ハワイ大学エクスターンシップ報告書 ハワイ大学クアキニ医療センター
Kuakini Medical Center(KMC)
クアキニ医療センターには、レジデントによる内科チームが4つ(A~D)あり、私はそのうちのTeam B(Upper resident: Dr. Onitsuka, Intern: Dr. Chisti)に所属となった。
Medical studentからIntern、InternからUpper resident、Resident team からAttendingにと日本と比べプレゼンテーションの機会が多かった。情報の共有が終わった後は、必ず、ディスカッションがある。論理立てで説明することが必須であり、相手を納得させなくてはならない。多くの場合が上から下にフィードバックがある。教育がごく自然に、臨床の現場で行われていることに感銘を受けた。
クアキニ医療センターは急性期病院であり、急性期を過ぎれば、速やかにリハビリテーション病院、慢性期病院、ナーシングホームに患者は転院していった。脳出血の患者であっても1週間経過をみて、医師が安定したと判断すれば、翌日には転院していた。日本では転院までに本人や家族への多くの説明と、手続きが必要になることがある。保険のシステム(慢性期の病態で急性期病院に入院しても保険はカバーされない)、転院することの理解、医療スタッフの豊富が関係している。
Dr. Onitsukaからは上記の日米の医療システムの違い、そしてプレゼンテーションの仕方を丁寧に教えていただいた。米国では、発言しない者、説明できない者は全く評価されないことを肌身で感じた。このため、プレゼンテーションの指導は本当にありがたく、後半の研修が、非常に有意義なものになった。
火曜日の午後Queens Medical Center (QMC)で行われるAcademic half-dayというIntern/Residentのための勉強会に参加する機会を得た。「人種や環境がどれほど糖尿病に影響を与えるのか」、「どのように医学生に身体所見の大切さを理解させ、効率的に教えるか」などの講義があり、勉強会の内容は非常にレベルが高く、そして簡潔明瞭であった。
KMCでは循環器内科医、神経内科医、腎臓内科医からレクチャーがあった。ICUラウンドではICU医から病態生理から迫るようなセッションあった。すべてのAttendingが、論理的に教えることに長けており、また楽しんでいるようであった。彼らは、それぞれ専門分野はもちろん、内科一般の知識に関してもアップデートされていることに驚いた。日本にも優秀な指導医はいるが、米国のそれに比べると少ない。米国のAttendingは研修医を教育することで、自身のブラッシュアップになっているのではないかと思う。しかし、彼らには、日本の医師に比べ勉強する時間がある。医療資源に圧倒的な差があるように思う。
Dr. Tokeshi’s Office
渡慶次先生から、「医学とは」「心構えとは」を学んだ。
渡慶次先生の医療の信念は、「患者がメインであり、私たちはあくまでサーバントである」ということだ。
「医者になって10年もすると、自分が偉いと勘違いするものもいる。それが言葉使いや態度にでる者もいる」という言葉から私の渡慶次道場が始まった自分のことを言われているようで、恥ずかしくなった。医学生に戻った気持ちで頑張ろうと決意した。朝3時に起床し、3時半に病院に行き、夜間の情報をカルテや看護師から得て、患者は寝ているため、申し訳ないと思いながら起こして診察した。カルテを記載し、自分の考えをまとめておく。朝6時半に救急室で渡慶次先生と集合する。朝早く起きる必要はあったが、病院に行くことが楽しかったので、全くつらいものではなかった。
担当の患者が不安な表情をしていれば、安心できるような言葉をかけたくなる。
一人の80代の白人女性が咳、痰が継続し、夜間には喘鳴が出るため不安を訴えていた。私は検査や薬剤の処方が自分ひとりではできないため、その場でできることは言葉で不安を軽減させることであった。その時に私からでてきた英語は、棒読みではなく、心がこもったものであるように感じた。しかし、もっと適切な言葉や、言葉のトーンがあったと思う。医師として米国で働くために、病んでいる人たちに良いことをするためには、コミュニケーションが土台であることを感じた。英語を磨く必要があることを心の底から感じた。
渡慶次先生のすべてを医学に捧げるという姿勢に感銘する日々でした。朝4時代に私のカルテをすでにチェックされており、内容、英語(言葉の選択、文法、スペル)を6時半に会うと、即座にレビューしてくださるとエピソードからも先生の姿勢を伺い知ることができる。
「威張ったり、怒ったりすることは未熟の証」という言葉は非常に印象的だった。日々この言葉が私の頭の中で回っている。
謝辞
このような機会を与えていただきました野口医学研究所の皆様、研修を受け入れて下さったハワイ大学・クアキニ病院の皆様・渡慶次先生、そして私を快く送り出してくれた私の勤務先の皆様に感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました。