米国財団法人野口医学研究所

Thomas Jefferson University Clinical Skills Program 研修レポート

北京大学医学部李陽仙

2022年9月米国トーマス・ジェファーソン大学

北京⼤学医学部 李陽仙

2022年9⽉26⽇から9⽉30⽇の1週間、野⼝医学研究所が主催する Thomas Jefferson University(TJU)の Clinical Skills Program に参加させて頂きました。

実習を⾏った診療科は Internal Medicine, Gastroenterology, Family Medicine, Emergency Medicine, Pediatrics, Pulmonary でした。Observership の他に、Dr. Joseph Majdan に EKG, Patient Interview Skills の講義をしていただきました。また、フリークリニックの JeffHOPE と China Town Clinic を訪問し活動に参加しました。

病棟では General internal medicine の team round に参加させていただきました。M3 が2名、M4 が1名、PGY1~3 のレジデントが約5名、アテンディングが1名からなるチームでした。症例は主に、PE, DVT, NSTEMI, DM, DKA, Sepsis などで12名の患者をみました。病棟でそれぞれが担当する患者についてプレゼンを⾏い、アテンディングが鑑別、確認すべきポイント、治療⽅針などを説明していました。アテンディングは全ての患者の基本的な経緯を把握しているので、とても効率よく勧められていました。また、病室では患者の表情や患部を⾒ながら、時には⾃⾝の経験談を交えて説明していたのが印象的でした。

外来では GI, Family Medicine, Pediatrics, Pulmonary 共に、先⽣⽅の患者への interview がとても丁寧で、会話をしながら症状改善の有無や現在の課題などをヒヤリングしていました。前医に不信感を抱いて訪ねてきた患者に対しては、1時間近くかけて質問に回答していました。外科医との治療⽅針が異なり混乱している患者に対しては、外科的⾒解と内科的⾒解の異なる部分を説明し、患者が納得している様⼦が⾒られました。

外来の実習中は、先⽣が⼼⾳や呼吸⾳を聞く機会を下さり、また私を患者との会話に交えてくださったので、患者から治療による効果や副作⽤などの経験を直接聞くことができ勉強になりました。また、ワクチン接種の⼿配指⽰をナースに伝えたり、ドクターが患者に聞き損ねた内容を再度聞きに⾏ったりというタスクをくださったので楽しい実習となりました。

Emergency Medicine では、Dr. Lau が直接施設の案内をしてくださり、患者の治療についてはメモに書きながら詳しく説明してくださいました。救急の裏⼝には、万が⼀バイオテロリズムが起きた際に⼈や⾞両を除洗できるようにスプリンクラーのようなものがついたスペースがありました。9.11 以降に⽤意されたものとのことでした。

JeffHOPE, China Town Clinic は共に Sidney Kimmel Medical College の医学⽣が主体となって運営している貧困層かつ保険未加⼊者のためのフリークリニックでした。それぞれ運営するチームやメンバーは異なりますが、基本的に⼣⽅から診療を開始し、医学⽣が受付及び診察を⾏い、レジデントやアテンディングが最終確認して患者と話をします。ある患者さんは、先⽣が薬の服⽤が必要であることを伝えると、⽀払い能⼒がないために費⽤を真っ先に⼼配していました。あなたの条件から費⽤は⽀払う必要はないよと伝えても、もし請求書が届いて⽀払わなかったら信⽤の問題が発⽣し、移⺠の私は滞在許可を取り消されるかもしれないと訴えていました。⽇本では⾒ることのない、アメリカの実情を⾒て切なくなるとともに、フリークリニックの存在意義を痛感しました。両⽅の活動で M4 の医学⽣について⼀緒に診察に⼊らせていただいたのですが、患者の病歴聴取や⾝体診察を⾏い、鑑別診断や処置についてディスカッションを⾏えたのは⼤変勉強になりました。

全体の実習を通して感じたのは、医師、看護師、医学⽣、その他医療従事者のコミュニケーションが盛んでお互い尊重して接しているということです。このことがチームワークの良さに繋がっているのではないかと思いました。

謝辞

今回の研修は⽶国で臨床医を⽬指している私にとって⼤変有意義なものとなりました。コロナ禍で異例なことが多いなか、このような機会をいただけたことに感謝いたします。

野⼝医学研究所の佐藤隆美先⽣、佐野潔先⽣、⽊暮貴⼦様、TJU の Dr. Patricia Kozuch, Dr. Wayne Bond Lau, Dr. Christopher Chambers, Dr. Joseph Majdan, Dr. Michael L Scharf, Ms. Deb Richard, Ms. Leah Straub, Japan Center のラディ由美⼦様、中村理映⼦様、その他本研修の実現に関わって下さった皆様に⼼より感謝申し上げます。ありがとうございまし
た。