CHOP研修レポート
始めに
今回、2014年11月3日から11月14日の2週間、Children’s Hospital of Philadelphiaで研修を行う機会を頂きましたのでここにご報告します。
背景
私は卒後3年目の12月に野口医学研究所の派遣選考会を受け、エクスターンに選んで頂きました。現在(卒後4年目)は在沖米国海軍病院でインターンシップをしながら米国の小児科レジデンシーにアプライ中です。アメリカのレジデントを目指していながら私は沖縄海軍病院以外のアメリカの病院を見学したことがありませんでした。今後の目標をより明確にするためにも一度見学に行きたいと思い、選考に応募しました。エクスターンに選んで頂いたことも嬉しかったですが、選考会は臨床留学を経験した選考委員の先生方とお知り合いになることができ、面接中や面接後にアドバイスを頂ける大変貴重な機会でした。
Children’s Hospital of Philadelphia (CHOP)での研修
CHOPでの研修は基本的にObservationでした。患者の部屋に一人で入ることはできませんし、カルテへのアクセスももらえませんでした(もらうためには数日のトレーニングが必要だそうです)。そのため患者とのコンタクトはレジデントやアテンディングが患者を訪ねる際に、一緒に診察させてもらうときのみでした。これは過去の研修レポートなどから渡米前に知っており、また私は英語での診察、プレゼン、カルテ書きは海軍病院で行う機会があるため、今回の研修の目的はレジデントの日々の仕事の見学とレジデント教育に直に触れることと考えていました。主にGeneral Pediatricsの病棟見学を行いましたが、せっかくの機会にできるだけ多様な医療現場を見たいと思い、海外からのObserverのお世話を担当している方に事前に相談をして、General pedsの他の病棟や、ER、Child abuse clinicの見学もさせて頂きました。
General Pediatrics
2週間の研修のうち、第1週目は5階東病棟(General peds、血液科、アレルギー/リウマチ科の混合病棟)、第2週目は7階南病棟(General peds、神経科の混合病棟)を見学しました。
以下がレジデントの1日のスケジュールでした。
6:00-7:30 Pre-round, charting
7:30-10:30 Round
10:30-11:15 Morning report(FellowやAttendingによる症例発表など)
12:00-13:00 お昼を食べながらNoon conference(Residentによる症例発表)
13:00-15:00 病棟業務、新入院
15:00-16:00 引き継ぎ
病棟での私の1日は、回診やカンファレンスに参加し、それ以外の時間はレジデントやアテンディングの診察に同行していました。
各病棟には1年目のInternが5人程度、2-3年目のSenior residentが2人配属されています。回診はこのレジデントたちとAttending physician1人、看護師(1-2人)、薬剤師、University of Pennsylvaniaの医学生と大人数で、加えて希望があれば患者の両親も参加したのに驚きました。回診はSenior residentが指揮をとり、Internや医学生のプレゼンのあとにコメント述べ、その後Attendingが更にコメントを付け加え、Teachingを行います。General Pedsの回診のあと、Subspecialtyの回診があり、同様に病棟を回りました。回診は教育に時間を割いており、Internは患者へのFirst touchの医師としてのAssessmentとPlanの発表を行い、そしてSenior residentはAttendingの目の前でInternの発表に適切なコメントと指導を行うことが求められ、Residency3年間でのどう成長するかを目の当たりにしました。
日本の患者層との違いとしては、先天性の血液疾患を基礎疾患として持っている患者が多く、毎日のように鎌状赤血球症のpain crisisが血液科に入院してくるのが印象的でした。
ER
シフトごとにチームが4つもあり、各チームはレジデント3人とアテンディング1人で成り立っていました。レジデントが始めに診察してアテンディングにプレゼンし、アテンディングがその後自身で問診内容と所見の確認を行い、レジデントと相談して処方を出し、帰宅を判断する、という流れでした。ここでは終日アテンディングについて一緒に診察させてもらいました。
Child abuse clinic
General pedsの中で、Child abuseを専門とするアテンディングとフェロー、そしてソーシャルワーカーや看護師などで行われている外来です。外来自体は週に2回で、その他の時間は医師は裁判所での証言などといった仕事をしているようです。地域のERや、CHOPのERや病棟患者で身体的・性的虐待が疑われた患者が紹介され、一度ここで専門家による問診と診察を行われてアセスメントされた後は患者のPrimary care clinicでのフォローになるようです。スタッフは他科にも増して子供を不快な気持ちさせないような、病院にまた来たくなるような配慮を終始行っており、また、陰部を含めた詳細な診察が行われ、見学はとても貴重で勉強になる経験でした。
研修を通じて
今回の研修最も有益だったのは、1年目と3年目のレジデントを比較してどのように成長するかを自身の目で見ることができたことでした。3年目研修医が堂々と後輩医師を指導する姿をみて臨床留学への憧れが更に高まりました。また現在の自分と1年目レジデントを比較し、1年後までにBrush upしなければならない点を明らかにできましたし、逆に現時点でも十分戦える点も見つけることができ、自信にもつながりました。
また、海軍病院での日々のトレーニングはアメリカのレジデント教育に準じていると感じたので、海軍病院で1年間準備できるという現在の状況はとても恵まれているなと再認識しました。
謝辞
今回CHOPでの研修の実現にあたり、貴重な機会を下さった野口財団法人の皆さま、エクスターンに選んで下さった先生方、見学を受け入れて下さったCHOPのGeneral PediatricのDr. Ballatine, Dr. Pete Devon, Dr. Mazzeo、ERの先生方、病棟・外来見学やカンファへの出席をコーディネイトして下さったHickeyさんに、厚く御礼申し上げます。また病棟で勝手がわからずうろうろしている私に声をかけてくれたレジデントの皆さんにもいつも助けてもらいました。今回の研修を活かし、今後も米国臨床留学、そして良き小児科医への道を邁進していきたいと存じます。