フィラデルフィア小児病院研修での学びと経験

研修期間は3週間で、Blue / Indigo / Magenta teamを1週間毎にローテートしました。
総合診療科と一言にいっても、Teamごとに扱う疾患に特徴があります。例えば、Blue teamはRSV感染症や肺炎や喘息などcommon diseaseを主に扱い、Magenta teamは膠原病やSCIDなどの免疫不全などの初期診療を担当しておりました。
- 1日の流れ
07:30 講義 Morning Conference
08:30-12:00 朝回診 Morning Rounds
12:00-13:00 勉強会 noon conference
13:00-17:00 外来Outpatient Clinic / simulation session
- 朝回診 Morning Rounds
朝回診前にInternやMedical Student は担当患者のpre-roundを行い朝回診に備えます。
朝回診ではSenior ResidentやAttendingと共に患児を訪室します。担当医がチームへ向けて簡単な現病歴と共に病状の変化や血液検査結果や画像検査結果を報告した上で、アセスメントと検査・治療計画をプレゼンします。多くの場合は家族も同席した上で発表し、病状理解を促す方針をとっている点が印象的でした。また、回診と同時にWOW(Workstation on Wheels) という携帯用カルテからオーダーを打ち込み、Attending /internで確認します。
朝回診は単に発表して治療方針を決めるだけでなく、Teachingの場でもあります。例えば、ある経口摂取が困難かつ酸素飽和度を頻回に繰り返す患児に対して、「なぜMilk scanやUpper GIではなくpH monitoringを行うのか」という疑問をAttendingに投げかけると、その場でそれぞれの検査の特徴や利点・欠点などに関するmini lectureが始まりました。どんなに単純な疑問でも、1聞くと10返ってくるので非常に勉強になりました。
また、Discussionでは医学生やattendingの上下関係なく自由に発言します。不明熱や原因不明の血便の症例が入院した際には、私もディスカッションに参加させていただき、チーム全員で試行錯誤を重ねて診断に至った過程は、とても貴重な経験として心に残っています(最終診断は多発血管炎性肉芽腫(GPA)とMeckel憩室でした)。
朝回診が終わると、noon conferenceまでに他科へのコンサルトなど残っている仕事を済ませます。午後には再度訪室し、治療方針の変更の必要があるかなどを判断し、17時ごろには夜勤担当に申し送りをしてsign outします。
日本の研修との大きな違いは研修医自身が手技を行うことがほとんどないことにあるかもしれません。日本では担当医が採血・点滴ルート確保・尿道カテーテル挿入・腰椎穿刺・超音波検査など行いますが、米国ではRound NurseやVascular Access Teamなど分業化が進んでおり、医師は検査結果を見て、Assessmentや治療方針の決定に集中することができます。
- Noon Conference
- Intern向けの勉強会です。不明熱などの症例報告がQ and A方式で行われたり、ある時は症例を与えられ、必要な検査や鑑別疾患をグループごとに相談して発表するなど様々な形式で行われます。昼食を食べながら、和気藹々とした雰囲気で行われ、非常に楽しい時間でした。
- 外来診療 Outpatient Clinic
- Global Medicine (Dr. Claudia Ferran)
Children’s Hospital of Philadelphia(CHOP)はWorlds Best Chilsdren’s Hospital Rankingで3位以内に入る病院ですので、世界中から患者が集まります。母国で治療困難と判断された患児が訪れ、こちらの部門を通して治療計画を立てます。
- Global Medicine (Dr. Claudia Ferran)
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- Diagnostic & Complex care (Dr. Deborah Silver)
21trisomyやそのほか背景疾患をもち、心臓奇形など複雑な既往歴がある患者さんを主に診る外来です。
- Diagnostic & Complex care (Dr. Deborah Silver)
CHOPでの3週間はあっという間でした。世界最高峰の子供病院であるため、日本国内ではなかなか経験できない症例も診ることができました。Observerとしての研修でしたが、Attending, Resident, Medical Student 全員非常にfriendlyで、Teachingの文化が非常に強く根付いており、積極的に参加すればそれだけ得るものも大きかったです。将来、米国留学を目指す自分自身にとって非常に貴重な経験となりました。
【周囲の環境について】
病院自体はUniversity Cityに位置しており、周囲にはUniversity of PennsylvaniaやDrexel Universityもあり、スクラブ姿の医療関係者はもちろん、学生さんも多くみかけました。 私はUniversity Cityの北側に位置するWest Powelton (徒歩約25分程度)にAirBnBを借りておりました。周囲にはスーパーやCVSも近くに数件あり非常に生活しやすい場所でした。日中歩く分には特に治安に不安を感じたことはなかったです。バスや地下鉄も発達しており、週末にはCenter CityやOld Cityまで出かけて観光を楽しみました。
【謝辞】
今回のObservership実現において、多くの方にご指導・ご支援いただきました。
野口医学研究所のStellora Sunyobi様、三宅香連様にはCHOPでの研修手続きにあたり大変お世話になりました。
現地ではDr. Lionel Toledoが私自身の希望に沿って、詳細に研修計画を立ててくださいました。Inpatient unitではDr. Mazzeo,Dr. Caryn, Dr.Krause, Dr. Shaefali, Dr. Muenzerを含め、多くのAttendingやseniorreisdentにご指導いただきました 。Outpatient clnicではDr.Ferran, Dr.Silverに温かいご指導をいただきました。加えて、residentや医学生にもEPICの使い方など細かなことまで教えていただき、大変お世話になりました。
最後に本研修への参加を快諾くださった、東京科学大学小児科医局長 山口洋平先生 教授 高木正稔先生、東京北医療センター小児科部長 宮田理英先生に心より感謝申し上げます。




