米国財団法人野口医学研究所

米国臨床留学のイメージを確固としたものにでき、 また一人の医師として成長することができました。

中頭病院内科芳野徹

2023年10月7日〜11月3日Kuakini Medical Center

臨床研修レポート「米国臨床留学のイメージを確固としたものにでき、 また一人の医師として成長することができました。」

この度、私はKuakini Medical Center内科と、渡慶次仁一先生の診療所でそれぞれ2週間ずつ研修をさせていただきました。私は米国で内科医として働くことを目標の一つとしており、実際にレジデントとして働く際のイメージを持つことや、医学教育に関して評判の高いUniversity of Hawaii Internal Medicine Residency Programからスキルを学びたいことを主な理由として今回参加させていただきました。日本では内科専攻医3年目の立場になります。

1. Kuakini Medical Center内科に関して
Kuakini Medical Centerは所謂市中病院となりますが、University of Hawaii Internal Medicine Residency Programのレジデント達がローテートしており、内科診療チーム(Hospitalist)に加わり研修をさせていただきました。

チームは合計4つあり、それぞれにIntern(PGY 1)が1人、Upper(PGY 2 or 3)が1人いて、医学生や私のようなオブザーバーが1-2人によって構成されています。

1日のスケジュールとして、午前5時30分頃からカルテレビューを行い夜間の出来事を確認して6時頃にnight floatの先生から適宜引き継ぎを行います。4日毎に新規入院患者を受け入れる当番となり、当番の日は新たに入院患者も受け入れます。

患者さんの状況を把握した後はチームで回診を行います。その後は、患者さん毎に異なる指導医がいるので、それぞれの指導医に方針が問題ないか確認を行います。10時からICUラウンドにも参加して担当患者がいればプレゼンを行います。カルテ記載、病棟業務やオーダー等を終えて、入院当番の日でなく業務が落ち着いていれば昼過ぎに帰宅することも可能です(もちろん帰宅が遅い日もありました)。朝は早いですが業務が早く終われば必要以上に病院に残る必要はなく、夜間もnight floatの先生がカバーしてくれるので緊急の呼び出しもありません。働き方に関しては合理的だと思いました。入院当番の日である場合、Internは夕方まで残り入院受け入れを行い、Upperはそのまま当直となり翌日まで受け入れを継続して明朝に帰宅します。しかしチーム毎に受け持ち患者さんの上限は決まっており、キャパシティオーバーにはならないように配慮はされています。

私はオブザーバーという立場でしたので患者さんに一人で話すことや診察等はできませんでしたが、情報を共有していただき指導医にプレゼンテーションや、チーム内の治療方針のミーティングに参加して少しでもチームに貢献できるように発言することを心がけました。

今回の研修で感じたことは卒前教育の質の高さです。医学生はすでに日本の研修医と同程度の知識を身につけていました。また、決まったスケジュールでモーニングレポートやカンファレンスが開かれ質問が飛び交い、プレゼンテーション能力が非常に高いことを実感しました。

特に他大学から実習に来ている4年生は、Sub-Internという立場で数ヶ月単位の実習をするために来ていました。彼らはハワイ大学内科プログラムを志望しているためアピールの場としても来ているようです。彼らはアピールできるように非常に積極性があり、プレゼンテーション能力の高さには驚きました。私自身は今後、英語でよりスマートなプレゼンテーションスキルを身につけるという課題を見つけることができました。

また、勃発的にチーフレジデントが医学生やレジデントを教えているという場面が多々ありました。最新の論文の知見を織り交ぜながらわかりやすく説明していました。知識を日々アップデートしつつ構成を考えながら教えることは大きな労力が必要ですが、このような教育的な雰囲気があるからこそ質の高い卒然教育を保つことができるのだろうと実感しました。

私は米国内科レジデントマッチングに参加しているタイミングで今回の研修に参加させていただきました。臨床留学という観点から非常に強く思ったことは、実際に現地に赴き自分を知ってもらい、そのプログラムの人々や雰囲気を知ることはマッチングにおいて重要ということです。自分がそこで働くイメージを持つことや課題となる点を明確にできました。一番私にとって大切であったことは、新たに多くのご縁ができたことです。今後もこのご縁を大切にしていきたいと思います。

2. Tokeshi Dojo
後半の2週間はハワイで家庭医療医をされている渡慶次仁一先生のもとで研修を行いました。渡慶次先生は沖縄県出身で、ハワイ大学医学部を卒業されたのち50年近く家庭医療医としてハワイの医療に尽力されている方です。

渡慶次先生の経歴に関してはこちらのリンクを参照してください。
https://www.yodosha.co.jp/rnote/kiko_mezashita/

スケジュールとしてはクリニック開始前に付属のnursing homeに入所されている担当患者さんの回診を行い、8時頃から外来が開始となります。渡慶次先生は家庭医療医として内科・外科・皮膚科系など分野に関係なく問題点があればそれぞれにアプローチをされていました。また、「病気を治療しているのではない、その患者さんの人生を治療している」という言葉が印象的でした。私たち医療者はその患者さんがより良い人生を健康的に歩むことができるようにすることが使命であることを再認識しました。

渡慶次先生からは医療者としての心構えを多く教わりました。例えば、「仁義禮智信」という言葉は5つの徳を表しており、医師として患者さんと接する際の心構えに当てはめることができます。それぞれの漢字に意味があり詳細は割愛しますが、私自身は患者さんfirstで丁寧な診療をすることを心がけているものの、このように言葉および起源を知るとより理解が深まり行動に移す意識づけになると実感しました。

また、海外へ医師として働くことを志す者としては日本についてよく知っておかなければいけないとご指導いただきました。なぜならば日本のambassadorであると認識されるため、日本の代表として世界で活躍してほしいという想いからでした。

渡慶次先生は患者さんからの信頼が非常に厚く、私自身も患者さんをより多くサポートすることができるように今回の実習で学んだことを実践して、周囲の人々に学んだことを広めていきたいと思います。

3. 最後に
今回の実習は野口医学研究所の皆様、町先生、Sumida先生、Paulaさん、Attendingの先生方、チーフレジデントのTodd, 同じ内科のチームだったJonathan, Weiming, Steven, Charlotte, Emily, また、渡慶次先生、Medical assistantのAnna, Breea, Lauren, 皆さんのおかげで充実した研修を無事に送ることができました。ありがとうございました。今後の医師人生において大きな意味を持つ充実した研修となりました。

内科チームでかき氷を食べに行った時 内科チームでかき氷を食べに行った時
渡慶次先生とMedical assistantのBreeaとnursing homeで(ハロウィン) 渡慶次先生とMedical assistantのBreeaとnursing homeで(ハロウィン)