centerのスタッフの方々に感謝を申し上げます。全体として充実した研修を体験させていただき、私にとって実り多い研修となりました。

今回の私自身の留学の目的は日本と米国の医療システム、研修医システム、教育システムの3つの違いを認識することです。その違いを認識して、アメリカのいい面を日本に導入すること、アメリカよりも日本のいい面を再認識して、日本のいい面を伸ばしていくことです。

まず日本と米国の医療システムの違いについてですが、米国ではhospitalistが病棟業務の中心となっているということです。Hospitalistは、救急外来から入院が必要とされた患者について、入院手続きから、点滴や採血、検査のオーダーを含めたオーダー業務を行っています。内科でカバーする領域は内科全般です。入院担当の日とそうでない日が分かれています。入院担当の日で教育的と思われる症例については、Hospitalistから研修医にフォローを依頼します。21時以降朝までの入院については、Hospitalistが単独で患者を持ちます。ICU患者については、21時以降朝までの入院でも研修医がフォローすることになります。研修医は入院時のオーダーや入院後の治療方針について日々Hospitalistと相談して、患者のmanagementを行っています。患者のmanagementに対する責任はHospitalistにありますので、患者の安全面でもこのシステムはいいと感じました。典型的には、Hospitalist2週間連続勤務し、次の2週間はオフとなります。切り替わりのタイミングで患者を他のHospitalistに引き継いでいきます。このオンとオフが分かれたシステムは、日本と大きな違いであり、医師のライフスタイルのQOLの面からは非常にいいのですが、日本に導入するとなると、医療コストが増加するので難しい面があります。Hospitalistが中心となって、それに研修医やNurse practitionerを補完する形であれば、教育の面でも日本で導入することはメリットが多いのではないかと思います。Hospitalistの日本との違いは、日本は外来業務も業務に含められますが、米国では外来はprimary physicianで行われ、分業化がされており、Hospitalistは外来業務を行わないということです。Clinicでも研修させていただきましたが、clinicのかかりつけ患者が入院となったときには、primary physicianが入院業務についても、研修医にフォローを依頼して、研修医と連絡を取りながら患者のmanagementを行っているのが日本との違いとして印象的でした。日本でも分業化の方が、医師の時間的ゆとりもできて、ライフスタイル上のQOLは上がると思われるのですが、全体的な医療コストの面では人件費が入院担当と外来担当で別々に雇わなければならず、余計にかかってくるので導入は難しそうです。開業医との連携を強化すれば、現在の日本の医療体制でも、入院はHospitalistで外来は開業医というふうにすれば可能になるかもしれません。また内科系の入院患者については、すべて内科のHospitalistが診療します。各科の専門家とはコンサルテーションという形でかかわっており、主科は内科となっております。日本でもこの形のシステムで行っている病院は増えてきてはいるのですが、まだ少ないです。日本でも特に地域の専門家が少ない地域では、このようなシステムは効果的で導入されるべきだと考えております。

次に研修医システムの違いです。ACGMEで定められている内容に従って、プログラムがstrictに形成されています。1か月を1つのブロックとして、ブロックごとにローテーションを行っています。この内容をこなせない研修医は、タームの途中であっても解雇されることがあります。それだけに研修医も常に評価されているので、仕事を一生懸命に行っています。それだけに研修を終わった段階での研修医のqualityが保たれ、均一化も行われているのではないかと思いました。逆に研修医に負荷をかけすぎないように、時間的には保護されています。Internには当直はありません。2年目以降のレジデントは当直はあるのですが、翌日の昼には帰宅するようになっていますし、代休もあらかじめ決められており、時間的には日本よりも保護されています。日本の研修医は当直明けでも夜まで働いていたり、1週間休みがないときがあったりと、時間的余裕がなくなり、ストレスも強くなっていることがあるので、システムとしての時間的な確保は日本にも導入するべきものだと感じました。

最後に教育システムの違いです。事前に教育的カンファレンスの予定が決められています。専門家のレクチャーであったり、case conferenceであったり、journal clubであったりです。研修医が自分たちで用意するものもありますが、内容についてはteam leaderのチェックを受けたりして、スケジュールについても、chief residentが管理していたりと、予定が事前に組まれており、管理されながら遂行されています。日本でも同様のカンファレンスは行われていますが、chief residentが、一般的な業務から離れて、conferenceの運営や学生指導に当たれることが大きな違いであり、それだけしっかり運営されています。病棟業務と離れた研修業務の調整をするchief residentの存在は教育に友好的であり、日本でも導入していいと感じました。

1か月の期間でしたが、日本と米国の違いや、また共通で行われていることを認識するいい機会となりました。日本と米国の医療システム、研修医システム、教育システムの違いで学んだことを、今後の日本での医療に役立てていければと考えています。あらためてこのような貴重な機会を与えていただき、お世話になった方々に感謝申し上げます。ありがとうございました。

 

 

謝辞

本研修にあたりご指導いただいたKwakini Medical center Dr. Tokeshi, Dr. Sumida, Dr. Miki, Dr. Machiおよびハワイ大学Dr.Izutsu およびDr. Littleおよびお世話いただいた野口医学研究所 木暮さんをはじめとした野口医学研究所のスタッフの皆皆様に、心より感謝を申し上げます。ありがとうございました。