クアキニ医療センター研修レポート
今回2021年12月6日から12月31日の4週間、ハワイ大学クアキニ医療センターで4週間(内科3週間、家庭医療科1週間)オブザベーション研修をさせて頂きました。久しぶりの海外ということもあり、不安に感じておりましたが、皆さん本当に優しく、温かく迎え入れて下さり、この1ヶ月間楽しく充実した時間を過ごすことが出来ました。簡単ではありますが、以下に研修の内容を御報告させて頂きます。
内科病棟業務
内科は基本的に病棟業務を見学させて頂きました。医師はA-Dの4つのチームに分かれており、オブザーバーの日本人医師及び学生はいずれかのチームに配属されます。1チームはUpper level resident(PGY-2または3)、Intern(PGY-1)、米国医学部生、オブザーバーの3-4名で構成されており、1チーム上限10名の患者を担当します。大体ICU1-2名、一般病棟5-6名担当している事が多かったと思います。
1日の業務はチームによって多少異なりますが、まずInternが朝6時までに出勤し、Night float(夜勤の医師)からの申し送りを受け、電子カルテで担当患者のバイタルサインや血液検査結果を確認後、回診を行います。Internがまず治療方針を考え、Upper level residentに簡潔にプレゼンし、チームの方針を決め、今度はそれをAttending physicianにプレゼンし、確認してもらい治療方針が最終決定されます。
昼前にICUカンファレンスが開かれます。ICU患者の治療方針もチームで決定し、このカンファレンスでIntensivistのAttending physicianに治療方針を確認しつつ、オンコールのチームへ申し送りをします。カンファレンスの後に病態生理に関するレクチャーがありましたが、こちらに問題(重度大動脈弁狭窄症の患者が敗血症になった場合、どのように対応すべきか等)を出し、考えさせられる内容のものが多く、大変興味深く勉強になりました。
その後指示出し、カルテ記載、患者家族への電話連絡を行い1日の業務が終了するという流れでした。
4日に1度オンコールの日があり、入院患者は全てオンコール当番のチームが受けることになるため、忙しい1日となります。しかし入院患者の上限が決められているため、overwhelmされることはありません。入院患者が上限を超える場合は翌日のオンコールのチームへ割り振られるか、Attending physicianが担当することになります。。
私は基本的に朝6時に出勤し、Internの先生について回っていました。オブザベーション研修ということで、原則患者を直接診察しないことになっていましたが、(過去のレポートにあるように)チームの先生方にお願いして患者を数名割り振って頂き、病歴聴取や身体診察、カルテ記載や指導医へのプレゼンテーション等、経験させて頂きました。包括的なプレゼンテーションの勉強のため、なるべくオンコールの日に新患患者を付けてもらいました。チームの先生方は忙しい中でも、私の拙い英語でのプレゼンテーションをしっかり聞いて、丁寧に指導をして頂き大変感謝しております。
カンファレンス
上記業務以外に、定期的にモーニングレポート(症例検討会)や循環器カンファレンス、オンコロジーカンファレンスが開かれていました。研修医が積極的に発言し議論を交わしているのが印象的でした。
感想
内科ローテートに最も印象に残った事として、日本の同学年の医師と比較し研修医の臨床能力が高いと感じました。別記の通り、まずはresident/internで基本的な治療方針を考えるのですが、卒後1-2年で自信を持って治療方針を立てているのに驚かされました。指示出しをする前に指導医の承認が必要ですが、間違いがないかの確認や細かいアドバイスをする程度で、治療方針を大きく変えられることはほとんどありませんでした。
また教育法そのものも、患者の安全を担保しつつ、研修医に主体的に動いてもらうことで、研修医がより能動的に学べ、かつ指導医にとっても議論を通して学びが得られる良いシステムだと思いました。現在私の勤務している病院では医師の数が少ないため、全く同じような教育をすることは難しいと思いますが、今後出来る限り、患者の治療方針をまずは研修医に考え、決めてもらい、ディスカッションを通して指導するようにしていきたいと強く思いました。
家庭医療科
12月27日から12月30日の4日間はTokeshi先生のクリニックを研修させて頂きました。毎朝4時からTokeshi先生が担当されているクアキニ医療センター入院中の患者と、付属の老人施設の入所者を回診しました。みなさん安定しておりましたが、何か問題があれば逐一Tokeshi先生に報告しました。その後は外来診療に陪席させて頂きました。患者さんは高血圧や糖尿病などで定期通院されている方がほとんどでしたが、皮膚癌疑いで切除生検を行ったり、足底疣贅を治療するなど、米国の家庭医らしい幅広い診療を見る事ができました。以前は分娩も行なっていたそうですが、現在malpractice insuranceが高騰し、出来なくなってしまったそうです。
高名なTokeshi先生のもとでの研修ということで楽しみにしていたのですが、今回は年末で研修期間が短く、またCOVID-19の問題で診療を縮小しており、あまり患者さんがいなかったのが少し残念でした。しかしTokeshi先生より医師として肝に銘じておくこと、また日本人として学んでおくべき事等、貴重なお話しをたくさん聞かせて頂き、大変有意義な時間を過ごせました。また興味深い書籍をたくさん教えて頂いたので、時間を作って教えて頂いた本は全て読もうと思っています。
謝辞
最後に、同じチームのKato先生、Leesutipornchai先生、Nagamine先生、Lee先生、指導をして頂いたTokeshi先生、また受け入れの準備をして下さったチーフレジデントのWien先生、Sumida先生、研修の調整をして頂いた木暮さん、Paulaさんに深く感謝申し上げます。最後に、そしてコロナ禍で大変な時期にこのような貴重な機会を与えて下さった野口医学研究所の皆様、本当にありがとうございました。