米国財団法人野口医学研究所

研修レポート The Queen’s Medical Center General Surgery

横須賀米海軍病院 日本人フェロー中尾祐樹

2019年10月クイーンズ・メディカル・センター

この度、野口医学研究所のエクスターンシッププログラムを通して、20191028日より4週間、ハワイのThe Queen’s Medical Center(以下QMC)外科で研修させていただいたので報告する。

QMCはハワイ州の中で最も大きな病院で、病床数は575(アメリカでは入院期間が非常に短いため日本での1000-1500床に相当)、働く医師の数は何と1100人という非常に大きな病院である。レベルI外傷センターであり、ハワイ全域から様々な患者が訪れる。ハワイ大学の外科レジデンシープログラムの中心となっている病院でもある。

私は3週間を外科チーム(合間に本土へインタビューへ)1週間を外傷チームについて研修した。外科チームでは朝のチャートラウンドの後に手術室へ行き、興味のある手術を見学した。ダヴィンチを用いた手術が進んでおり、鼡径ヘルニア、胆嚢摘出などの手術もロボットで行われ、レジデントがアテンディングの指導のもとに手術を行っていた。外傷症例も豊富で、ダメージコントロールでのオープンアブドメンでの管理など何度も見ることができた。レジデントへの手術指導についてもとても教育的で、手術の50%以上をレジデントが行わなければ経験症例としてカウントできないため、アテンディングも手術の大部分をレジデントにさせていた。チーフレジデントクラスになるとチーフと下のレジデントで手術を行い、アテンディングは監督という状況であった。5年間のレジデンシーで1000例以上の執刀を経験でき、また段階的に経験を積むことで、5年間のレジデンシーを終える頃には外科医として独り立ちできる技術が身につく仕組みになっていた。また週1回のM&Mカンファランスでは、問題のあった症例についてディスカッションが行われ、非常に教育的な建設的なものであった。ABSITEに関する勉強会も定期的に行われており、口頭試問への対策も行われていた。これらの試験を終えた頃には外科医として独り立ちできる知識が身につく。プログラムの質はACGMEにより保たれており、IMGとして外科レジデンシーのポジションを得るのは非常に困難ではあるものの、入ることができればその恩恵は大きいと感じた。

私は現在外科レジデンシーへのマッチングへアプライ中である。IMGとしてインタビューを得ること自体が非常に難しい状況であるが、幸いにも今回の実習を通してハワイ大学のプログラムよりインタビューのオファーを得ることができた。これから先も、このようなプログラムを通じて、アメリカを目指す一人でも多くの日本人医師が臨床留学のチャンスを掴むことができるよう願っている。

 

謝辞:

今回この機会を提供してくださった野口医学研究所の皆様、ハワイ大学外科教授のDr.Murayama, 町淳二先生、国際医療学教授のDr.Maskarinec, 外科指導医の古田将先生、チーフレジデントのDr. Doyle, 事務のMr. Kawamura, Ms. Uchimaにはこの場を借りて感謝申し上げます。