米国財団法人野口医学研究所

2022 Clinical Clerkship (Virtual) 研修レポート

群馬大学医学部医学科5年富樫華子

2022年3月オンライン開催

2022 Clinical Clerkship(Virtual)研修レポート

2022329日から31日にかけてオンラインによりThomas Jefferson Universityにおいて研修をさせて頂きました。将来米国でのresidencyを漠然と考えていたので日本と米国での医療の違いを学びたいと思い今回参加させて頂きました。オンラインにも関わらず、多くの事を学ぶことができ、大変有意義な時間を過ごすことが出来ました。研修ではInternal medicine ground roundSKMCの学生との交流、学生中心のJeffHOPEというフリークリニックについて、residentの先生からresidencyの様子について学びました。またDr. Wayne LayDr.Rika O‘MallyNoguchi Alumniの先生方やDr.Joseph MajdanClinical Skillsの講義を受講しました。今回は研修を通して学んだこと、感じたことを述べさせて頂きます。

医学教育について

Thomas JeffersonではBlockカリキュラムを用いて2年次までにPathophysiologyについて学び3年次にClinical Rotationを行い4年次にElectivesとして専門を決め卒業後すぐに診療科が決まった状態でresidencyが開始される。日本とは異なり医学生医療チームの一員として考えられているため多くの責任が伴っている。4年次には56人の患者さんを担当しその質が重視されている。また、日本の医学教育ではあまり扱われないgenderethicbenevolenceについてCSSGという少人数でのClinical Skill trainingで学ぶ機会が設けられていて、低学年時から少人数でのCase studyを行われている。低学年時から臨床に基づいた知識の結びつきが得られることが出来ているようにSKMCの学生の話からも感じた。

アメリカの医療について

 アメリカでは患者さんの社会的背景や多様性が非常に重要であると感じた。Internal medicine ground roundの講義では人種間でのCOVID-19に対するワクチンの対応などで差別を受けているように感じているというエピソードやアメリカでの死亡の原因の上位にはdrug overdosesuicideであることを学んだ。Clinical Skillsでの医療面接ではhumanityが大切であると教わり患者さんの背景が病態に関連していることが多く治療計画に影響すると感じた。これらの事から臨床の現場でも公衆衛生を学び社会的要素について大切にする考え方が重要であると思った。

JeffHOPE の活動について

 JeffHOPEは様々な人に対して医学生がボランティア活動で運営するホームシェルターのフリークリニックである。学生が実際に問診をとり、上級生が下級生にアドバイスを行うシステムに責任感を持って診療に携わり学びの多い活動であると感じた。印象に残った点として医療に対して不安感を抱いている人々がいるという事である。そのような人々に対して無理強いするのではなく「いつでもここにいる」という事を伝えているというエピソードを聞きいつでも誰でも医療を受けれる環境提供は重要であると感じた。COVID-19の流行に伴い活動が難しくなってもオンラインへと柔軟に切り替えたり、布マスクを学生で作成する活動を行ったりして活動を続けている様子に私も何か社会貢献を行うこと出来ることがあるのではないかと感じた。

まとめ

 今回の研修を通してアメリカの医療教育や医療について学ぶことが出来たと同時に医師としての在り方やコミュニケーションの大切さについても学ぶことが出来た。アメリカの医療を学ぶことで日本の医療の良い点についても考える良い機会となった。今回の経験を生かして勉強し、自分自身が何を目指すのかを明確化していくことが課題であると感じた。研修で学んだことを今後の学生生活や医師生活に生かして努力を続けたい。

謝辞

 今回このようなイレギュラーな形式であったにも関わらず充実した研修を送ることが出来たのは野口医学研究所の皆様、Thomas Jeffersonの先生方や学生の皆さん、ジャパンセンターの皆様、また各部署の先生方、共に研修を行った皆様のおかげです。秋に実際にThomas Jeffersonでの研修を行うことでお会い出来たら嬉しく思います。心より御礼申し上げます。

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Professionalism と Compassion について


今回の研修では医師として備えておくべき態度や心構えを学ぶ機会がありました。そこでは特に医師のprofessionalismについて注目して講義をして頂きました。研修を通して学んだこと、考えた事を述べさせて頂きます。

実際の医療現場ではprofessionalismが試される事が日常的である。医師の適性として重要な要素であり、どのように対応したらよいのか分からない際には自分自身の信念、プロ意識、掟を持ちながら行動することが大切である。Professionalismの実践として臨床能力・コミュニケーション技術・倫理観が土台として存在し、その上に卓越性・人間性・説明責任・利他主義が存在することでプロフェッショナリズムがあると考えられている。この考えを分かりやすくまとめたものとしてThomas JeffersonでのThree elements of professionalismとして”Empathy in patient care”“Teamwork and inter-professional collaboration” “Lifelong learning”が紹介された。Empathyは日本語ではsympathyと同様に共感と訳が与えられるが少し異なり患者さんの気持ちを自分の気持ちと同様に感じることとしてcompassionが必要であると考える。患者さん個人で生活や考え方は異なっているため治療についての考えも主観的な方、客観的な方などそれぞれである。そのためコミュニケーション能力が重要となってくる。どのような患者さんであるのかを把握するためにopen questionを用いて患者さんが話しやすい環境を作ることが大切である。現在は患者さんも医療チームの一員であるため患者力を引き出すことが重要となる。患者さんにempathyを示すためにも患者さんについて知ることが必要であると考える。病院では約50の医療職の方が働いている。そのため多職種との連携を行うためにはその職種について知っていることが重要である。医療は日々進歩しているため過去のガイドラインのまま治療を行うのではなく新たな治療法を行う必要がある。そのためLifelong learningとして日々学び続けることが重要である。また、将来professionalismとしてロールモデルを持つ事は重要である。その際にはその人の信念や考え方も見ながら考えることが大切である。

これらの考えは世界で共通であるため将来医師として働く際には今回学んだthree elementsを大切にしていきたいと思う。多くの患者さんを一日で診る際は一人一人に対する時間は短くなってしまうと思うが、問診を行う際には患者さんの考えや背景について考えながらその気持ちに寄り添うような医療を行いたいと考える。チーム医療が重要である今日では患者さんも含めたチームの役割について把握し助け合うことでより良い医療を提供できるようにしたいと考える。病院内の多職種の方について学ぶことで将来この研修での経験を生かしていきたいと考える。Lifelong learningの大切さは改めて今回の研修で考えることで気付かされた。将来医師としては無意識にlifelong learningを続けていけるようにしたいと感じた。また他の参加者からの医師のprofessionalismとして意見があった信念を持つことや分からない事は正直に言う事、心身の健康など一見当たり前に感じることに対しても心にとめながら働くことの出来る医師になりたいと感じた。

 今回の研修で米国での医療を通じて患者さんの社会的背景の大切を学び、professionalismについて学ぶことが出来ました。最後にそれらの事柄を踏まえて研修参加者として誓いをたてたいと思います。将来私は自己研鑽に努め、患者さんの背景や気持ちに寄り添い周囲の方々と協力しながら医療を行う医師を目指します。